みなさんは、生成AI サービス「Chat GPT(チャットジーピーティー)」をECサイトのコンテンツ作りに活用しているでしょうか?
テキストで指示すると、さまざまな文章や画像を作りだすChatGPT。うまく使いこなせば、記事のアイデアや構成案を数秒で作るなど、コンテンツ制作の効率化に役立ちます。
しかし、ChatGPTは新しいツールということもあり「操作が難しそう」「AIのことは良くわからない」と感じている方もいるかもしれません。
そこで株式会社フューチャーショップは、SEOを強化したいEC事業者さまに有益な情報をお届けするため、ChatGPTの活用法をテーマとしたオンラインセミナー「ChatGPT活用で差がつくコンテンツSEO」を2024年3月に開催しました。
講師にお招きしたのは、ECサイトの構築やマーケティング支援を手がけている株式会社デザインファミリーの取締役・大谷将大さん。自他ともに認める“SEO好き”であり、ChatGPTを使ったご自身の経験や実績を踏まえてChatGPTの実践的な活用方法を解説してくださいました。
プロンプト(AIに対する命令文)の作り方など、すぐに使えるハウツーもお伝えした今回のオンラインセミナー。400人以上が参加し、ご好評をいただいたセミナーの一部を特別に公開します。
この記事は2024年3月28日に開催したオンラインセミナー「ChatGPT活用で差がつくコンテンツSEO」をもとに構成しています。掲載情報は3月時点のものですが、ChatGPTを活用する際の考え方や、プロンプトの作り方は最新版のChatGPTにも応用できるものですので、ぜひ参考にしてください。 |
株式会社デザインファミリー
取締役 事業本部長
大谷 将大(おおたに しょうた)氏
目次
ChatGPTとは?知っておきたい基礎知識
まずはChatGPTについて簡単に説明します。ChatGPTは米国のOpenAIが2022年にリリースしたクラウド型の生成AIサービスです。会話形式のインターフェースになっており、「プロンプト」と呼ばれる指示文をユーザーが入力すると、まるで人間が書いたような流暢な文章をAIが出力します。
ChatGPTは無料でも使うことができますが、月額20ドルの有料版を契約すると、無料版のAI(GPT3.5)よりも高い知能を持つとされる「GPT-4」を併用することが可能です。
GPT-4は難関大学の学生レベルの語彙力を持ち、米国の司法試験で上位10%に入るほどの知能を持っていると言われています(大谷さん)
ChatGPTの始め方
ChatGPTを始めるには、まずはアカウントを作ります。ChatGPTのホーム画面で「Sign up」をクリックし、メールアドレスやパスワードを設定してください。Google・Microsoft・Appleのアカウントを使ってChatGPTのアカウントを作ることもできます。
言語を変更する際は、アカウント名をクリックして「設定」→「一般」→「言語」と進んで選択してください。チャットの履歴をAI学習に使われたくない場合には、「設定」→「データ制御」と進んで「チャット履歴とトレーニング」をオフにします。
ChatGPTの注意点
ChatGPTは使い方次第で優れたパフォーマンスを発揮しますが、注意点もあります。
例えば、ChatGPTが出力する文章はとても流暢ですが、そこに書かれている内容がすべて正しいとは限りません。生成AIが誤った情報を、もっともらしく出力する現象はハルシネーションと呼ばれ、ChatGPTに限らず多くの生成AIに共通する課題です。生成AIが作った文章をECサイトなどに使う場合には、人間による確認が必要です。
また、書いてある内容が正しくても、問題のある表現が含まれていたり、著作権を侵害していたりする可能性もあります。そういったリスクを踏まえると、生成AIが出力した文章をコピー&ペーストで使用するのは避けるべきでしょう。
Googleガイドラインを遵守
検索エンジン対策という観点では、Googleのガイドラインにも注意が必要です。生成AIを使用すること自体は、Googleのガイドラインでは禁止されていません。ただし、使い方には注意が必要です。大谷さんは、生成AIに関するGoogleのガイドラインを参照しながら、次のように強調しました。
