矢野経済研究所
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2020年の国内養液栽培システム市場は前年比97.1%の88億5,000万円の見込

~新型コロナウイルスの影響により大規模施設園芸の新設が落ち込み、前年割れで推移~

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、国内の施設園芸、液体肥料を調査し、分野別の動向、参入企業動向、将来展望を明らかにした。ここでは養液栽培システムを取り上げる。

方式別の養液栽培システム市場規模推移

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1.市場概況

国内の農業は担い手や後継者不足、農家の安定収入の難しさが言われて久しいが、これに加え、昨今では食に対する安心や安全への意識の高まりから、消費者が減農薬作物を求めることによるコスト高などといった多くの課題を抱えている。

こうしたなか、解決策の一つとして現在、養液栽培が注目されている。養液栽培は天候や病害などによる連作障害を回避できることで、地理的環境等による栽培不適地域における栽培を可能にしたり、装置化・機械化により耕起(土を耕すこと)、除草、土壌消毒などの作業が不要となるため、労働の省力化につながる。また周年栽培が可能になることで、単位面積あたりの生産効率が上がり、栽培される農作物の鮮度の高さを維持した出荷も可能になる。

2019年の国内養液栽培システム市場はメーカー出荷金額ベースで、前年比100.5%の91億1,500万円であった。2020年の同市場規模は前年比97.1%の88億5,000万円の見込みである。

2.注目トピック

養液栽培拡大の背景について

養液栽培が拡大する背景としては、①施設園芸面積の大規模化の進展、②異業種からの新規参入の増加、③減反政策の廃止による稲作から園芸作物へ転換する産地の増加、④農林水産省による次世代施設園芸拠点の整備と、それに関連する自治体による大規模施設園芸団地建設の増加、⑤身障者・高齢者向け施設に付帯する農業施設への導入の増加等が挙げられる。

3.将来展望

今後の養液栽培システムは、2020~2021年にかけて新型コロナウイルスの影響により、大規模施設園芸の新設計画が頓挫していることから、前年割れで推移するが、2022年以降は微増で推移するとみる。一方、今まで市場を牽引していきた固形培地耕栽培は、新規就農者を中心にトマト類などの果菜類を中心に導入を増やしてきたが、今後は植物工場や大規模施設園芸でのレタス類などの葉菜類で水耕栽培が増えるとみる。このため固形培地耕栽培は減少で推移し、水耕栽培は増加で推移すると考える。

調査要綱

1.調査期間: 2020年4月~7月
2.調査対象: 施設園芸関連資材メーカー(農業用ハウス、養液栽培システム、複合環境制御装置、施設園芸用ヒートポンプ、植物育成用光源、被覆資材(農業用フィルム)、農業ICT)、関連団体・官公庁等
3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談、電話・e-mail等によるヒアリングおよび文献調査併用
<養液栽培システムとは>
養液栽培とは、土を使わずに、肥料を水に溶かした液(培養液)によって作物を栽培する栽培法である。養液栽培の主な方式は、水、培養液を培地とする水耕栽培や培地に土壌以外の固型培地を使い、これに培養液を必要に応じて与える固形培地耕などがある(出所:農林水産省)。

本調査における養液栽培システム市場とは、養液栽培を行うための必要な機器類を含み、いずれの養液栽培方式においても、栽培品目は果菜類、葉菜類、根菜類、果樹類、花卉類を対象とする。市場規模は養液栽培システムのメーカー出荷金額ベースで算出している。
<市場に含まれる商品・サービス>
養液栽培システム

出典資料について

資料名2020年版 拡大する施設園芸の市場実態と将来展望
発刊日2020年07月14日
体裁A4 537ページ
定価330,000円(税別)

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