7月16日、太平洋の島嶼国14か国、仏領2地域と日本、豪州、ニュージーランドが参加する「第10回太平洋・島サミット(PALM)」がはじまった。PALMは日本が主催する国際会議で南太平洋地域の安定、社会課題の解決、経済発展を目的に1997年から3年ごとに開催している。会議では、気候変動や脱炭素、防災・海面上昇対策や通信環境や金融インフラの整備、人材育成などに関する支援策が議論されるとともに、各国・各地域への個別支援についても協議される。会議は3日間の日程で最終日に共同宣言を採択する。
太平洋島嶼国・地域と日本との関係は深い。日本による委任統治時代を経験したミクロネシア地域では移民をルーツにもつ日系人が人口の2割を占める。伝統的に親日的で、人的交流も盛んである。日本にとってはマグロやカツオの主要漁場であるとともに海上輸送の要所でもある。安全保障環境が厳しくなりつつ中、各国・各地域とのパートナーシップの重要性は高まる。
一方、この地域を対米防衛ラインの最前線と位置付ける中国の圧力も増す。2019年にはキリバス、ソロモン諸島が、今年1月にはナウルも台湾と断交、中国との国交樹立を表明した。米国も関与を強める。2023年にクック諸島とニウエを国家承認、ソロモン諸島とトンガに大使館を設置する。米中対立というリスクを戦略的に利用する、あるいは、せざるを得ない国・地域もある。とは言え、「巻き込まれたくない」が本音ではなかろうか。地域の包摂と安定こそが全てのステークホルダーにとっての利益である。日本外交はまさにこれを主導いただきたい。
さて、ここまで書いたところで(株)共同通信社の「kyodo Weekly NO29」(2024.7.15)に掲載された船越 美夏氏のコラムが目にとまった。タイトルは「激戦地で眠り続ける時限爆弾」、第2次大戦中、太平洋地域で沈没した軍艦や徴用船は3855隻、80年の時を経て腐食と劣化が進み、船内に残っている最大57億ℓと推計される燃料や大量の兵器が流出する可能性がある、という。この差し迫った危機、すなわち “時限爆弾” の問題は1999年にソロモン諸島によって提起されたが、爆弾は未だ “眠り続けたまま” である。沈没船の86%、3322隻が日本船であるという。PALMの主催国であり、当事者でもある日本が果たすべき役割は大きい。
今週の“ひらめき”視点 7.14 – 7.18
代表取締役社長 水越 孝