コンテンツ制作を効率化するために、適切にAIを使っていれば問題ありません。ただし、検索結果を操作するためにAIでコンテンツを粗製濫造するような使い方はNGです。
AIで生成したか否かに関わらず、質の低いコンテンツやオリジナリティのないコンテンツは、検索順位が上がりにくくなっています。ChatGPTでコンテンツを作ったら、必ず人による監修を行ってください。
ChatGPTで作ったコンテンツをそのまま使うのではなく、「アイデア出しの壁打ち相手」としてChatGPTを活用すると良いでしょう(大谷さん)
【ChatGPTの注意点】
・生成された文章のコピー&ペーストはNG ・表現や内容の正確性について、人による監修が必要 ・アイデア出しの“壁打ち相手”として活用する |
参考情報:AI 生成コンテンツに関する Google 検索のガイダンス |
ChatGPTを駆使したコンテンツ作りのテクニック
ChatGPTでコンテンツを作るテクニックとして、大谷さんはプロンプトの作り方や、記事のアウトラインを作る手順などを具体的に解説してくださいました。大谷さんの経験と実務に裏打ちされた知見です。実用性の高いハウツーの一部を紹介します。
ChatGPTの能力を引き出すプロンプトの作り方
AIに対する指示文や質問文のことを「プロンプト」と呼びます。ChatGPTをうまく活用するにはプロンプトの作り方が重要です。
同じことを指示していても、言い回しや使う単語などによってChatGPTが出力する文章は大きく変わります。指示や質問の意図があいまいだったり、言い回しがAIにとって分かりにくい文法だったりすると、ユーザーが求めている回答を得られにくくなります。なお、同じプロンプトを入力しても、毎回同じ回答が返ってくるわけではありません。
ChatGPTの能力を引き出すには、プロンプトの書き方を理解することが欠かせません(大谷さん)
ChatGPTの能力を引き出すプロンプトとは、どのようなものなのでしょうか。大谷さんはプロンプトのケーススタディーとして、セミナーのタイトル案を作成するためのプロンプトを解説してくださいました。使用したプロンプトは次のような文章です。
大谷さんが例示したプロンプトでは、最初に具体的な要求(目的)を書き、次に細かい条件を列挙しています。「ターゲット」「条件」「補足」といった項目の先頭に「#」を記載して項目が切り替わっていることを明示し、項目の詳細条件には「・」をつけて箇条書きにするなど、AIが理解しやすい文章構造でプロンプトを記述しています。
ChatGPTは推論が苦手です。簡潔な文章で、指示や質問の内容を具体的に、丁寧な言葉づかいで書くと、望んだ回答が得られやすくなります(大谷さん)
このプロンプトを入力した結果、ChatGPTは約10秒で10個のタイトル案を生成しました。タイトル案を列挙した後に、そのタイトルを作った意図も記述しています。
生成された10個のタイトル案の中から、使えそうなものをピックアップしてブラッシュアップしたら完成です。気に入ったものがなければ「もう一度提案してください」とあらためて指示するか、「再生成」のボタンをクリックすれば追加で10個のタイトル案を出してくれます。
ChatGPTはいくらでもアイデアを出してくれます。まさに天才的な壁打ち相手です(大谷さん)
記事のアウトラインを作る手順
続いて大谷さんは、SEO記事のアウトラインをChatGPTで作る手順を解説してくださいました。記事のタイトルやリード文、アウトライン(H2・H3の見出し)のアイデアをChatGPTがあっという間に提案してくれます。
【アウトラインを作る手順】
- 対策キーワードを選定
- プロンプト①を作成
- 共起語・再検索クエリ・コンテンツクラスターを抽出してプロンプト①に追加
- プロンプト①を入力し、ChatGPTの回答に対してプロンプト②を入力
- 生成されたアウトラインをブラッシュアップ
1.対策キーワードを選定
まずは対策キーワードを選定します。Googleのサイト分析ツール「GA4」やキーワードプランナーを活用してキーワードを抽出してください。GA4の使い方については「EC担当者が知っておきたいGA4の使い方とeコマースへの活用ポイントを解説!500人超参加の注目セミナーをレポート」で詳しく解説していますので、こちらも参考にしてください。
