現地の肌感覚を通して日本国企業が安心してM&Aで進出可能なマーケットである。

先に記載させていただいた、メリットをひとつひとつ解説していきます。

中華系が約75%と多いこと、安心・清潔である。

こちらについては、言わずもがな中華系の人種が75%ということで、街を歩いていても肌の色が近く、居心地の悪さを大きく感じられないでしょう。 実際に日本の買手企業と一緒にシンガポールの譲渡企業のオーナーとTOP会談を同席した経験がありましたが、非常に人種の親和性は高いなと感じました。

また中華系の英語、現地ではシングリッシュと言われることもありますが、欧米の流暢な英語でなくとも会話が可能という点は、羞恥心が強い日本人にも合っていると思います。 またシンガポールは外国人を流入させる施策の一環で、圧倒的な治安の良さと清潔さを保てる街となっています。

外には何千台レベルの監視カメラが存在しており、条例で夜10時以降お酒は購入できなかったり、ゴミのポイ捨てに対する厳しい罰則もあります。 女性が夜中安全に一人で出歩けるアジアで唯一の都市ではないでしょうか。日本と比較してもこの衛生面、治安の良さは引けを取らないと思います。

日本と比較してtaxの恩恵を多く受けられる

これは多く語られるところではありますが、具体的になにがどうメリットあるか正確に把握している方は意外と少ないのではないでしょうか。

まず法人税は17%で、日本の約半分です。 ただ他にも各種優遇施策があるので、実行税率は10%くらいになる企業も多いといいます。

またシンガポールの企業を買収した親会社が仮に日本企業であった際、非常に大きな税務メリットがあります。 日本での法人税を計算する際に一定の要件を満たす統括会社ならばシンガポールの会社からの配当金の95%を益金算入しなくてよいのです。

たとえばシンガポールの企業から1億円の配当を日本の親会社へ配当しようとすると95,000千円が益金不算入ですので、5,000千円仮に益金になると税金はこの5,000千円にしかかからない(約1,700千円)ということになります。これは大きなメリットであります。 参考:外国子会社配当益金不算入制度について

ASEANやオセアニアに拠点の位置づけとして地政学的にも経済的にも都合が良い

まずシンガポールからマレーシア(国境境のジョホール)までは車で1~2時間で越境可能ですし、同国のクアラルンプールまでは飛行で1.5時間ほど。 またインドネシアのジャカルタまでは飛行で2時間、フィリピンのマニラまでは約4時間、タイのバンコクは約2.5時間、ベトナムのホーチミンは約2時間、インドのチェンナイは4時間、ブルネイまでは2時間。とASEAN諸国の地理的に中心地と言っても過言ではなく各国へのアクセスが抜群に良いです。

よってこの地理的環境と経済的合理性を掛け合わせるには親会社は日本企業にしてシンガポールに純粋持ち株会社を設立する。 その下へASEAN各国の企業をぶら下げる形が、最も効率がよい企業グループの運営の仕方かと思います。 シンガポールが根付いてくれば、もともと親会社だった日本企業もこちらのホールディングスの傘下に変更した方が税効果的に最もよいかもしれません。

上記の通り、新型コロナウイルスが落ち着いた今、各国のヒトモノカネの移動は以前よりも活発になってきています。 そして気が付けば日本以外のASEANがGDPの生産性を高め、物価の上昇率も順調です。 私も先日(23年12月上旬)シンガポールへ渡航しましたが、物価の高さを痛感しました。

こういった中、海外から仕入れをして、日本国内でビジネスを展開し続けているだけでは本当に良いのでしょうか。 一方で、シンガポールにも課題があります。対象国は食料品を95%以上輸入でまかなっています。 港を飛行機から見下ろすと、大きなタンカー級の船がディズニーランドかというばかりに入港待ちで長蛇の列をなしています。

よって輸入のディレイが発生し、物流面に課題が残ります。 よって、国内で食品を輸入して販売する事業だけではなくシンガポールから輸出するビジネスも現地の経営者は非常に関心を持っています。 ここで日本食とのコラボレーションが図れると思います。

大きな視点では5年~10年後を見据えたとき、ASEANの各国の国力の勢力図はまた変わっているはずです。 まずは、小さくてもM&Aでシンガポールへ拠点を設けていくことは非常に有効であることは上述した通りです。M&Aを駆使して海外進出をしていきましょう!

いかがでしたでしょうか? 食品業界のM&Aへのご関心、ご質問、ご相談などございましたら、下記にお問い合わせフォームにてお問い合わせを頂ければ幸甚です。 買収のための譲渡案件のご紹介や、株式譲渡の無料相談を行います。 また、上場に向けた無料相談も行っております。お気軽にご相談ください。

著者

白鳥 雄飛 白鳥しらとり 雄飛ゆうと

株式会社日本M&Aセンター/業種特化2部 衣料業界専門グループ

1985年宮城県生まれ、2018年から日本M&Aセンターへ参画後、外食店舗、パン小売店、アパレル領域、食品物流、食品クロスボーダー案件、ECショップなど主に衣食に関わるライフスタイル領域のM&Aを中心に手掛けている。