コロナ110番 会社と個人のお金、コロナからこうやって守れ!
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(本記事は、八木 宏之氏の著書『コロナのお金110番 会社と個人のお金、コロナからこうやって守れ!』=アスコム、2020年5月23日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)

中小企業資金繰り対策とは?

日本は中小零細企業が多い国です。小売業・卸売業に占める10人未満企業の割合は、アメリカ50%に対して日本は80%程度です。中小企業で働く人の割合も、アメリカ50%やドイツ60%に対して日本は70%前後。大企業と比べて信用力や担保力が弱く、借り入れが難しい中小企業のほうが数が多く、全体として大企業より多くの従業員を抱えています。

そこで日本では、他国に例を見ない、信用保証協会が中小企業の信用保証をするという制度がつくられました。ようするに信用保証協会が、中小企業の連帯保証人のような立場でハンコをついてくれる。その紙を見せれば、銀行は安心して融資できるわけです。

そうなっているところにコロナの拡大で、「セーフティネット保証4号」「セーフティネット保証5号」「危機関連保証」の三つが発動されました。

「セーフティネット 保証4号・5号」「危機関連保証」を使おう

セーフティネット保証4号は、自然災害などで、経営が不安定になった中小企業がかなり出たとき、国が「地域」を指定して、一定の条件を満たす中小企業の借入債務を信用保証協会が100%保証するもの。今回の指定地域は全都道府県です。

対象は、(1)指定地域で1年以上継続して事業をおこない、(2)災害の影響を受けた後、最近1か月の売上高などが前年同月より20%以上減少し、その後2か月を含む3か月間の売上高などが前年同期より20%以上減少する、と見込まれる中小企業。

保証する内容は、①対象資金は経営安定資金、②保証割合100%、③保証限度額は一般保証(ふだんから利用でき、限度額は2億8000万円)とは別枠で2億8000万円です。

セーフティネット保証5号は、全国的に業況が悪化している業種で、経営が不安定になった中小企業がかなり出たとき、国が「業種」を指定して、一定の条件を満たす中小企業の借入債務を信用保証協会が80%保証するもの。今回は一部例外を除く原則全業種(1145業種)が指定されました。

対象は、(1)指定業種に属する事業をおこない、最近3か月間の売上高が前年同期比で5%以上減少し(2月~4月の売上高がすぐ算定できない場合は、2月の数字が実績、3月~4月の数字が見込みでも可というように運用を緩和中)、または(2)製品などの原価のうち20%以上を占める原油などの仕入価格が20%以上上昇しているにもかかわらず、製品などの価格に転嫁できていない中小企業。

保証する内容は、①対象資金は経営安定資金、②保証割合80%、③保証限度額は一般保証とは別枠で2億8000万円です。

4号と5号は併用できますが、枠としては同じになります。二つ同時に利用するときは、保証限度額が合わせて2億8000万円までということです。

危機関連保証は、東日本大震災やリーマン・ショックといった危機のとき、全国・全業種(一部例外あり)で、一定の条件を満たす中小企業の借入債務を信用保証協会が100%保証するもの。対象は、(1)最近1か月間の売上高が前年同月比で15%以上減少し、(2)その後2か月間を含む3か月間の売上高が前年同期比で15%以上減少する、と見込まれる中小企業。

保証する内容は、①対象資金は経営安定資金、②保証割合100%、③保証限度額は一般保証とは別枠で2億8000万円です。

4号・5号・危機関連のいずれも、売上高の減少については市区町村長の認定が必要です。

まとめると、一般保証に、セーフティネット保証4号・5号と危機関連保証が追加され、三つあわせて合計8億4000万円の保証枠が設定されました。最大でこの枠いっぱいまで融資を受けることができます。もちろん金融機関や信用保証協会の審査があって、融資が認められない場合もあります。

また、「民間金融機関における実質無利子・無担保融資」 も導入されました。都道府県の制度融資を活用し、民間金融機関からでも実質無利子(当初3年間は国が利子分を補給。その後は制度融資の所定金利を適用)・無担保・据え置き最大5年・限度額4000万円(当初は3000万円でしたが、4000万円に拡充された)の融資を受けられます。信用保証の保証料も2分の1またはゼロになります。

具体的には、①個人事業主(事業性のあるフリーランスを含み、小規模に限る)は、売上高が前年同月比5%以上減少の場合に、保証料ゼロ+金利ゼロ。②小・中規模事業者は、売上高が前年同月比5%以上減少の場合に、保証料2分の1。売上高が前年同月比15%以上減少の場合に、保証料ゼロ+金利ゼロ。

さらに、すでに信用保証付きで受けている融資についても、要件を満たせば、制度融資を使う無利子融資に借り換えることができるようになります。

セーフティネット保証4号・5号は、中小企業の経営者や個人事業主が、本社や主たる事業所のある市区町村に申請し、認定証をもらって融資を申し込む流れです。4月の東京都内のある区の商工課では、面会申請するまで1か月待ち、ある区では10日待ちでした。本社が多いところでは申請が殺到してパンク状態のようです。借り入れの詳細は詰めていなくても、とりいそぎ役所の予約だけでも取ったほうがよいでしょう。

民間金融機関における実質無利子・無担保融資の開始によって、一定の要件を満たせば、企業は、いつも付き合っている都市銀行、地方銀行、信用金庫、信用組合に融資を申し込み、政府系金融機関(日本政策金融公庫や商工組合中央金庫)の場合と同じように借りられます。そうなれば、混雑も少しは緩和されるかもしれません。

名古屋市では、地域の主要銀行と連携して、事業者が役所の窓口に出向くことなく、融資の手続きをおこなえるようになりました。銀行が売り上げ減少の認定の申請を代行してくれます。詳細は銀行に確認してください。

コロナ110番 会社と個人のお金、コロナからこうやって守れ!
八木 宏之 (やぎ・ひろゆき)
企業再生コンサルタント 株式会社セントラル総合研究所 代表取締役社長。 1959年、東京都生まれ。大学卒業後、銀行系リース会社に就職。債権回収業務で辣腕を振るい、社内2位の業績で表彰される。あらゆる手段を駆使して成績を上げたが、借金に苦しむ人々と接するなかで、回収業務に疑問を抱き退社。 1996年、借金などの債務に苦しむ経営者の立場にたった事業再生のコンサルティング、株式会社セントラル総合研究所を設立。自ら習得した回収業務のノウハウを逆手にとって金融機関と交渉し、合法的借金帳消し・企業再生を図る独自のシステムを構築。 2003年に上梓した著書『企業再生屋が書いた 借りたカネは返すな!』(アスコム刊)は、シリーズ56万部を突破。自殺、夜逃げ、自己破産をせず、借金を帳消しにできる合法的裏ワザは話題になり、反響が殺到。「日経スペシャル ガイアの夜明け」(テレビ東京系)をはじめ、多数のメディアで取り上げられる。 現在も、「経営者と共に歩む」ことを使命に、中小企業再生のエキスパートとして活動している。今まで応えてきた相談件数は1万社以上。42歳で人口透析患者となる。2014年、腎臓移植手術を受け、免疫抑制剤が手放せなくなる。一刻も早いコロナの終焉を願っている。

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