プロパー融資は、信用保証協会を通さずに金融機関から直接融資を受けることができる融資を指す。プロパー融資が受けられることは、金融機関から一人前の企業と認められた証ともいわれており、金融機関からの信用がなければ受けることができない。今回は、プロパー融資の基本やメリット・デメリット、プロパー融資を受けるためのポイントについて説明する。

目次

  1. プロパー融資とは?
    1. 1. プロパー融資と保証付き融資の違い
  2. プロパー融資の4つのメリット
    1. 1. 保証協会を利用しないため保証料がかからない
    2. 2. 融資額の上限がない
    3. 3. 機動的な資金調達が可能
    4. 4. 信用力の向上
  3. プロパー融資の2つのデメリット
    1. 1.審査が厳しい
    2. 2. 返済期間が短くなる場合が多い
  4. プロパー融資を受ける際の注意点は?
    1. 1. 取引振りなどの実績で信頼を高める
    2. 2. 物的担保と人的担保も含めた資産背景を示す
  5. 銀行からの評価をよくするための決算書
    1. 1.決算書の内容で評価をよくする
    2. 2.経営者が企業の財務状況を説明できることも重要
プロパー融資
(画像=suriyapong/stock.adobe.com)

プロパー融資とは?

「プロパー」という言葉は、日本語で「正規の」「本来の」という意味である。プロパー融資は、金融機関が独自で審査して貸し出しをする融資形態と考えればよいだろう。

1. プロパー融資と保証付き融資の違い

中小企業が銀行などの金融機関から融資を受ける際には、信用保証協会の保証付き融資を利用することが多い。プロパー融資は、融資をする立場である銀行が信用保証協会の保証を受けずに、直接融資する融資方法である。

銀行などの金融機関は、プロパー融資の申し込みがあると決算書や試算表などから企業の体力、収支状況、キャッシュフロー、資金繰りなどについてシビアに審査を行う。同業種・同規模の企業と財務状態を比較して、デフォルト(債務不履行)に陥る可能性も含めて独自の審査基準で審査するため、審査は厳しくなりやすいといえるだろう。

信用保証協会は、都道府県ごとに設置されており、銀行などの金融機関の窓口経由で申し込みするのが一般的だ。事業者の債務返済が難しくなった際に、代わりに銀行などの金融機関に弁済をするため、これにより、貸し倒れのリスクを低減しながら安心して融資ができる。

しかし、プロパー融資の場合は、貸し倒れがあるとその金額がそのまま金融機関の損失となる。貸し倒れリスクを負いながら中小企業等に直接融資を行うため、審査を慎重に行う必要があるのだ。

プロパー融資の4つのメリット

プロパー融資は、銀行にとってリスクが大きい融資法であるが、融資を受ける側にとっては、以下に挙げるように4つのメリットがある。それぞれについて説明する。

1. 保証協会を利用しないため保証料がかからない

プロパー融資の場合は、信用保証協会に保証料を支払わなくて済む点がメリットになる。保証協会を利用した場合、保証料の額は融資額や返済期間、また会社の財政状態にもよるが、数パーセントの保証料の支払いが必要だ。そのため保証付き融資を受ける際には、表面上の金利だけではなく保証料や手数料を加味した実質的な金利負担を考えて申し込みをしなければならない。

また、保証料がないことに加えて、プロパー融資の対象となる企業は比較的信用力が高いため、金利も低くなることも多い。ただし金利は企業の信用度合いで設定するため、企業の財務内容によっては、保証付き融資よりも高い金利になることがある。

2. 融資額の上限がない

融資額の上限がないこともプロパー融資のメリットである。例えば事業用の不動産の購入や工場の設備投資、賃貸用不動産の購入、大きなプロジェクトの推進などを行う際は、多額の事業資金が必要となるだろう。しかし保証付き融資のように融資額に上限が定められていると、企業は多額の自己資金を準備しなければならず、計画を実行できなくなってしまう。

つまり多額の事業資金が必要となる場合は、多額の融資を受けなければならないが、信用保証協会の保証付き融資では対応できないことがあるのだ。保証付き融資の場合、制度上の上限が定められているが、プロパー融資ではその上限がなく、金融機関の裁量で融資が可能である。

信用力が高く、資金需要が旺盛な企業では、保証協会の融資の上限が足かせになる場合もある。そのような場合は、限度額がないプロパー融資のほうが有利である。

3. 機動的な資金調達が可能

融資を受ける側の大きなメリットとして、機動的な資金調達が可能という点が挙げられる。

通常の信用保証協会を通す融資は、融資を行う銀行などの金融機関の審査だけでなく、信用保証協会の審査も行われるため、融資の審査期間が長くなることがある。しかし、プロパー融資では、金融機関の審査に一定期間を有するものの、融資元の審査のみを受ければよく、審査期間を短縮することが可能となる。

