基調講演・パネルディスカッション風景
(画像=基調講演・パネルディスカッション風景)

「フードシステムソリューション2020」では10月8日に、病院給食特別企画として「コロナ感染下における病院フードサービスの対応」基調講演・パネルディスカッションが行われた。茨城キリスト教大学教授の石川祐一氏をコーディネーターに、新型コロナウイルス感染患者への対応について、群馬県済生会前橋病院栄養科の宮崎純一氏、信楽園病院栄養科の細川学氏、神奈川県済生会横浜市東部病院栄養部の工藤雄洋氏の3名が栄養部門の対応事例を共有した。

はじめに、石川祐一氏は日本栄養士会がホームページで公開しているコロナ対応事例を紹介しながら、「コロナ感染下において、病院・施設におけるフードサービス及び栄養管理業務をどのようにすればよいか、今の段階でできる対応策を検討する際に、3医療施設の事例を参考にしてほしい」と特別企画の目的を伝えた。

〈正解はない、医療施設における食器対応〉
講演では、前橋病院栄養科の宮崎純一氏が日本栄養士会による「新型コロナウイルス感染症にかかる給食管理業務および臨床栄養業務における対応について」を引用しつつ同院の事例を紹介した。

給食管理業務については、〈1〉食材等の納入〈2〉食器〈3〉配膳業務――の3点について注意点を伝えた。中でも食器の使用について、宮崎氏は「原則として、感染患者が使用した食器類は必ずしも他の患者と分ける必要はなく、通常の方法により作業中のビニール手袋等の着用と洗浄・消毒乾燥で問題ないという指針が厚生労働省から出されているが、下膳時に感染患者の飛沫に接触するリスクを考慮して、当院ではディスポ食器(使い捨て食器)の使用を継続している」と述べた。県内の医療施設を調査した結果、ほぼ全ての医療施設でディスポ食器を採用していることが分かり、「大丈夫と言われていても現場で働く方の安全面を考えるとディスポ食器を使用している現場は多い印象である」と考察した。

その後も、講演ではディスポ食器の使用について様々な意見が交わされた。

信楽園病院の細川学氏は、陽性患者を受け入れた新潟県内医療施設11施設(病床数は300床〜652床、給食業務の委託は7施設、直営は4施設)で実施したアンケート結果をもとに、新潟県内病院フードサービスの現状を紹介した。細川氏は11施設のうち10施設がディスポ食器を使用していたと話し、ディスポ食器を使用する理由については「厚生労働省や日本環境感染学会の指針では必要ではない、とされているが、下膳する職員の方の不安から使用している施設が多数だった」と説明した。

横浜市東部病院の工藤雄洋氏は全国の済生会病院に実施したアンケートで、陽性患者の対応をしている26施設のうち「ディスポ食器を使用して病棟で破棄」している施設が18施設、「通常食器で提供し、下膳時に対象患者と分かるような対策(ビニール袋に入れる等)を病棟で実施してもらい、厨房で消毒してから洗浄」している施設が4施設だったと説明した。

ディスポ食器を使用する理由については、▽病院上層部や感染対策室の指示▽感染リスクが高いと考えるから▽委託給食会社からの依頼・要望▽近隣の施設での対応を参考にした▽部内スタッフから不安の声が聞かれた――など複数の理由があると考察した。

工藤氏は「コロナ感染下での給食提供に関して、施設によってその背景には様々な因子が絡んでおり、一概には何が『正解』なのかを判断するのは困難である」と述べ「感染対策の視点だけで判断するのではなく、対応するスタッフに対しての説明や、心身的なサポートなども考慮した上で、それぞれの施設にとって最適な答えを導き出すことが重要だと考える」とまとめた。

記事は概要のみを紹介したが、詳細については月刊メニューアイディア増刊号2021「打倒コロナ!免疫力アップレシピ」(仮名)(12月7日発刊)で収録する予定だ。

◆日本栄養士会ホームページ「給食管理業務および臨床栄養業務における対応事例」