2.プロンプト①を作成
記事のアウトライン作成に使う「プロンプト①」を作ります。プロンプト①の雛形は次のような内容です。伏せ字の部分に対策キーワードを入れ、条件やゴールは自社のSEO戦略に合わせて書き換えてください。
以下のキーワードでWEB検索している人向けのブログ記事の前提条件を考慮しつつ、見出し提案をしてほしいです。
#キーワード「●●●●」 #条件 ・H2の見出しを10個作成し、それぞれのH2の見出しに対してH3の見出しを3つ以上作ってください。なお、似たような見出しは提案しないようにしてください。 ・条件の内容に偏りすぎるのではなく、ユーザーの知りたい情報も予測して提案してください。 #このコンテンツのゴール・目的 ブログ記事に流入してくれた人をECサイトの製品詳細ページに誘導することが目的です。 |
3.共起語・再検索クエリ・コンテンツクラスターを抽出してプロンプト①に追加
次に、対策キーワードの「共起語」「再検索クエリ」「コンテンツクラスター」を抽出し、それらをプロンプト①に追加します。
・共起語:キーワードを説明する際に用いられたり、検索エンジンでキーワードと一緒に使われたりする単語
・再検索クエリ:検索エンジンでキーワード検索を実行した結果、探している情報が見つからず、再検索する際に使用するキーワード(クエリ)
・コンテンツクラスター:キーワードに関連する単語をグルーピングしたもの。大谷さんが考案した概念。(Moreeeモリーによって算出が可能)
#共起語
(共起語を記載してください) #再検索クエリ (再検索クエリを記載してください) #コンテンツクラスター (コンテンツクラスターを記載してください) |
プロンプト①の補足情報として「共起語」「再検索クエリ」「コンテンツクラスター」を加えると、ChatGPTは一層具体的で、解像度の高い語彙を使用してアウトラインを提案してくれます(大谷さん)
今回のセミナーでは大谷さんが開発したSEO対策ツール「Moreee(モリー)」を使って「共起語」「再検索クエリ」「コンテンツクラスター」を抽出しました。「Moreee」の詳細はサービスサイトをご覧ください。
4.プロンプト①を入力し、ChatGPTの回答に対してプロンプト②を入力
プロンプト①を入力すると、それに対する回答としてChatGPTはタイトル、リード文、本文のアウトライン(H2・H3の見出し)を提案してくれます。
この回答に対してプロンプト②を入力します。プロンプト②を入力すると、ChatGPTはプロンプト①の回答内容を踏まえて、記事のタイトル、要約、テキストリンクの位置などを提案します。プロンプト②の雛形は次のとおりです。
提案してくれた見出しの「記事タイトル」と冒頭部分のリード文章「自由な文章版」、「要約版」、「3行にまとめる箇条書き版」をそれぞれ提案してください。
・記事タイトル(見出しと被らないようにしてください) ・自由な文章版 ・要約版 ・3行にまとめる箇条書き版 またリード文内にECサイトに誘導するアンカーリンクテキストも提案してください。 |
5.生成されたアウトラインをブラッシュアップ
プロンプト②に対する回答が得られたら、人による監修を行ってブラッシュアップします。
ChatGPTが提案してくれたアウトライン案をベースに、書くべき情報が網羅されているか、記事の執筆が可能かなどをチェックしてブラッシュアップしてください(大谷さん)
アウトラインの作成にChatGPTを活用すると、企画担当者やライターの負担が減るでしょう。外注している場合には、外注費を抑制できるかもしれません(大谷さん)
まとめ
今回のセミナーで大谷さんは、ChatGPTを活用したコンテンツ制作の実践的なハウツーを解説してくださいました。コンテンツSEOの作業を効率化するヒントが得られたのではないでしょうか。こうしたハウツーを応用すると、既存記事のリライトやコンテンツのペルソナ作成などにもChatGPTを活用することができます。アイデア次第でさまざまな使い方ができるChatGPT。まだ使ったことがない方は、この機会にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
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