(株)はくばく(長澤重俊社長)は9月26日、山梨県北杜市(上村英司市長)と共同で市民の健康増進を支援する「おこめプラス・健康プロジェクト」の始動を発表した。同県初の官民連携プロジェクトで、北杜市民100人へはくばくのもち麦を提供し、「お米に加えるだけで手軽に無理なく健康的な食生活」を1か月体験してもらう「チャレンジ事業」などを通じて、健康意識向上や健康寿命延伸へと繋げる考えだ。
同日、記者発表会を北杜市役所で開催。はくばくの長澤社長は、「当社と北杜市は2020年に、『食と健康を核とした地域活性化に関する包括連携協定』を締結し、市民の健康増進に役立てないかと様々な取り組みを行ってきた。(地域ボランティアの)食生活改善推進員の方の協力による機運の高まりに、上村市長の積極的な姿勢が加わって今回のプロジェクトが発足した」と背景を説明した。
また、「北杜市は美味しいお米の産地だ。だからこそ今回のプロジェクトを進めたい。東北や北陸などでは『なぜおいしい米に麦を入れるのか』と言われるが、大麦や雑穀を入れてもとても美味しいご飯が味わえるという価値を提供していきたい。全国に先駆けて愛着のある山梨で、実際に市民が健康になれば、他の地域でも動きが強まっていくのでは」と意気込んだ。
そのほか、大麦は世界で1.5億tもの生産があるが「食用は1%もないと思われる」(長澤社長)背景には「美味しくない/食べにくい」とのイメージがあるとし、▽半分にカットして黒い線を目立たなくさせる技術▽約5年前より日本人が好む“もちもち食感”のもち麦商品の投入――など、同社における「おいしさ」の取り組みも紹介。科学的エビデンスに関しては、「今後、腸内環境を良くすることが健康の鍵になるだろう。『脳腸相関』研究も進んでおり、認知症への影響、鬱改善への貢献も期待できる」と、今後の可能性にも言及した。
上村市長は、「これまでも、はくばくの知見を活かし、食生活改善を推進する研修会や食育活動を実施してきた。食物繊維たっぷりで腸内細菌の働きが活発になるもち麦を加え、健康意識向上を図るこの事業にぜひ参加してほしい」と呼び掛けた。なお、北杜市健康増進課によれば、同市の高齢化率は県(31%)や全国(29%)を上回るが、1人当たりの医療費/介護保険料は全国平均より低く、健康な高齢者が多い。一方、全世帯で見ると間食や1回の飲酒量が多い傾向にあり、生活習慣病関連では1人当たり医療費が高額になるという課題を抱えている。
〈おこめプラス・健康プロジェクト概要/大麦の機能性〉
新たな取り組み「チャレンジ事業」は、市民100人へもち麦(スタンドパック×2)をサンプリング。1か月間体験してもらった後、便通の変化など食・健康意識の変容についてアンケート調査する。公式ホームページやLINEで案内し、10月7日まで参加希望者を募集中だ(先着)。
「食生活改善推進委員」を通じた活動では今年から、市民への「おこめプラス普及実態調査」の実施や、市内イベントでの大麦の提供や試食を進める。そのほか、市立病院2院にて管理栄養士への大麦勉強会を実施した。「今後は患者に向けた体験の場を設けてもらうべく、サンプリングなどを検討していく」(はくばく市場戦略部PR課の手塚俊彦氏)。小学生が対象の食育教室では11月、NPO法人日本トイレ研究所とタッグを組み、子どもの便秘の啓発活動「スッキリ教室」を北杜市立須玉小学校で行う。実施校は今後増やしていく考えだ。
また、市場戦略本部開発部の小林敏樹氏が、研究成果から大麦摂取により▽血中コレステロール低下▽食後血糖値上昇を緩やかにすること▽便通効果改善▽ブラウティア菌(肥満や糖尿病リスクが低い人ほど腸内に多く見られる菌の1種)増加――が示されていることを紹介した。
〈米麦日報2024年9月30日付〉