コロナ禍から復活 最新のタイの飲食店事情

日本M&Aセンターは、2021年11月にタイにて駐在員事務所を開設し、2024年1月に現地法人を設立いたしました。 現地法人化を通じて、M&Aを通じたタイへの進出・事業拡大を目指す日系企業様のご支援を強化しております。

日本M&Aセンターは、タイへの進出・事業拡大をクロスボーダーM&Aで支援しています

私自身は、2度目のタイ駐在となりました。 2021年3月に最初の駐在から帰任後、3年ぶりのタイでの暮らしで気付いたのは、前回駐在時には無かった新たな飲食店が沢山オープンしていることです。

新型コロナウイルスの流行時には、ロックダウンの影響があり、多くの飲食店が姿を消しました。 観光産業が経済の大きな部分を占めるタイでは、コロナ禍の影響は非常に大きく、飲食業界はその煽りを大きく受けた産業の一つですが、 その後、観光需要も回復してきており、街中はコロナ禍前のように多くの観光客で賑わっています。

タイの飲食業界・食品業界は、観光産業と連動しており、多様なジャンルの飲食店や食材を目にすることができます。 そこで今回は、タイにおける、最新の日本食市場の動向について考察します。

データでみるタイにおける日本食市場

まずは、タイにおける日本食市場について、さまざまなデータをもとにして解説します。

好調な対タイ輸出

農林水産省のデータによると、日本からタイに向けた農林水産物・食品輸出の実績は年々増加傾向にあります。

2023年は511億円であり、2018年対比では、約76億円(+17.5%)も増加しています。また、直近実績(2024年1月~3月)は、188億円となっており、前年同期比12.2%増と更に伸長しています。ちなみに、日本からの輸出先としては、第7位の規模感であり、前年累計実績の第8位から更に順位を上げている状況です。

出典: 2024年1-4月 農林水産物・食品の輸出額(6月4日(火)公表)(農林水産省) 2023年農林水産物・食品の輸出実績(国・地域別)(農林水産省)

商圏が拡大する日本食レストラン

JETROが毎年実施している調査(「タイ国日本食レストラン調査」)によると、2023年は、タイには5,751店舗の日本食レストランが存在し、2018年実績と比較すると、その数は、バンコク/バンコク近郊5県/その他の順に、それぞれ1.5倍/2.2 倍/2.5倍と増加しており、合計では1.9倍の増加となっています。

タイ全国都県別の分布でいくと、バンコクおよび周辺県ならびに日本企業が集積する東部経済回廊(EEC)地域に日本食レストランが多いのは当然のことながら、それ以外では、タイ第二の都市といわれるチェンマイが257店舗で4位、人口第2位のナコンラチャシマが103店舗で8位、中国の一帯一路政策とも連動し物流拠点としての重要性が増しているコンケンが79件で11位にランクインしています。

また、先述の3エリア(バンコク/バンコク近郊5県/その他)別の分析において、一番ボリュームの大きい顧客単価層は、どこも101~250バーツ(約420円~1.050円:1バーツ4.2円換算)となっており、これらの情報より日本食が在タイ日本人やタイ人富裕層から、拡大を続けている中間所得層へ浸透していることが読み取れます。

ちなみに、ジャンルとしては、寿司/一般的な日本食/ラーメン/すき焼き・しゃぶしゃぶ/居酒屋/焼肉の順に店舗数が多く、特にバンコク近郊とその他では、居酒屋の伸びが目立っています。 確かに初めてタイへ着任した2017年当時と比べるとタイ人社会における「居酒屋」という言葉の認知度は、大きく向上しているように感じます。

出典:2023年度タイ国日本食レストラン調査(ジェトロ)

内食でも日本食は浸透しつつある

JETROの別調査では、内食(自炊)の面でも日本食が家庭に広がっていることが分かります。

まず、前提として、そもそも自炊の頻度は、高い順から挙げると地方/バンコク近郊/バンコクの順ですが、地域ごとに購入頻度が高いとされる日本産食品の品目の順位は大きく異なっています。 バンコクは、上位3品目がしょうゆ/カレーのルー/日本米の順ですが、地方はカレーのルー/サラダドレッシング/インスタントラーメンとなっています。また、日本食材を選ぶポイントについては、バンコクおよびバンコク近郊では、1位が「味がおいしいこと」、2位が「価格が高過ぎないこと」となっていますが、その他エリアでは、「価格が高過ぎないこと」の方が上位になっており、こちらも日本食が中間所得層へ浸透している証左と読み取れます。

出典:タイ向け食品輸出の実務 ~先行企業の活動事例集~(タイ輸出支援プラットフォーム/ジェトロ)