プロパー融資
(画像=suriyapong/stock.adobe.com)

プロパー融資は、信用保証協会を通さずに金融機関から直接融資を受けることができる。プロパー融資は、金融機関から一人前の企業と認められた証であるともされている。今回は、プロパー融資の基本やメリット・デメリット、プロパー融資を受けるためのポイントについて説明する。

内山 瑛
内山 瑛(うちやま・あきら)
公認会計士。名古屋大学法学部在学中に、公認会計士試験に合格。新日本有限責任監査法人に入所し、会計監査・コンサルティング業務を中心に研鑽を積む。2014年に同法人を退所し、独立。「お客様の成長のよきパートナーとなる」ことをモットーに、記帳代行・税務申告にとどまらず、お客様に総合的なサービスを提供している。近年は、銀行評価を向上させる財務コンサルティングや内部統制構築支援、内部監査の導入支援にも力を入れている。

目次

  1. プロパー融資とは?
  2. プロパー融資の4つのメリット
    1. 1. 保証協会を利用しないため保証料がかからない
    2. 2. 融資額の上限がない
    3. 3. 機動的な資金調達が可能
    4. 4. 信用力の向上
  3. プロパー融資の2つのデメリット
    1. 1.審査が厳しい
    2. 2. 返済期間が短くなる場合が多い
  4. プロパー融資を受ける際の注意点は?
  5. 銀行からの評価をよくするための決算書

プロパー融資とは?

「プロパー」という言葉は、日本語で「正規の」「本来の」という意味である。

中小企業が金融機関の融資を受ける際には、信用保証協会の保証付きであることが普通であるが、プロパー融資は、融資をする立場である銀行が信用保証協会の保証を受けずに、直接融資する融資方法である。

信用保証協会は、事業者の債務返済が難しくなった際に、代わりに銀行に弁済をする。これにより、銀行は貸倒れのリスクを低減しながら融資をすることができる。しかし、プロパー融資の場合は、銀行が貸し倒れリスクを負いながら中小企業等に直接融資を行う方法なのである。

プロパー融資の4つのメリット

プロパー融資は、銀行にとってリスクが大きい融資法であるが、融資を受ける側にとっては、以下に挙げるように4つのメリットがある。それぞれについて説明する。

1. 保証協会を利用しないため保証料がかからない

プロパー融資の場合は、信用保証協会に保証料を支払わなくて済む点がメリットになる。保証協会を利用した場合、保証料の額は融資額や返済期間、また会社の財政状態にもよるが、数パーセントの保証料が利息に上乗せされることになる。

また、保証料がないことに加えて、銀行側のリスクを減らすために、プロパー融資の対象となる企業は比較的信用力が高いことから、金利も低くなることも多い。

2. 融資額の上限がない

融資額の上限がないこともプロパー融資のメリットである。

保証協会付融資の場合、制度上の上限が定められているが、プロパー融資ではその上限がなく、金融機関の裁量で融資が可能である。信用力が高く、資金需要が旺盛な企業では、保証協会の融資の上限が足かせになる場合もある。そのような場合は、限度額がないプロパー融資の方が有利である。

3. 機動的な資金調達が可能

融資を受ける側の大きなメリットとして、機動的な資金調達が可能という点である。

通常の信用保証協会を通す融資の際は、融資を行う側の金融機関の審査だけでなく、信用保証協会の審査も行うわれるため、融資の審査期間が長くなりがちである。しかし、プロパー融資では融資元の審査のみを受ければよく、審査期間を短縮することが可能となる。

4. 信用力の向上

信用力の向上になることも、プロパー融資のメリットの一つである。一度でもプロパー融資を受けられれば、プロパー融資の審査が通ったという実績だけで、次回以降もプロパー融資を受けられる確率が高くなる。

プロパー融資の2つのデメリット

プロパー融資には、使い勝手の悪さを感じる2つのデメリットがある。

1.審査が厳しい

プロパー融資は金融機関が自らリスクを負うため、保証協会付融資に比べて融資審査が非常に厳しくなっている。よほどの有名企業や文句の付け所がない好業績を続けている企業を除けば、申し込んだだけで即落とされる可能性が高い。プロパー融資は、銀行の側から「借りてくれ」と言ってくるような企業を中心に活用されていることが多い。

2. 返済期間が短くなる場合が多い

プロパー融資の2つ目のデメリットは、返済期間が短くなる場合が多いということである。

プロパー融資では銀行側も共倒れのリスクを背負うため、融資資金の回収は確実に行わなければならない。返済期間の長期化による融資先企業の経営変動リスクを減らすためには、融資側としても返済期間を極力短く設定したいのである。

プロパー融資を受ける際の注意点は?

