豆乳製造機器を販売するワイエスピー(福岡県飯塚市)は、浸漬工程なしで豆乳を製造できる「無浸漬豆乳プラント エコスター」を上市している。約20分で消泡剤不使用の豆乳の製造が可能だ。
豆乳を作る際、通常は大豆を前日から水に漬ける必要がある。水温10度の場合は20時間が目安となる。その後、水を抜き、細かく擦り、おからと豆乳に分離させることで豆乳が完成する。
しかし、気温が変われば水温が変わる。新開節夫社長は開発経緯について「水温や時間の調整が必要な浸漬工程を省いて豆乳を作れたら最高だと思った」と話す。
浸漬工程を省くことで得られる利点は多くある。夏の水温上昇による雑菌繁殖の恐れがなく、栄養の流出も抑えられる。これにより味が抜けないという利点もある。排水処理を行う必要もない。
加えて、約20分で製造できるため、従来のように見込み生産をせずに済み、廃棄ロスの削減にもつながる。
〈二重構造で気温に左右されず安定して炊ける、誰でも同じ品質で生産可能、小ロットも〉
製造工程は、まず大豆をひきわりにして、薄皮を取り除き、大豆をすり潰して炊く。
単にひきわりにすると、粉っぽさが出ることが開発時の課題だった「粉砕の仕方など、。数々の製造工程を経て、徐々に粉っぽさが消えていく設計だ」と説明する。
同社の釜は二重構造になっているのも特徴だ。釜内の発射管による直接蒸気と、ジャケット部(釜の周囲)からの間接蒸気により、ムラ煮が起こらないようにしている。
直接蒸気は、炊いている途中で蒸気量を小さく調整し、大豆の甘みを引き出している。間接蒸気があることで、気温に左右されず安定して豆乳を炊ける。この二重窯により、「誰が炊いてもおいしい豆乳が作れる」(新開社長)。
豆乳は大豆10kg単位で作れ、小ロットで生産ができるのも特徴だ。濃度によるが、10kgの釜から25~30Lの豆乳が製造できる。1釜から設置でき、最大6釜まで設置できる。最初は1釜だけ設置し、あとから4釜まで増設することも可能だ。
従来の作り方だと、大豆の浸漬時間の関係で、一度に多量の豆乳を生産することが多いという。小ロット生産を可能にしたことにより、「エコスター」なら追加注文があっても対応しやすい。
さらに、新開社長は「豆乳の製造工程はあいまいな部分があり、技術継承が難しかった。『エコスター』なら、誰でも同じ品質の豆乳を作れる」と強調する。「高級な大豆を使っても味に変化がなかったのに、『エコスター』を導入したことで、味が大きく変わったとの声もいただいた」とする。
なお2013年に、第5回ものづくり日本大賞の製造・生産プロセス部門にて内閣総理大臣賞を受賞している。
「エコスター」は、豆腐店を中心に、大手食品メーカーでも採用されている。浸漬工程が不要になることで、水のタンクを多く設置する必要がない点も評価されているという。
海外での採用実績も多い。「豆腐は、健康的な食材として、世界的にも認知度が高まっている。動物性の食品の代わりに植物性の食品を置き換える動きがあるようだ」(新開社長)と話す。
最近では、豆乳メーカーのVAプロジェクト(大阪市中央区)が展開する「靖一郎豆乳&cafe」で採用された。豆乳の製造経験がない人でも高品質な豆乳が作れる点が評価されている。
〈大豆油糧日報2024年11月8日付〉