こんにちは。
一般社団法人日本NFTツーリズム協会の岩下と申します。
この度、NFT Mediaさんより、有識者による記事投稿企画のご依頼をいただき、僭越ながらツーリズム業界を代表して、「ツーリズム×NFT」をテーマに記事投稿をさせていただきます。
まず、弊協会の設立背景ですが、私が前職JTBを21年3月に退職後、約4か月間全国の観光地を視察に訪れながら、今後業界に価値提供していく仕事=キャリアを模索していました。
その答えが、たまたま21年に世界的に盛り上がっていたNFTやWeb3でした。
全国の観光現場では、旅行の発地からでは見えない課題が山積みになっていて、資金源の乏しさ、専門人材の少なさ、災害、感染症等外的要因に対する脆さ、観光資源(例えば、伝統文化や祭り等)を支える地域住民の減少など、非常に大きな問題が多く存在していました。
これら複数の問題が絡み合い、半分諦め状態のような地域が多く、このまま地域全体が衰退していくのを見守っているような印象も受けました。
そんな全国の地域・観光現場を見ながら、「今後最も業界にインパクトを与えるツールがNFTだろう」という考えに至り、これを業界全体に普及させる取組みをしていくことを決めました。
これから、ツーリズムとNFTの掛け合わせによる事業モデルや、この分野の可能性について、皆様と共有出来ればと思います。
目次
1. ツーリズム産業の重要性
ツーリズムは、一産業として持つさまざまな側面、また時代の文脈から非常に重要です。
例えば、人口減少による経済が縮小していく社会においては、外客からお金を稼ぐこと(いわゆる外貨獲得)ができ、地域経済の維持に貢献できること、また旅行者の消費が交通、宿泊、飲食、土産、手配代行、ガイドサービス等多くの地域事業者に落ちる、“すそ野の広い産業”であること等です。
また、来訪客からの関心が、住民の自地域の文化への誇りの醸成や再認識に繋がったり、相互理解の促進による平和な社会の構築に繋がる等、数字には表せないさまざまな価値ももっています。
2. ツーリズム産業のポテンシャル
日本のツーリズム産業のポテンシャルは、以下からも容易に想像がつくと思います。
・観光庁は、2030年に年間6千万人のインバウンド旅行者数、15兆円の消費額を目標に掲げている。※コロナ前の2019年で約4.8兆円の年間消費額(※1)
・外貨獲得市場として、現在最大の自動車産業(年間12兆円)を抜き、国内最大になる。
・グローバルにおけるツーリズム産業は、コロナ前の2017年は世界経済の成長率3%を上回る4.6%を記録(※2)。
・国連世界観光機関の発表では、1年間あたりの海外旅行者数は、2017年の約13億人から2030年には約18億人になると予測。
・2021年の経済フォーラムで発表された日本の観光国際競争力ランキングは1位。
・2019年グローバル20か国での調査「今後訪れたい国・地域ランキング」で1位。(※3)
つまり、世界における一大成長産業の中でも、日本は世界トップの競争力を持っているということです。
日本の自動車、家電、漫画・アニメ、ゲーム等が世界を席巻してきたように、これからは観光も世界に誇る日本の一大産業になっていくと思います。
※1 訪日ラボ 2019年インバウンド消費データ:
https://honichi.com/data/consumption/2019/
※2 JICA 2018年7月観光の今を知る:https://www.jica.go.jp/Resource/publication/mundi/1807/201807_02_02.html
※3 電通「ジャパンブランド調査2019」:
3. ツーリズム産業の課題とNFTによる解決の可能性
ツーリズム産業でこれまで解決が困難だった課題と、NFTによる解決の可能性を挙げていきます。
①観光地経営組織や美術館等地域の箱モノの補助金依存体質
→NFT販売による事業資金の調達や支援者の獲得
②新型コロナウイルスなどの感染症や自然災害等の外的要因への脆さ
→BCP対策(事業の継続計画)としてのメタバースの活用、NFT販売によるバーチャルからのマネタイズ
③一見旅行者のリピート化
→会員証NFT、事業オーナーNFT等によるリピーター・関係人口づくり
④閑散期対策
→使用日・使用期間を限定した流動性の高いチケットNFT(宿泊、交通等)の活用
⑤観光資源を磨ける人材の欠如
→地域に紐づいたDAOの形成・運営
⑥海外標準での価格設定
→NFT流通市場による価格の適性化
⑦高利益商品づくり
→デジタルとリアルの融合による高付加価値商品づくり
⑧顧客ニーズへの理解不足
→議決権付きNFTの販売による旅行者ニーズの可視化、旅行者の経営リソース化
まだ多くの先行プロジェクトでは、未成熟な事業環境もあり、現在は試行錯誤、事業検証のフェーズにあると思いますが、気づいた時にはNFTの活用方法が業界全体として常識になっている、そのような未来を想像しています。
4. ツーリズム業界におけるNFTの活用4分類
ツーリズムにおけるNFTの活用タイプを大きく分類すると、下記①~④+αになるかと思います。
①デジタル化・・・既存のものをデジタル化し、さらに付加価値がついているもの
例:お土産・伝統工芸品、チケット、伝統衣装(アバターファッション)、バーチャル美術館そのもの、アート、ふるさと納税返礼品等
②文化の半永久保存
例:伝統紋様、文献、絵画、設計図、方言
③マーケティング、プロモーション
例:誘客、周遊促進、情報拡散、IP活用
④権利付与による関係構築
例:デジタル住民、温泉再開発コミュニティ、田んぼオーナー等
αその他、上記に入らないもの
例:CRM、現物資産の真贋証明、トレーサビリティにおける活用
現状、多くのNFTプロジェクトで、上記①~④の複数の要素を兼ね備えていると思います。
まずは、大まかにこのような分類があること、これらを1つのツールで同時に実現出来てしまう有用性・万能性は、事業賛同者を集める上でもポイントかと思います。
5. NFTが普及した観光地や業界像
現段階では(2023年末執筆時点)、まだNFTの社会実装は発展途上にあり、事業内容、活用の方向性によっては、既存の手段やツールの方がさまざまなコストを抑えられたり、事業の成功に繋がりやすいかもしれません。
そのため、決してNFTを使うこと自体が目的にならないよう注意する必要はあるかとは思います。
しかし、将来的にはNFTが社会、ツーリズム業界のインフラとなり、全国の観光地にも普及していくと思います。
NFTを起点に、同じブロックチェーンを基盤とした外貨としての暗号資産が稼ぎやすくなったり、観光プロジェクトのDAOメンバーを集められたり、メタバースと現実世界を行き来したりすることになると思います。
6. NFTによる地域経営のアップデート
世界の観光競争力ランキングでトップに輝く日本の各観光地は、今後DAOやNFTコミュニティを採用することで、多くの海外のファンの力を借りれるようになり、多くのメリットを享受できるようになると思います。
他業界の方も、ぜひ外部から地域のDMO、観光協会に観光地経営の協力者として働きかけていただけると嬉しいです。
7. まとめ
今回は、さまざまな観点や具体例を通して「ツーリズム×NFT」の可能性についてお話しさせて頂きました。
最も訪問したい国ランキング1位の日本ですが、観光現場では課題だらけです。NFTの活用により課題解決の方向性が示されてはいるものの、NFTプロジェクトの量は圧倒的に少なく、試行錯誤が続いています。
そのため、この成長市場に対し、より多くの業界内外の参入者が求められています。課題解決=新たなビジネスチャンスとして、是非検討してみては如何でしょうか。
今回は以上です。
次回は、「業界の補助金依存体質問題とNFTによる解決の方向性」についてお話ししたいと思います。