プロパー融資は審査が極めて厳しく、年数を重ねた企業ならば必ずプロパー融資に通るというわけではない。好条件でプロパー融資を受けるには、会社の信用を示す必要があるのだ。

プロパー融資を受けるために、会社の信用を上げる方法はいくつかある。例えば、メインとなる銀行口座に資金の動きを集中させ、自社の事業の安定性を継続的に示すことで、事業そのものや事業計画書に対する信頼を高めるのもいいだろう。

また、会社の歴史が浅く、信用度が高まっていなければ、プロパー融資を申し込んでも融資を受けられる可能性は極めて低く、保証協会付けの融資に誘導されることが通常である。最初は保証協会付けの融資を利用し、借入金を確実に返済しながら融資実績を積み重ねて、信頼を高めていくことが肝要である。

もちろん、業歴は長ければ長いほど、売上や利益は多ければ多いほどよいので、融資対策に加えて本業をしっかり伸ばしておくことも重要である。

上記のことに加え、いわゆる「担保」の存在も重要である。プロパー融資は、銀行等が100%のリスクを背負って融資をするものであるため、万が一貸し倒れが発生すれば、額によっては銀行等の経営にも大きな影響を与えてしまう。そのため、融資先が貸出元本を十分カバーできる不動産などの担保物件を持っていれば、安心してプロパー融資を実行できる。

収益性の高い担保物件があれば、利益があまり出ておらず売上が継続して減少しているような事業であっても、プロパー融資に関する審査のハードルは大きく下がり、銀行等は融資に応じてくれる可能性がある。

担保になるのは何も融資を受ける会社の資産だけではなく、親会社、個人株主や役員、その家族などの資産も対象となることがある。このような資産を担保として提供することにより、プロパー融資を受けられる場合もある。

個人資産をプロパー融資の担保のあてにしている場合には、連帯保証という手段もある。連帯保証に対する社会的な批判もあり、特に保証協会付けの融資や政府系金融機関による融資においては、代表者以外の第三者の連帯保証を求めないようになりつつあるが、プロパー融資を引き出すにあたっては、いまだ連帯保証人は有力な融資条件のひとつになっている。

特に代替わり直前直後の中小企業においては、金融機関はその企業の状況に応じて、先代経営者が健在で資力が大きく、後継者の資力が乏しい場合は代替わり後も先代経営者の連帯保証を求めることもある。また、代替わり前でも先代経営者が高齢になってきている場合には、後継者に連帯保証を求めることもある。

銀行からの評価をよくするための決算書

プロパー融資を受けるために、銀行からの評価をよくするにはどうすればいいのだろうか。ここでは、「決算書」というポイントに絞って説明する。決算書は、会社の経営成績を表現するものであり、銀行等が融資の際に最も重要視する書類である。

・自己資本を厚くする

自己資本の中でも特に利益剰余金は、これまで会社が稼いできた利益を示しており、利益剰余金が大きい会社は、銀行等からの評価が高くなりやすい。

通常、利益を多く出してしまうと、法人税等が多くかかってしまうことから、税金対策として利益を圧縮してしまう場合がある。そのような会計処理を繰り返していると、何十年業務歴を積み重ねても利益が蓄積しないということになり、プロパー融資はいつまでたっても受けられないということになってしまう。

・キャッシュフローの安定性を示す

毎期しっかりとキャッシュフローを生み出しているということも重要である。

キャッシュフローとは、現金の流れを意味し、主に、企業活動や財務活動によって実際に得られた収入から、外部への支出を差し引いて手元に残る資金の流れのことをいう。キャッシュフローの流れが健全であることは、企業の資金管理が正しく行われていることを証明することにつながる。

キャッシュフローが尽きれば倒産してしまうし、キャッシュフローを生み出せなければ、借入金を返済できない。

毎期利益が出ている会社であっても、未回収の売掛金が増加していたり、棚卸資産が不良在庫化して計上されていたり、過剰投資がかさんで環境の変化に弱い財政状態になっていたりと、キャッシュフローを安定的に稼げていない会社に対しては、十分な信頼が与えられないだろう。

・貸借対照表の資産の部に注意する

貸借対照表の借方に該当する「資産の部」の内容も重要である。事業活動には不要と思われるゴルフ会員権やリゾート会員権、趣味性の高いスポーツカー、友人や家族への貸付金、事業との関連性の低い仮払金や未収入金などがあれば、公私混同の傾向のある経営者と判断されることになり、審査でマイナスポイントになってしまう。

文・内山瑛(公認会計士)

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