4. 信用力の向上

信用力の向上になることもプロパー融資のメリットの一つである。一度でもプロパー融資を受けられれば、プロパー融資の審査が通ったという実績だけで、次回以降もプロパー融資を受けられる確率が高くなる。

プロパー融資の2つのデメリット

プロパー融資には、使い勝手の悪さを感じる2つのデメリットがある。

1.審査が厳しい

プロパー融資は金融機関が自らリスクを負うため、保証付き融資に比べて融資審査が厳しい傾向にある。よほどの有名企業や文句の付け所がない好業績を続けている企業を除けば、申し込んだだけで即落とされることあるのだ。そのためプロパー融資は、銀行などの金融機関側から「借りてくれ」と言ってくるような企業を中心に活用されていることが多い。

銀行や信用金庫などの融資金利は、信販会社やクレジット会社の金利などに比べると低金利だ。しかし融資をする際には、安全性を重視するため審査が厳しくなりやすい。なぜなら金融機関は貸し倒れがあれば大きな損失を被ることになるからだ。

金利は、金融機関のシステムや従業員にかかる人件費などの経費のほか、収益や貸し倒れにかかるリスクも加味して決定される。そのため貸し倒れリスクが高いほど金利は高くなりやすい傾向にある。信用保証協会は、中小企業の成長や育成を目的としていることもあって、中小企業でも融資が受けられるように支援をしている。

企業がデフォルトに陥ることがあれば多額の損失を計上することは同じだが、収益を上げなければならない民間企業の銀行などと比べれば審査に通りやすいといえるだろう。

2. 返済期間が短くなる場合が多い

プロパー融資の2つ目のデメリットは、返済期間が短くなる場合が多いということである。プロパー融資では貸し出す銀行などの金融機関側も共倒れのリスクを背負うため、融資資金の回収は確実に行わなければならない。

そのため融資の使いみちである資金使途や企業の業種、財務状態に応じて返済期間を適切に設定する。返済期間の長期化による融資先企業の経営変動リスクを減らすためには、融資側としても返済期間を極力短く設定したいなどといった金融機関側の事情もあるのだ。

信用保証協会の保証付き融資の場合は、融資制度が決まっており融資制度によって返済期間が個別に設定されている。運転資金や設備資金など資金使途によって返済期間が異なるが、中小企業が利用しやすいように返済期間は比較的長めに設定されている。

プロパー融資を受ける際の注意点は?

プロパー融資は審査が厳しい傾向にあり、年数を重ねた企業ならば必ずプロパー融資に通るというわけではない。好条件でプロパー融資を受けるには、会社の信用を示す必要があるのだ。そのためには、いくつか注意しなければならない点がある。

1. 取引振りなどの実績で信頼を高める

プロパー融資を受けるために、会社の信用を上げる方法はいくつかある。例えば、メインとなる銀行口座に資金の動きを集中させ、自社の事業の安定性を継続的に示すことで、事業そのものや事業計画書に対する信頼を高めるのもいいだろう。売上の入金口座となっていれば銀行などの金融機関側も業況の把握がしやすいため、普段から口座を利用しているというのも、取引実績として考慮される。

また、会社の歴史が浅く、信用度が高まっていなければ、プロパー融資を申し込んでも融資を受けられる可能性は低く、保証付きの融資を案内されるのが一般的である。最初は保証付きの融資を利用し、借入金を確実に返済しながら融資実績を積み重ねて、信頼を高めていくことが肝要である。

もちろん、業歴は長ければ長いほど、売上や利益は多ければ多いほどよいので、融資対策に加えて本業をしっかり伸ばしておくことが重要である。

2. 物的担保と人的担保も含めた資産背景を示す

中小企業などでは、経営者個人に資産があっても企業が資産を保有していないことも多い。事業をしている土地や建物が経営者の所有する不動産であったり、会社にお金がない場合に経営者のお金を事業資金として立て替えて支払ったりするケースは多いだろう。つまり企業も経営者も財布が同じになることが多いのだ。そのためプロパー融資を受ける際には、個人資産の有無も重要となる。

また上記のことに加え、担保には物的担保と人的担保があり物的担保に提供できる不動産の存在や人的担保として経営者自身が融資の連帯保証人となることも重要である。これが、いわゆる「担保」の問題だ。

プロパー融資は、銀行等が100%のリスクを背負って融資をするものであるため、万が一貸し倒れが発生すれば、額によっては銀行等の経営にも大きな影響を与えてしまう。そのため、融資先が貸出元本を十分カバーできるだけの不動産などの担保物件を持っていれば、安心してプロパー融資を実行できる。

