役員報酬,相場
(画像=PIXTA)

役員報酬の金額を決める際は、相場が参考になる。この記事では、国税庁の統計による役員報酬の相場を見ていく。また役員報酬を決める際のポイントや、損金に算入するための手続方法も紹介する。

目次

  1. 国税庁の統計に見る役員報酬の相場
  2. 役員報酬を決める際のポイント
    1. ポイント1.税金や社会保険料とのバランスを考える
    2. ポイント2.同業種・同規模の他社と比較して高すぎないようにする
    3. ポイント3.毎月の報酬は期首から3ヵ月以降に変更しない
    4. ポイント4.役員賞与は事前に届け出をする
    5. 役員報酬を決めるにあたってその他留意すべきこと
  3. 役員報酬を損金に算入するための手続方法
    1. 定期同額給与の手続き方法
    2. 事前確定届出給与の手続方法
  4. 役員報酬はバランスを考えて慎重に決めよう

国税庁の統計に見る役員報酬の相場

国税庁が行った標本調査によると、民間企業役員の資本金別の役員報酬(平成30年度)の平均は、以下の表のとおりだ。

資本金男性女性合計
2,000万円未満694万円394万円605万円
2,000万円以上955万円481万円851万円
5,000万円以上1,215万円518万円1,094万円
1億円以上1,467万円724万円1,392万円
10億円以上1,583万円1,040万円1,561万円

出典:国税庁『民間給与実態統計調査結果』

男女の差はあるものの、資本金2,000万円未満の企業は605万円、5,000万円~1億円の企業でも1,094万円に留まっている。「意外に少ない」と思う人も少なくないだろう。

役員報酬を決める際のポイント

それでは、役員報酬を決める際のポイントを見ていこう。

ポイント1.税金や社会保険料とのバランスを考える

役員の報酬を決める際にまず考えるべきことは、税金や社会保険料とのバランスである。役員報酬を増やすと会社の利益が減るので、法人税や法人が支払う社会保険料などは少なくなる。一方で、役員個人が負担する所得税や社会保険料は高くなる。

さくら会計事務所の試算によると、会社の利益が1,000万円、役員報酬の合計額を400万円、600万円、800万円、1,000万円とした場合の、法人および役員個人の税金と社会保険料の支出額は以下のとおりだ。

役員報酬設定額400万円600万円800万円1,000万円
法人税80万8,900円46万3,400円11万7,900円0円
法人事業税20万7,000円10万5,000円2万6,700円0円
地方法人特別税8万9,400円4万5,300円1万1,500円0円
法人都道府県民税6万400円4万3,100円2万5,800円2万円
法人市町村民税13万2,900円9万9,400円6万5,900円5万4,500円
法人社会保険料60万6,800円91万200円121万3,600円151万7,000円
法人支出額小計190万5,400円166万6,400円146万1,400円159万1,500円
所得税7万900円20万1,100円34万5,600円49万5,500円
住民税17万9,800円31万300円45万4,900円60万5,400円
個人社会保険料59万6,000円89万4,000円119万2,000円149万円
個人支出額小計84万6,700円140万5,400円199万2,500円259万900円
支出額合計275万2,100円307万1,800円345万3,900円418万2,400円

出典:さくら会計事務所『役員報酬の適正額』

法人としての支出額は、役員報酬の合計額が800万円のときに最も少なくなる(146万1,400円)。それに対して個人の支出額は、役員報酬の合計額が400万円のときに最も少なくなる(84万6,700円)。

したがって、法人と個人の支出額のバランスが最も良い役員報酬の金額は、600万円程度ということになる。この金額と、資本金2,000万円未満の企業の役員報酬平均額605万円がほぼ一致するのは、偶然ではないだろう。

ポイント2.同業種・同規模の他社と比較して高すぎないようにする

役員報酬を決める際は、同業種・同規模の他社と比較することも大切だ。他社と比較して高すぎる場合、役員報酬の損金への算入を税務署が否認することがあるからだ。

損金への算入を否認されると、否認された分に法人税がかかる。また支給された役員報酬には個人所得税がかかるため、税金を二重に支払わなければならなくなる。

ポイント3.毎月の報酬は期首から3ヵ月以降に変更しない

期首から3ヵ月を過ぎてから役員報酬を変更しないことも、損金算入の観点で重要だ。期首から4ヵ月目以降に役員報酬を変更すると、変更した分の損金への算入が認められなくなることがあるからだ。

役員報酬は、「定期同額給与」の条件に適合すれば、損金への算入が認められる。定期同額給与の条件は、以下のとおりだ。

1. 1ヵ月ごと以内の一定の期間で支給される給与で、事業年度の期首から期末まで同額であるもの

2. ただし、以下のケースについては金額の変更が認められる。
・期首から3ヵ月以内における変更で、変更後から事業年度末まで同額であるもの
・役員の職制上の立場の変更(常務から専務になったなど)、役員の職務内容の重要な変更(会社が合併して役員の職務内容が大幅に変わったなど)などの、役員報酬を変更することについてやむを得ない事情があるもの
・経営状態が著しく悪化したことにより、役員報酬を引き下げるもの

