
2024年の機械系CAE国内市場規模は前年比107.4%の1,041億8,300万円の見込み
~幅広い業種で半導体需要は継続、自動車開発のソフトウェア化、Virtual Testingの導入などを牽引役として継続的な成長が続く見通し~
株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、国内外の機械系CAE市場を調査し、現況、参入事業者の動向、将来展望を明らかにした。ここでは、国内市場についての分析結果を公表する。
機械系CAE国内市場規模推移・予測

1.市場概況
2022年の機械系CAE国内市場規模(事業者売上高ベース)は、前年比106.5%の901億6,400万円となった。2022年はロシアによるウクライナ侵攻で原材料価格が高騰、インフレの加速により半導体不足や自動車部品供給網の混乱に伴い、日本の製造業は大きな影響を受ける結果となった。また、中国のゼロコロナ政策は年末まで継続され、入国や行動制限など経済活動の停滞により、自動車の減産を余儀なくされた。
2023年は半導体の製造能力が増強され、幅広い業種において半導体需要が盛り上がりを見せた。特に自動車の電動化対応に伴い、車載電池などの開発が進むほか、ECU(Electronic Control Unit)の統合化やSoC(System on a Chip)に係る研究開発が進展した。こうした自動車開発のソフトウェア化の流れも加速してきており、機械系CAEツールにとって追い風となった。
また、Euro NCAP(欧州新車評価プログラム)において、2026年からVT(Virtual Testing:シミュレーションを用いた事前検証)の導入が盛り込まれたことで、衝突解析を中心に機械系CAEの新たな需要が生まれてきた。こうした背景から、2023年の機械系CAE国内市場規模は前年比107.6%の970億1,400万円と推計した。
2.注目トピック
ギガキャストやVT、ソフトウェア化を背景として、自動車業界を中心に機械系CAEは伸長
自動車業界は多くの機械系CAEメーカーにとって、特にメイン顧客の一角を占めており、その動向は機械系CAE市場の伸びに大きな影響を与える。
そうした中で、自動車業界は複数要因から機械系CAEの活用を積極的に活用しており、ここでは3つの要因を挙げたい。
まず自動車開発のソフトウェア化が進むなか、ソフトウェアを更新して機能や性能を高めるSoCについて、世界中で研究開発が進んでおり、半導体需要の伸びに寄与している。
2つ目は、ギガキャスティング(精密鋳型に溶融したアルミニウムを注入し、大型部品を一括成形する鋳造技術)の導入に向けて大手自動車メーカーが動き出しており、機械系CAEを活用した研究開発や生産現場での需要がより一層広がってきている。
3つ目は、Euro NCAPにおいてVT(Virtual Testing)が採用され、2026年の前面衝突・側面衝突VTを皮切りに、3年ごとに要求項目やレベルを上げる動きがある。こうしたEuro NCAPへのVTの採用に伴い、衝突解析を筆頭に機械系CAEの引き合いが増えていく見通しである。
3.将来展望
2024年は、半導体の需要が順調に推移し、自動車業界においてもソフトウェア化やVTに係る需要も引き続き継続している。加えてギガキャスティングの導入に向けた動きもあり、機械系CAEを活用する需要は研究開発や生産現場でより一層広がってきている。こうした背景もあり、2024年の機械系CAE国内市場規模は前年比107.4%の1,041億8,300万円を見込む。
調査要綱
1.調査期間: 2024年10月~2025年1月 2.調査対象: 機械系CAEメーカー等 3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、電話・e-mailによるヒアリング、ならびに文献調査併用 |
<機械系CAE市場とは> CAE(Computer Aided Engineering)とは、コンピュータにより製品の設計や開発工程を支援する旨の概念をさす。本概念を実現する際のツールとして、機械系システムの強度や流体における抵抗などの特性を解析対象とする機械系CAEに加えて、1DCAEなどのモデルベース開発ツール、数値計算を支援する数値解析などのCAEがある。 本調査における機械系CAE市場とは、構造解析や熱流体解析、樹脂成形解析、鋳造解析など前者の機械系CAEを対象とし、事業者売上高ベースで算出した。 |
<市場に含まれる商品・サービス> 機械系CAE(構造解析や熱流体解析、樹脂成形解析、鋳造解析など) |
出典資料について
資料名 | 2024 CAE市場の実態と展望 |
発刊日 | 2025年01月31日 |
体裁 | A4 267ページ |
価格(税込) | 220,000円 (本体価格 200,000円) |
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