収益性の高い担保物件があれば、利益があまり出ておらず売上が低迷しているような事業であっても、プロパー融資に関する審査のハードルは大きく下がり、銀行等は融資に応じてくれる可能性がある。

担保になるのは何も融資を受ける会社の不動産資産だけではなく、親会社、個人株主や役員、その家族などの資産も対象となることがある。このような資産を担保として提供することにより、プロパー融資を受けられる場合もある。

また代表者自身が個人資産を多数所有している場合には、人的担保として連帯保証になるという手段もある。連帯保証に対する社会的な批判もあり、特に保証付き融資や政府系金融機関による融資においては、代表者以外の第三者の連帯保証を求めないようになりつつあるが、プロパー融資を引き出すにあたっては、連帯保証人が有力な融資条件になることもある。

特に代替わり直前直後の中小企業においては、金融機関はその企業の状況に応じて、先代経営者が健在で資力が大きく、後継者の資力が乏しい場合は、代替わり後も先代経営者の連帯保証を求めることもある。また、代替わり前でも先代経営者が高齢になってきている場合には、後継者に連帯保証を求めることもある。

銀行からの評価をよくするための決算書

プロパー融資を受けるために、銀行からの評価をよくするにはどうすればいいのだろうか。ここでは、「決算書」というポイントに絞って説明する。決算書は、会社の経営成績を表現するものであり、銀行等が融資の際に最も重要視する書類である。

1.決算書の内容で評価をよくする

・自己資本を厚くする
自己資本の中でも特に利益剰余金は、これまで会社が積み上げてきた利益を示しており、利益剰余金が大きい会社は、銀行等からの評価が高くなりやすい。利益を多く出してしまうと、法人税等が多くかかるため、税金対策として利益を圧縮してしまうこともあるだろう。

そのような会計処理を繰り返していると、何十年業務歴を積み重ねても利益が蓄積しないということになり、プロパー融資はいつまで経っても受けられないということになってしまう。自己資本比率は、会社の体力を示す指標でもあるため、金融機関は自己資本が厚い企業に融資をしたいと考えるのは当然といえる。

・キャッシュフローの安定性を示す
毎期しっかりとキャッシュフローを生み出しているということも重要である。キャッシュフローとは、現金の流れを意味し、主に、企業活動や財務活動によって実際に得られた収入から、外部への支出を差し引いて手元に残る資金の流れのことをいう。キャッシュフローの流れが健全であることは、企業の資金管理が健全に行われていることを証明することにつながる。

キャッシュフローが尽きれば倒産してしまうし、キャッシュフローを生み出せなければ、借入金を返済することもできない。毎期利益が出ている会社であっても、未回収の売掛金が増加していたり、棚卸資産が不良在庫化して計上されていたり、過剰投資がかさんで設備投資が過剰、または設備資金の償還に時間がかかる財政状態になっていたりするのは資金繰り悪化の原因となる。

キャッシュフローを安定的に確保できない会社に対しては、十分な信頼が与えられないだろう。

・貸借対照表の資産の部に注意する
貸借対照表の借方に該当する「資産の部」の内容も重要である。事業活動には不要と思われるゴルフ会員権やリゾート会員権、趣味性の高いスポーツカー、友人や家族への貸付金、事業との関連性の低い仮払金や未収入金などがあれば、公私混同の傾向のある経営者と判断されることになり、審査でマイナスポイントになってしまう。

また相場より高額な会員権、回収の目途が立たない売掛金、不良在庫などは資産から控除して実態バランスシートを作成して審査をするため、一見財務内容がよい決算書に見えても金融機関の審査が通らないことがある。

金融機関は、実態をシビアに見て審査するため、資産の部に計上されている勘定科目の内容にも注意しなければならない。

2.経営者が企業の財務状況を説明できることも重要

銀行などの金融機関は、実態で判断するため、決算書のほかに資金繰り表や受注状況を疎明する資料、試算表など、足もとの業況が確認できる資料の提出を求めてくることがある。そのため中小企業では、経営者や経理担当者が自社の財務内容、今後の事業計画、企業の足もとの状況を説明できることも重要だ。

銀行などの金融機関は、企業の将来性を事業の継続性から審査する。これは、財務内容だけではなく経営者の企業への想いや姿勢、つまり人間性をも見ているのだ。経営者自身が企業の今後のビジョンを説明できなければ、金融機関の信頼を得ることはできないだろう。そのため経営者自身が自社の事業計画や今後の予定、足もとの状況を把握し、説明できるようにしておかなければならない。

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