コロナのお金110番 会社と個人のお金、コロナからこうやって守れ!
(画像=AdobeStock)

(本記事は、八木 宏之氏の著書『コロナのお金110番 会社と個人のお金、コロナからこうやって守れ!』=アスコム、2020年5月23日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)

「雇用調整助成金」とは

「雇用調整助成金」 は、不況や産業構造の変化などで事業を縮小する事業主に対して、「なるべく従業員を解雇しないでほしい」という趣旨で出す助成金です。トイレットペーパー騒動のあったオイルショックの2年後、1975年に雇用調整給付金として始まりました。

雇用保険に加入している企業で、一時的に休業する、配置転換のため教育訓練をする、ほかの事業所に出向させるなど、従業員をクビにしないで頑張るところには、休業手当・賃金などの一部・教育訓練費などを助成します。

今回のコロナ感染拡大では、影響を受ける全国、全業種の企業を対象に、2020年4月1日~6月30日を「緊急対応期間」として、さまざまな特例措置を実施します。コロナによる業績悪化のため、従業員を休ませた場合、支払った休業手当の一部を助成するというものです。

厚生労働省は「緊急事態宣言を受けて休業する事業主は、雇用調整助成金を活用して従業員の雇用維持に努めてほしい」と呼びかけています。感染拡大で経営環境が悪化し、事業活動が縮小して休業などした結果、助成対象となるのは、たとえばこんな事例です。

観光客のキャンセルが相次ぎ、これにともない客数が減り、売り上げが減少した。

市民の活動が自粛されたことにより、客数が減り、売り上げが減少した。

行政からの営業自粛要請を受け、自主的に休業を行い、売り上げが減少した。

雇用調整助成金の具体的な金額をイメージできるように、例を示しておきましょう。

●新型コロナ特例

①緊急対応期間中(20年4月1日から9月30日まで)の助成率が、中小企業の場合従来の3分の2→5分の4、大企業の場合従来の2分の1→3分の2に拡大しました。この期間中に労働者を休ませることで、労働者に支払った休業手当額のうち、中小企業の場合は5分の4、大企業の場合は3分の2が雇用調整助成金として支給されます。

②緊急対応期間中に会社が従業員を解雇しなかった場合、①の助成率が中小企業では10分の10、大企業では4分の3まで拡大されました。助成額の上限も、対象労働者1人1日当たり、8,330円から15,000円に引き上げ。

厚労省の『雇用調整助成金ガイドブック』を見ると、「雇用調整助成金を申請される事業主の方へ」として、「不正受給が判明した場合は公表を行っています!」と赤字で強調する注意書きが目に飛び込んできます。

雇用調整助成金では、架空の休業や教育訓練を実施したことにして、インチキ申請する企業が後を絶ちません。厚労省にはそんな悪徳企業を摘発する「雇用調整助成金Gメン」がいて、架空申請を見つけては「返せ!」とやっています。今回は、全額どころか助成の2割増しの金額を年利5%の延滞金つきで返させ、とくに悪質なものは刑事告訴します。

企業への立ち入り検査、従業員への電話ヒアリング、教育訓練者の受講証明提出もあります。正直にやっている企業の手間が増えたのです。架空申請は絶対にやってはダメです。

雇用調整助成金ではないですが、東京で社員600人を解雇して失業手当を受け取らせようとするタクシー会社が現れました。社員に「コロナが収束したら再雇用する」と説明したと報道されています。当初、メディアも善し悪しのコメントすることなく、コロナ関係のニュースとして流していました。そんな手があったのか、と思った経営者がいるかもしれませんが、これは完全にブラックなやり方で、到底認められる話ではありません。

即日解雇をする場合は、30日分の解雇予告手当を支払わなければなりません。東京労働局も、元の会社に戻ると約束された者は雇用保険の受給資格がない、と説明しています。あとになって、解雇が裁判所に認められなければ、解雇を言い渡したあとの賃金の支払いをしなければいけなくなります。東京地方裁判所に解雇の無効などを求める仮処分を、80人余りの運転手さんたちが申し立ててその後、社長が解雇を取り下げた、とニュースになりました。

●申請の受け付け、必要な書類、申請先は?

雇用調整助成金を受けるには、「支給申請」を提出しなければなりません。

申請手続に必要な書類やお問い合わせ先は、厚生労働省のこちらのサイトをチェックしてください。https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/ koyou_roudou/koyou/kyufukin/pageL07.html#procedure

コロナ110番 会社と個人のお金、コロナからこうやって守れ!
八木 宏之 (やぎ・ひろゆき)
企業再生コンサルタント 株式会社セントラル総合研究所 代表取締役社長。 1959年、東京都生まれ。大学卒業後、銀行系リース会社に就職。債権回収業務で辣腕を振るい、社内2位の業績で表彰される。あらゆる手段を駆使して成績を上げたが、借金に苦しむ人々と接するなかで、回収業務に疑問を抱き退社。 1996年、借金などの債務に苦しむ経営者の立場にたった事業再生のコンサルティング、株式会社セントラル総合研究所を設立。自ら習得した回収業務のノウハウを逆手にとって金融機関と交渉し、合法的借金帳消し・企業再生を図る独自のシステムを構築。 2003年に上梓した著書『企業再生屋が書いた 借りたカネは返すな!』(アスコム刊)は、シリーズ56万部を突破。自殺、夜逃げ、自己破産をせず、借金を帳消しにできる合法的裏ワザは話題になり、反響が殺到。「日経スペシャル ガイアの夜明け」(テレビ東京系)をはじめ、多数のメディアで取り上げられる。 現在も、「経営者と共に歩む」ことを使命に、中小企業再生のエキスパートとして活動している。今まで応えてきた相談件数は1万社以上。42歳で人口透析患者となる。2014年、腎臓移植手術を受け、免疫抑制剤が手放せなくなる。一刻も早いコロナの終焉を願っている。

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