2020年の飲食業界のビッグニュースの1つと言えば、外食大手コロワイドによる大戸屋ホールディングス(HD)の敵対的TOB(株式公開買い付け)だ。大戸屋HDの経営再建が軌道に乗るかに注目が集まっているが、新型コロナウイルスの影響もあり、業績は厳しさを増している。大戸屋の立て直しは可能なのだろうか。
ビフォーコロナから経営状況が厳しかった大戸屋HD
大戸屋は、定食チェーンとして全国的に有名だ。1958年に東京・池袋で開いた食堂が始まりで、その後、家庭風の和食メニューや店内調理などを売りに、全国で店舗展開を拡大してきた。
しかし2020年3月期、大戸屋はジャスダック市場に上場以来の初めての赤字を計上した。2019年3月期は5,500万円の黒字を計上していたが、2020年3月期の連結最終損益は5億3,000万円のマイナスとなったのだ。
大戸屋は2019年4月にメニューの値上げを行い、客離れが徐々に進んだ。さらに2019年10月には消費税が8%から10%に引き上げられ、客数の減少に歯止めがきかない状況となった。このように新型コロナウイルスの感染拡大前から、大戸屋HDの業績は厳しかった。
コロワイドが敵対的TOBを仕掛け、大戸屋HDを傘下に
このような経営状況の中、焼肉チェーン「牛角」などを展開するコロワイドが大戸屋HDに対し、敵対的TOBを仕掛けた。この敵対的TOBは、コロワイドが大戸屋HDの筆頭株主になったことに端を発する。
2015年に急逝した大戸屋HDの創業者の長男が、2019年に大戸屋HDの保有株をコロワイドに売却し、コロワイドは大戸屋HDの筆頭株主となった。そしてコロワイドは大戸屋HDの業績低迷を受け、業績改善のために大戸屋HDにグループ傘下入りを提案したが、大戸屋HD側はこの提案を拒否した。
その後、コロワイドは株主総会で経営陣の刷新を求める提案をしたが、個人株主などの反対もあって提案は否決される。そしてコロワイドは最終的に、大戸屋HDに対して敵対的TOBを仕掛けるに至った。TOBによりコロワイドは、大戸屋HDの株式の50%弱を保有することになり、現在はコロワイドの元専務が大戸屋HDの社長に就任している。
コロナ禍の影響で大戸屋HDの業績の厳しさは増す
このように大戸屋HDは現在、コロワイド傘下で経営再建を進めているわけだが、新型コロナウイルスの影響で業績の厳しさは増し、先行きが非常に厳しい状況となっている。
2020年11月10日に大戸屋HDが発表した2021年3月期第2四半期の連結業績(2020年4~9月)は、売上高が前年同期比40.5%減の73億3,200万円、営業利益は赤字額が前年同期の1億8,700万円から26億7,300万円に拡大、経常利益の赤字額も同様に1億8,100万円から25億1,900万円へと膨らんだ。
そして、最終損益のマイナス額は実に46億5,400万円まで大きくなった。前年同期の約26倍のマイナス額だ。国内事業においては既存店の売上高が段階的に回復しているものの、大戸屋HDは2021年3月期の通期の連結業績については、48億6,600万円の赤字に着地するという見通しを立てている。
コロワイド傘下で新たな経営再建の道を歩もうとする中、大戸屋HDは新型コロナウイルスの影響でさらに経営状況が悪化している。コロワイドから迎えた新社長を先頭にした新たな経営陣は、どのように大戸屋HDを復活させようとしているのだろうか。
これから大戸屋HDはどのようにして復活するのか
大戸屋HDは2021年3月期第2四半期の決算説明の中で、「当面の経営課題」として以下の3点を挙げている。
・店舗運営の改善による顧客満足度・来店客数の向上
・商品・マーケティング施策の⾒直しによる価格パフォーマンスの向上
・コロワイドグループとのシナジーを含むコスト構造・経営効率の改善
店舗運営の改善に向けては、サービスマインドの強化や店舗オペレーションの標準化、提供時間の遅延解消などに取り組む。具体的には、店舗オペレーションの標準化において「店舗従業員の技量に依存した運営により散逸したオペレーション」から脱却することを目指すという。
商品・マーケティング施策の⾒直しは、商品設計と店舗オペレーションの融合、メニューラインナップの充実、「お値打ち価格」の実現の3本柱で進める。コスト構造・経営効率の改善に向けては、コロワイドグループとの共同購買によって仕入価格の低減などにつなげる。
このような取り組みを複合的に進めていくことで、コロワイド側は何とか大戸屋HDを復活させたい考えだ。
次の決算発表の数字に注目
上記のように、新経営陣による復活に向けた青写真はすでに示されている。2020年は残りわずかだが、2021年に向けてすでに取り組みを強化しているはずだ。大戸屋HDの次の決算発表は2月ごろになる見通しだ。どのような数字が出てくるのか、注目したい。
文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)