「やむを得ない事情」がある場合を除き、役員報酬を期首から4ヵ月目以降に変更した場合は、損金への算入が否認される可能性が高い。役員報酬の変更についてこのような制限があるのは、役員報酬を増減させることによる利益操作を防ぐためだ。

ポイント4.役員賞与は事前に届け出をする

役員には、賞与を支給することもできる。その場合は、事前に税務署に届出をする必要がある。

役員に支給する賞与は、定期同額給与として認められない。年に数回支給する賞与は、「1ヵ月以内の一定の期間ごとに支給される給与」に当てはまらないからである。

役員賞与は、定期同額給与とは別の「事前確定届出給与」として取り扱う必要がある。事前確定届出給与として認められるためには、

・株主総会によって役員賞与についての決議をした日から1ヵ月後
・事業年度の期首から4ヵ月後

のうち早いほうの日までに、役員賞与の支給日と支給額を税務署に届け出ておかなければならない。事前確定届出給与として認められれば、役員賞与は損金に算入できる。ただし、実際の支給日と支給額が届け出た支給日・支給額と異なる場合は事前確定給与として認められず、損金への算入が否認されることになる。

役員賞与の支給に対してこのような制限が設けられている理由も、やはり利益操作を防ぐためだ。

役員報酬を決めるにあたってその他留意すべきこと

役員報酬を決めるにあたって、その他に留意すべきことは以下のとおりだ。

・会社の損益状況を考慮する
役員報酬を決めるにあたっては、会社の損益状況を考慮すべきであることは言うまでもない。役員報酬によって会社の損益がマイナスになるようなことは、あってはならない。

・社員の給与との格差が大きくなりすぎないようにする
社員の給与との格差が大きすぎると、社員の不満が生じてしまうからだ。格差が20倍を超えると、社員の不満が生じやすくなると言われている。

・名義だけの役員に役員報酬を支払わない
税金対策の一環で、名義だけの役員に役員報酬が支払われることがある。税務調査では、これを過大役員報酬として損金算入が否認される可能性が高い。

・親族役員に過大な報酬を支払わない
親族の役員に、過大な報酬を支払わないことも大切だ。税務調査で報酬の根拠を明確に説明できないと、損金への算入が否認されることがある。

役員報酬を損金に算入するための手続方法

役員報酬や役員賞与を損金に算入するために、定期同額給与と事前確定届出給与の手続方法を見ていこう。

定期同額給与の手続き方法

役員報酬を定期同額給与として取り扱うためには、以下の手続きが必要になる。ただし、税務署への届け出は必要ない。

  1. 株主総会で役員報酬について決議する
  2. 株主総会の議事録を作成して保管する

1. 株主総会で役員報酬について決議する
役員報酬を定期同額給与として取り扱うためには、役員報酬についての決議を株主総会で行う必要がある。役員の報酬は、会社法において「株主総会において決議する」と定められているからだ。

定期同額給与の変更は、「期首から3ヵ月以内」と定められている。したがって、株主総会は原則として期首から3ヵ月以内に開催しなければならない。ただし、役員報酬を決議するための株主総会は定時株主総会である必要はないので、臨時株主総会で決議しても問題はない。

2. 株主総会の議事録を作成して保管する
株主総会を開催したら議事録を作成し、保管しておこう。税務調査では、株主総会の議事録がないと、役員報酬の損金算入が否認されることがあるからだ。

小規模企業の場合、「役員も株主も社長1人」ということもあるだろう。その場合も、株主総会の議事録は作成しておこう。

事前確定届出給与の手続方法

役員賞与を事前確定届出給与として取り扱うための手続方法は、以下のとおりだ。

  1. 株主総会で役員賞与について決議する
  2. 「事前確定届出給与に関する届出書」を税務署に提出する

前述のとおり、事前確定届出給与に関する届出書を提出する期限は、以下のうち早いほうと決められている。

・株主総会によって役員賞与についての決議をした日から1ヵ月後
・事業年度の期首から4ヵ月後

たとえば、3月決算の会社が5月20日の株主総会で役員賞与を決議したとする。その場合は、

・株主総会から1ヵ月後 …6月20日
・事業年度の期首から4ヵ月後 …7月31日

となるため、「6月20日」が期限となる。1日でも遅れると受理されないので注意しよう。

役員報酬はバランスを考えて慎重に決めよう

役員報酬の相場は、平成30年度の国税庁の調査によると605万円(資本金2,000万円未満の企業の場合)だ。この金額は、税金や社会保険料の法人負担と個人負担がバランスよく釣り合う金額でもある。

役員報酬を決める際は、損金算入が認められるためのさまざまな配慮が必要になる。損金算入が否認された場合は、法人税と所得税を二重で支払わなければならなくなるので注意したい。

文・THE OWNER編集部

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