年収
(画像=PIXTA)

自分が経営者になると、「自分の年収をいくらにするか」で悩む人は多い。従業員の給与は相場などに合わせることができても、中小企業の経営者は、他の経営者がいくら報酬をもらっているかはわからないだろう。大企業では1億円以上の報酬を受け取っている経営者もいるが、自分で自分の年収を決めるのは難しいものだ。ここでは、中小企業の経営者の年収の決め方について解説する。

目次

  1. 中小企業の社長の給与の相場はどれくらい?
  2. 中小企業の社長の年収、こんな決め方はNG!
    1. 生活費をベースに給与を決める
    2. 前職の給与をベースに決める
    3. とりあえず最初は0円にする
  3. 給与・役員報酬の具体的な決め方とは?
    1. 付加価値分配比率によって決める方法
    2. 税金の観点で報酬を決める方法
  4. 役員報酬以外の収入も検討すべき?
    1. 配当金にかかる税金は?
    2. 配当金を出すメリット・デメリットは?
  5. 経営者の役員報酬は、税理士に相談して決めよう

中小企業の社長の給与の相場はどれくらい?

中小企業経営者の悩みの1つに、「自分自身の給料をいくらにするか」がある。起業したばかりで売上や利益が不安定な時期なら、なおさら難しいだろう。

中小企業の社長の給与の相場は、どれくらいなのだろうか。国税庁の「平成29年度分 民間給与の実態調査結果」によると、資本金2,000万円未満の役員の給与は平均553万円だ。資本金2,000万円以上5,000万円未満だと842万円、資本金5,000万円以上1億円未満では976万円、資本金1億円以上では1,258万円と、企業規模が大きくなるにつれて給与も上がることがわかる。

上場企業を見てみると、桁外れに高い報酬をもらっている経営者もいる。2019年度の上場企業の役員報酬総額を見てみると、最も高いのはソフトバンクグループの副会長であるロナルド・フィッシャー氏で、その総額は何と32億円を超えている。

2億円以上の役員報酬をもらっている役員も200人以上おり、上を見ればきりがない。このような数字を見ると、なおさら自身の給与や報酬をどのように決めればいいか、わからなくなってしまうかもしれない。

中小企業の社長の年収、こんな決め方はNG!

では中小企業の社長の年収は、どのように決めればいいのだろうか。まずは、「よくある間違い」を挙げておこう。

生活費をベースに給与を決める

生活費をベースに給与を決めるという人は多いが、これは間違いである。たとえば、月の生活費が50万円なので、とりあえず役員報酬を月額50万円に設定するといった具合だ。

少し考えればわかることだが、生活費と役員報酬には何の関係もない。ロジック自体が不明瞭なのだ。生活費は状況に応じて変わる可能性があるが、一度決めた役員報酬を変更する場合は、原則株主総会の決議が必要になり、変更にはそれ相応の理由が求められる。生活費の多少かかわらず、利益額などで役員報酬を決めるのが妥当だ。

前職の給与をベースに決める

前職の給与をベースに役員報酬を決める、という考え方もわからなくはない。しかし生活費をベースに決めるのと同じで、前職の給与と役員報酬には因果関係がないし、同じく変更には株主総会での決議が必要になる。こちらも、あまり良くない決め方と言えるだろう。

とりあえず最初は0円にする

事業がうまくいくかどうかわからないから、とりあえず役員報酬は0円にするというケースも多い。これも、役員報酬の決め方としてはNGだ。役員報酬は、基本的に利益を生み出した対価として得るものである。今後事業を行って利益を生み出していくなら、それ相応の役員報酬を設定しておくべきだ。また、「役員報酬0円」は節税において不利になる。その意味でも0円というのはおすすめできない。

給与・役員報酬の具体的な決め方とは?

では実際のところ、どのように役員報酬を決めればいいのだろうか。役員報酬の主な決め方は、2つある。それぞれについて見ていこう。

付加価値分配比率によって決める方法

1つ目は、付加価値分配比率によって役員報酬を決める方法だ。付加価値分配比率とは、会社が得た利益(=付加価値)を経営者と社員で分配する際の比率だ。付加価値の定義はいろいろあるが、基本的には「営業利益+人件費」を付加価値と考えればいいだろう。この付加価値をどのように配分するかで、役員報酬を決めるのだ。

配分については、基本的に合理的な範囲であれば問題ない。配分の参考になるのが、行う事業がどの程度労働集約型で、どの程度資本集約型であるかだ。

労働集約型とは、コンサルティング業やコールセンター業など、基本的に人が付加価値を生むビジネスを指す。資本集約型とは、製造業などの初期投資が大きく、機械化や自動化が進んだ産業を指す。小売業などは、資本集約型と労働集約型の中間と言えるだろう。

