
はじめに
2025年8月12日、AIスタートアップのPerplexity AIがGoogle(Alphabet)に対し、世界シェアNo.1ブラウザ「Chrome」の買収を提案したことが米Wall Street JournalやReutersによって報じられました。
提示額は345億ドル(約5.4兆円)。これは同社評価額180億ドルの約2倍にあたる、非常に野心的なオファーです。本記事では、この買収提案の詳細、背景、そしてブラウザ・AI検索業界に与える影響を徹底解説します。
1. 買収提案の概要と条件
Perplexityの提案は、単なる資産取得ではなく、既存ユーザーや開発者コミュニティの利益保護も強調しています。
- Chromiumコードは引き続きオープンソース化(透明性確保)
- 2年間で総額30億ドルの投資(開発・インフラ強化)
- デフォルト検索エンジンはGoogleを維持
- Chrome開発チームの相当部分を雇用継続
- Chromeユーザーへの100か月(約8年強)のサポート保証
これにより、買収後も利用環境の大きな変化を避け、安心感をアピールしています。
2. 背景:なぜPerplexityはChromeを狙うのか
Perplexityは創業3年の新興企業ながら、AI検索領域で急成長を遂げています。すでに自社AIブラウザ「Comet」をリリースしており、「AI検索でGoogleを追い抜く」ことをミッションに掲げています。
- Chromeのユーザー規模 世界30億人以上
- データとトラフィックの価値 AI検索の精度・パーソナライズ向上に不可欠
- 市場タイミング 米司法省によるGoogle反トラスト訴訟でChrome売却命令の可能性
とくに、米司法省(DOJ)は反トラスト訴訟の救済措置としてChromeやAndroidの売却を求めており、2025年8月中にも最終判決が予想されています。Perplexityの提案は、この司法判断に先回りした戦略的アプローチといえます。
3. 資金面の裏付け
Perplexityは短期間でNvidia、ソフトバンク、Accelなどから累計10億ドル以上を調達済み。さらに複数の大手投資ファンドが買収資金提供にコミットしているとされます(具体名は非公表)。 買収総額345億ドルの調達スキームは不明ですが、これまでの投資実績とAI業界での評価が資金調達の後押しとなっている可能性が高いです。
4. 業界・専門家の見解
懐疑的な声
- 「ブラウザはコモディティ化が進み、Googleのブランド・ユーザーベースがなければ価値は急減」
- 「高額買収後の収益化モデルが不透明」
肯定的な声
- 「AI時代において“ウェブの入口”を押さえる戦略は合理的」
- 「独立運営で透明性を高め、競争を促す効果が期待できる」
また、OpenAIもGoogleがChromeを売却する場合に取得関心を示しているとの報道もあり、複数社による争奪戦の可能性が浮上しています。
5. Googleの反応
Googleは公式コメントを控えつつも、内部的には「売却は消費者とセキュリティに悪影響を及ぼす前例のない提案」として強く反発。控訴や救済案修正に向けた準備を進めているとみられます。
6. 裁判の流れと今後のシナリオ
- 2024年9月:米連邦地裁(Amit Mehta判事)がGoogleの検索独占を認定
- 救済措置の議論でChrome・Android売却案が浮上
- 2025年8月:最終リメディ判決見込み
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判決次第では、Perplexity・OpenAI・その他大手IT企業による入札合戦の可能性
7. 今後の展望
現状、Googleの抵抗姿勢と買収額の巨大さから、即時成立の可能性は低いと見られます。
しかし、今回の提案はAI検索とブラウザ市場の勢力図を根底から変える引き金となり得るため、今後数カ月は業界の注目が集まり続けるでしょう。