(左から)アサヒ飲料 米女社長、伊藤園 中野専務、コカ・コーラ ボトラーズジャパン 荷堂執行役員、キリンビバレッジ 井上社長、サントリー食品 小野社長
(画像=(左から)アサヒ飲料 米女社長、伊藤園 中野専務、コカ・コーラ ボトラーズジャパン 荷堂執行役員、キリンビバレッジ 井上社長、サントリー食品 小野社長)

清涼飲料業界の大手5社が11月21日、社会課題に協働して取り組むため、飲料業界「社会課題対応研究会」を発足した。これは、物流の2024年問題、GHG排出量削減、食品ロス問題といった重大な課題を飲料業界全体で解決することを目指すもの。参画企業は、アサヒ飲料、伊藤園、キリンビバレッジ、コカ・コーラ ボトラーズジャパン、サントリー食品インターナショナルの5社。

近年、飲料業界は複数の社会課題に直面している。特に「物流2024年問題」による輸送能力不足、事業活動に伴う温室効果ガス(GHG)の増加、さらに食品ロスの問題は、持続可能なビジネス環境の構築に影響を与えている。こうした背景を受け、研究会では物流2024年問題、GHG排出量削減、食品ロス問題の3つを優先課題として取り組む方針が示された。

コカ・コーラ ボトラーズジャパンの荷堂真紀執行役員最高経営戦略責任者は、「非競争分野での連携は、企業間での重複や非効率を防ぎ、より広範囲にインパクトを与える手段だ。社会のニーズに応える形でGHG削減や物流改善を進めていく」と述べた。

物流2024年問題への対応として、効率的な配送網の整備や環境負荷の少ない輸送手段への移行が検討されている。また、GHG排出量削減では、サプライチェーン全体の効率化を通じ、カーボンニュートラルの実現を目指す。さらに、食品ロス削減に向けて、無駄のない最適な在庫管理や効率的なサプライチェーンを構築していく。

発表会では各社のリーダーが、課題解決に向けて研究会を立ち上げる意義を語った。アサヒ飲料の米女太一社長は、「2018年からラベルレスボトルやCO2削減型自販機などに取り組んできたが、単独で社会全体に大きなインパクトを与えるには限界がある。業界全体で未来の持続可能性を目指していく」と述べた。

伊藤園の中野悦久専務は「自然資源に依存する業界として、気候変動や人口減少といった課題には協調が必要だ。業界全体での非競争分野での協力は、サプライチェーンの持続可能性を確立する鍵となる」と話した。

キリンビバレッジの井上一弘社長は「飲料業界は競争が激しいが、社会課題に関しては協調が必要だ。非競争領域での協働を通じて、単独では成し得ない革新を実現していく」と話した。

そして、サントリー食品の小野真紀子社長は「自然資源を守ることは我々の事業活動そのもの。この研究会を通じて、業界の知恵を結集し、行政や他業界とも協働していく」と締めくくった。

この研究会では、各社の物流部門、製造部門、R&D部門などが横断的に連携し、課題解決の具体策を模索する運営体制がとられる。月に1度以上それぞれのプロジェクトで会議を開き、そこで目標数値も検討していく。知見がたまったら、業界全体に共有していく考えだ。今後は行政や自治体、飲料業界内外にわたる連携を視野に入れているという。

ただ、他の業界では、物流問題についての対応でライバル企業が協働する動きはあるが、温室効果ガスや食品ロスまで幅広く取り組むのは珍しい。これについて、アサヒ飲料の米女社長は、「まず、この飲料業界5社が複数の案件で研究を始めるのは初めてのこと。非常に我々もワクワクしている」とした上で、「どの産業でも、物流問題が産業の存亡に関わる。事業全体の根幹をなす部分なので、飲料業界も最初にテーマに挙げている」とした。

そして、「食品ロス問題や温室効果ガスの問題は、国内外で非常に大きな課題になっている。我々のビジネスに直接結びつく課題なので、まずこれを解決しないと私たちの産業自体のサステナビリティが保たれない。さらには、産業構造や産業自体の競争力や魅力がなくなってしまうことになるので、これも含めて共同で解決していく」と話した。

今回の取り組みは、単なる業界内連携を超え、消費者や地域社会、さらには地球環境全体に対する責任を果たすものとして位置付けられている。飲料業界が知恵と技術を結集させることで、将来的に新たな価値を生み出し、持続可能な社会の実現に向けて大きな一歩を踏み出したといえそうだ。