矢野経済研究所
(画像=PIXTA)

内製化を主体としてきた日系大企業の外注化機運の高まりを背景に右肩上がりの採用支援ビジネス!

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、国内の採用支援ビジネスを調査し、主要市場分野や参入企業の動向、および将来展望を明らかにした。

採用アウトソーシング(RPO)総市場規模推移(主要5市場計)

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1.市場概況

2018年度の採用アウトソーシング(RPO)総市場規模(主要5市場計)は前年度比8.6%増の7,193億円となった。本調査では採用アウトソーシング(RPO)総市場とは、採用アウトソーシング、採用管理システム、採用関連アセスメント、人材紹介サービス(ホワイトカラー人材)、求人情報サービス(ネット転職情報、およびアルバイト・パート・派遣求人情報)の5市場を対象とし、一部重複している市場規模もあるため参考値とはなるが、当該5市場全てにおいて前年を上回る結果となった。

2.注目トピック

注目される採用支援ビジネス

労働環境を巡っては、2012年度頃からの景気の好転により、リーマンショック以降長く続いた人材の採用をストップあるいは縮小する動きもついに終焉を迎えることとなり、企業の採用意欲は高まる方向にシフト、有効求人倍率も1倍程度を維持した状態(厚生労働省データ)が続いている。一方、少子高齢化により、総人口は2008年、労働力となる生産年齢人口(15歳以上65歳未満人口)は1995年をピークに減少トレンド(総務省統計局データ)に入っており、とりわけ若年層の人材不足が顕在化している。若年層や優秀な人材の確保が厳しくなる中で、採用プロセスが煩雑になり、要する時間も拡大していることから、採用業務を支援・代行するアウトソーシングサービスに注目が集まるようになっている。

自社で長年蓄積してきた採用ノウハウに関しても、人材確保難や売り手市場が続く中で、採用成功に至らない事態も生じるようになっており、従来であれば自社で行われていた採用の根幹部分である「採用計画の立案」や「求める人材の要件定義」などを外部の専門事業者へ委託する動きも出てきている。さらには、人材採用を経営上の重要なテーマと捉え、経営戦略の一つとして投資を惜しまない企業も増えており、採用ノウハウを持つ事業者の活用機運が高まっている。こうした中で、顧客の採用課題に合わせて採用業務を最適化し、課題解決につなげるRPOソリューションに対する需要が拡大しており、マーケット拡大の強力な追い風となっている。

一方、サービス提供事業者側を取り巻く環境を見ると、顧客企業の需要の拡大を受けて、採用業務の単なる代行から採用コンサルティングのような高付加価値ソリューションの提供へ移行する流れが生まれており、その流れを受けるかたちで提供サービスを一括提供する体制づくりが進んでいる。また、採用業務の支援にとどまらない、人事部門を軸とした横断的なサービス領域の拡大といった人事業務を一括して請け負える体制を整備する動きも活発化しており、人材・採用領域以外から市場へ参入してくる事業者も増える方向にある。こうした動きはHRTech(※調査要綱参照)の登場により加速しており、採用業務に関してもシステム化により、人を介さないサービスの開発も活発化している。人を介してサービス提供されているサービスとの境界、いわゆる人でなくてはならないサービスとの線引きを含めて、サービス提供事業者側の業務フローを早急に見直す必要性も高まっている。

3.将来展望

2019年度の採用アウトソーシング(RPO)総市場規模(主要5市場計)は前年度比8.6%増の7,815億円を見込む。「採用アウトソーシング市場」が前年度比17.5%増、「採用管理システム市場」が同13.3%増、「採用関連アセスメント市場」が同1.8%増、「人材紹介サービス市場」が同12.2%増、「求人情報サービス市場(ネット転職情報サービス)」が同11.8%増、「求人情報サービス市場(アルバイト・パート・派遣求人情報)」が同2.6%増と、すべてにおいて前年増とみる。