峰島新(みねしま あらた)さんは、システムエンジニアとして働く傍ら、映像制作やWeb制作やホームページ制作、さらには画像編集やライティングといった複数の仕事をしています。幼少期の頃から広汎性発達障がい(PDD)に悩まされながらも、自分の強みを活かしてさまざなことにチャレンジしてきました。そんな峰島さんに、これまでの半生について伺いました。 |
幼少期に発達障がいと診断を受ける
私は3歳の時に築地の聖路加病院にて、広汎性発達障がい(PDD)と診断されました。きっかけは、通っていた保育園での出来事です。園長先生が「男子、女子それぞれで並んでください」と指示した際、私は性別の区別がつかず、女子の列に並んでしまいました。それを見た園長先生と両親が私の発達に疑問を抱いたのです。
保育園では先生からの指示を理解できず、まったく違う行動を取ることも多々ありました。そうした行動を見た先生が、発達に問題がある可能性を両親に伝え、検査を受けることになりました。
その検査では主に、パズルをシーンごとに並べ替える課題や、「バスが坂道を登っている時にブレーキをかけたら、なぜ後退してしまうのか」といった質問に答える形式でした。
よくある答えとして「バスの車体が重いので後ろに下がる」というものがありますが、私は「バスは重いから後ろに下がるが、その原因はバスの重力加速度9.8m/secによる圧力だ」と答えました。質問の意図とはまったく違うことを答え続け、お医者様からも「この子は少し変わっているな」と感じてらっしゃったとのことです。
その検査の結果、広汎性発達障がい(PDD)という診断が下りました。これは自閉症スペクトラムに近いものです。主な特徴として、人の話の意味や意図を理解することが難しく、内容を理解できたとしても、空気が読めず、独自に解釈して行動してしまうことがあります。
これが原因で、日常生活や仕事で支障をきたすことがあると言われました。空気を読めないため、周囲から「この人、変だね」と思われることが多く、時には怪しい人やストーカーのように誤解されることもありました。広汎性発達障がいを理解してもらえれば問題はないのですが、知らない人が多いため、「怖い」という印象を持たれることも少なくありません。
我慢してきた反動で、周りとの関係がギクシャクすることも
学生時代は、自分の障がいについて両親以外には話していませんでした。自分でも「障がいなんてない」と思っていたのです。たとえ「変な人」と思われても、それで十分だと感じていました。
私は小・中・高校と一貫の学校に通っていました。しかし、一度「変な奴」というレッテルを貼られてしまうと、なかなか周りに溶け込むことができません。嫌われないように大人しくして、周りに合わせて過ごした12年間だったと感じます。
大学に進学すると、まったく新しい環境になりました。それまで周囲に合わせて我慢してきた自分を解放するかのように、さまざまなことに挑戦しました。積極的に行動する一方で、広汎性発達障がいがあるために人間関係でトラブルが生じることもありました。
12年間も我慢して過ごしてきた反動で、自己中心的な行動が増え、「こうでなくてはダメだ」という強いこだわりを持つようになりました。個人で完結する場面では問題ありませんが、複数人で関わる際には、そのこだわりが原因で人間関係がギクシャクし、周囲の人が離れていってしまうことが多々ありました。
社会人として最初に入った会社でも、周りとの関係がうまくいかず、悩むことが多かったです。しかし、これからは「自分が良ければそれでいい」という考え方ではなく、周囲と協調しながら進めることを大切にしようと考えています。たとえ自分が納得できない部分があったとしても、人間関係が円滑に進むのであれば、歩み寄る姿勢を持っていこうと思います。
発達障がいをプラスに変えていく
発達障がいと聞くとネガティブな印象を持たれることが多いですが、得意なこともたくさんあります。私の場合は、スケジュール管理に長けています。そして、私の最大の強みは「記憶力の高さ」です。初めて会った人の名前や特徴は、大体は一度で覚えることができます。
たとえば、知り合ったばかりの人でも、LINEやSNSのプロフィールに記載された生年月日や出身地などの情報は、すべて記憶しています。また、初めて訪れる場所の経路を一度調べれば、再度行く時には調べ直す必要がないほど、無意識に記憶に残ります。
私は時に空気が読めず、勝手な行動を取ってしまうことがあります。それでも、他者の多様性を尊重することを大切にしています。今はまだ完全にはできていないこともありますが、少しずつ良好な人脈を築けるようになっています。
私が人と関わる際に最も大切にしているのは、どんなに自分が苦しい状況でも「本音を相手に伝えること」です。自分の考えを伝えることで、相手との関係が少しずつ変わっていきます。
また、自分の行動が相手にとって理解しづらいものであっても、相手のペースに合わせて歩み寄ることを意識することで、相手から「変わっているけど面白いね」と良い意味で受け入れてもらえることが増えてきました。
このように、一つひとつの行動が相手の見方を変えていくものです。私はこの「本音を伝えること」と「相手に歩み寄ること」を大切にしながら、人間関係を良好に保つ努力を続けていきます。