矢野経済研究所
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9月15日、華為技術(ファーウェイ)に対する米国の追加的な制裁措置が発効した。
米国は2019年に米国製半導体のファーウェイ向け輸出を禁止、この5月には米国企業の技術を使ったすべての製品供給の禁止を発表した。それでもこの時点では設計におけるファーウェイの関与が条件付けられていた。しかし、8月にはこの条件も外すことを決定、15日、これが発効した。結果、半導体製造子会社HiSilicon社からの調達も含め、ファーウェイへの米国製の技術が使われた半導体の供給が完全に閉ざされた。

今回、米国は各国の電子部品メーカーに対して「販売した自社製品が最終的にファーウェイに届いていないことを保証する義務」まで課している。子会社はもちろん関連会社や第3者を通じての迂回取引も見逃さない徹底ぶりだ。
ファーウェイを優良顧客としてきたサムスン電子、SKハイニックなどの韓国勢、そして、ソニー、キオクシア、三菱電機をはじめとする日本勢への影響は大きい。

一方、台湾は特需に沸いた。制裁措置の発効を前にファーウェイ向けの電子部品の駆け込み需要が集中、8月の海外輸出額が前年同月比8.3%増、311億7,000万ドルと史上最高額を更新した。
しかし、特需はむしろこれからだ。2019年、ファーウェイは世界のスマートフォン市場でアップルを抜いてサムスンに次ぐ2位に浮上した。しかし、ここが崩れる。上位3社を追うシャオミ、OPPO、そして、それに次ぐメーカーにとってもシェアを奪取するチャンスである。

ファーウェイ排除は5Gのインフラ市場の再編も促す。ファーウェイ、エリクソン、ノキアの3社で8割を占めるモバイルインフラ市場も揺らぐ。かつて、ここにはルーセント、ノーテル、モトローラといった名前があった。今、日本勢はそれぞれシェア1%にも届かないNECと富士通がかろうじて「その他」の一角を占めるに過ぎない。
6月、そのNECはNTTと提携、世界市場への再参入を目指すと発表、2030年には世界シェア20%を目指す、と宣言した。チャンスは政治がもたらした。しかし、両社においては官を頼ることなく、また、高品質=高価格を言い訳にすることなく、堂々と世界との勝負に勝ちにいっていただきたく思う。

今週の“ひらめき”視点 9.13 – 9.17
代表取締役社長 水越 孝