矢野経済研究所
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1月13日、米鉄鋼大手「クリーブランド・クリフス」のCEO、ローレンコ・ゴンカルベス氏は記者会見の席上、日本製鉄によるUSスチール社の買収に関連して「中国は悪だが、日本はもっと邪悪だ」などとダンピング問題を批判したうえで、「日本は1945年から何も学んでいない!」などと星条旗を握りしめながら声を荒げた。19世紀末に芽生えた「黄禍論(Yellow Peril)」そのままの、剥き出しのアジア人蔑視には辟易するが、ある意味 “今” のアメリカの一端を象徴しているとも言えよう。

さて、氏の暴言はとりあえず捨て置く。看過出来ないのはフェイスブック、インスタグラムの運営会社Metaの「ファクトチェックとコンテンツ規制に関する方針転換」である。1月7日、ザッカーバーグCEOは、国際ファクトチェックネットワーク(IFCN)の認証を受けた第三者プログラムの米国内での運用を停止すると発表、あわせて、政治、宗教、人種、性的指向等の文脈における不寛容の自認、排除の呼びかけ、侮蔑的な言葉への制約も緩和すると声明した。

また、「ユーザーの好みに最適化させるパーソナライズ技術を活用することで、これまで制限されてきた一部の政治的コンテンツにもストレスなくアクセス出来るようになる」とのことである。つまり、情報の真偽に関する議論は遠ざけられ、自分にとって心地よい言説だけを根拠に “歴史” や “現実” が勝手に再構成され、それが拡散、共有されるリスクが高まる、ということだ。結果、異論は排除され、分断は深まる。

多様性、公平性、包括性に関するプログラム(DEI)も後退する。ウォルマート、マクドナルド、フォード、アマゾン、、、そして、Metaだ。言うまでもなく、こちらも新政権の政策的主張に添う。トランプ氏がザッカーバーグ氏に対して「ずっと監視している」などと警告してきたことは有名だ。20日の就任式を前にブラフ(bluff)を連発するトランプ氏に早くも忖度、同調、忠誠を表明する者、一方、そこには与しないとの姿勢をとるカナダ、パナマ、グリーンランド、アップル、コストコ、、、世界はトランプ氏のペースに嵌りつつある。

今週の“ひらめき”視点 2024.12.23 – 2025.1.16
代表取締役社長 水越 孝