労働集約型では、人にかかる負荷は大きくなる。そのため、労働分配率つまり付加価値を労働者(=社員)に多く配分するのが合理的だ。資本集約型の場合は初期投資が多くなるため、それを拠出する経営者の配分を多くすることになる。

なお経営者への配分は、経営者の報酬と会社に残す分に分ける必要があることに注意したい。今はまだ社員がいない場合も、今後社員を雇うことを考えて経営者の配分を決めるといいだろう。

税金の観点で報酬を決める方法

もう1つは、税金の観点で役員報酬を決める方法だ。

社員に給与を払った後、残った会社の利益には法人税がかかる。一方、経営者の給与には所得税と住民税がかかる。これらを踏まえて、「どうすれば全体的な税負担を最小化できるか」という観点で役員報酬を決めるのだ。

東京都の場合、所得が800万円を超える法人であれば、法人税や事業税、法人住民税等を合わせた実効税率は約34%だ。一方個人の場合は、年間所得が900万円以下であれば、所得税と住民税合わせた実効税率は約33%、900万円を超えた分は約43%なので、年間所得を900万円までに抑えることが有効と言える。

中小企業において、社長の給与が月100万円(年1,200万円)というケースが非常に多いが、これは税金の観点では実に合理的と言える。給与所得控除や社会保障などで、年間所得を900万円以内に収めることができるからだ。

この2つの決め方は、どちらが正解というものではない。どちらの内容も検討しながら、総合的に役員報酬を決めることが大切だ。

役員報酬以外の収入も検討すべき?

ここまで、「役員報酬をどう決めるか」について解説してきたが、実は経営者が報酬を得る方法はもう1つある。それは、配当金だ。経営者が100%株主の場合、配当金はそのまま経営者の収入になる。

配当金にかかる税金は?

配当金の原資は、基本的に利益剰余金だ。利益剰余金は、一般的に会社の純利益から生み出される。つまり、配当金の原資は、法人税を支払った後の当期純利益ということになる。

配当を受け取る人、つまり株主は配当控除を受けることができる。配当控除は二重課税を防ぐためのものであり、年間所得が1,000万円以下の場合、配当金の10%が控除される。

配当金は総合課税または分離課税を選択できるが、総合課税を選んだ場合、控除後の所得が900万円を超えてしまうと前述のとおり43%の税金がかかるため、注意したい。分離課税の場合、配当控除は適用されないが、税率は一律で約20%だ。

配当金を出すメリット・デメリットは?

配当金を出すメリット・デメリットを整理してみよう。

メリットは2つある。1つは、役員以外の株主に利益を配分できることだ。たとえば、経営に携わらない親族などの株主に配当金を出すことできる。役員や社員を無駄に増やすことなく、利益を身内に配分できることは、大きなメリットと言えるだろう。

もう1つは、個人所得を最大化できることだ。分離課税の場合、配当金の税率は約20%なので、役員報酬として出すよりも個人の税負担は軽くなる。

デメリットも2つある。最大のデメリットは、配当金は経費として扱われないことだ。役員報酬は経費として利益から差し引くことができるが、配当金は税引後利益から出るため、法人としての節税メリットはない。

もう1つは、配当を出すことで自社株の価値が上がってしまうことだ。非上場株の評価においては、配当金の有無が基準になることがある。配当金を出すと、その株式の評価が高くなるのだ。最終的に株を売る場合はメリットになるが、相続する場合は株式の評価額が高いと相続税が高くなってしまう。

同族会社で相続が予想される場合は、株式の評価を高くするメリットはないため、配当金は出さないほういいだろう。

経営者の役員報酬は、税理士に相談して決めよう

経営者の年収は、上は数十億円から、下は数十万円までと幅広く、「正しい決め方」というものはない。産業・業界の特性や税金の支払い、配当金という形での受け取りなど、様々な要素を踏まえて決めることになる。

避けなければならないのは、生活費や前職の給与などで役員報酬を決めてしまい、それが社員の不満の原因になったり、会社の利益が減少する原因になったりすることだ。役員報酬を決めるにあたっては、自分だけで決めるのではなく、会計士や税理士などの専門家に相談するのも有効だろう。

役員報酬を決めるにあたっては、常に合理的な判断をしているかどうかを確認しながら、慎重に検討したいところだ。

文・THE OWNER編集部

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