ニチレイフーズ 奥村剛飛マーケティング部長
(画像=ニチレイフーズ 奥村剛飛マーケティング部長)

マーケティングの支援を手掛けるNPO法人MCEI(Marketing Communications Executives International)東京支部が運営する実務家向け定例研究会が11月21日に都内で開かれ、会員でもあるニチレイフーズから奥村剛飛マーケティング部長が講演した。その中で同社は歴史的にモノづくり気質の強い企業として、イノベーター気質の企業とは異なるアプローチがあるとの考えを示した。そして「冷凍食品が食卓に当たり前にある世界をつくることが、ニチレイフーズの、また社会課題に対する役割だと思っている」と語った。

講演タイトルは「冷凍食品マーケット拡大に向けた、ニチレイの取り組み」。

「当社はもともとの起源がBtoBにある。マーケティングの会社というよりはどちらかというとモノづくりの会社という部分が強かった」

同社の戦略カテゴリーは米飯とチキンの2つ。いずれも市場規模が大きく、世界的に実需があり、冷凍の機能を発揮しやすい分野だ。「原料調達、生産、マーケティングといろいろな部分に社内の力を結集して、カテゴリーNo.1をとれるように事業展開している」

米飯の象徴である「本格炒め炒飯」は2017年に出荷ベースの売上100億円を突破したが、右肩上がりの成長は2015年以降だという。そこにはマーケティング施策の成果があった。

「冷凍食品の特徴は、購入者と喫食者が異なる点だ。メインターゲットの購入者とサブターゲットの喫食者の双方に認知度を高めて、購入度を高めることがプロモーションのポイントだ」

2015年にはラグビーの五郎丸選手を起用してテレビCMを展開し、東京ラーメンショーなどのイベントへの広告出稿や外食企業とのタイアップ広告、QBハウスでの広告動画の展開など、全方位に認知拡大を図った。直近では2021年に世界で一番売れている炒飯としてギネス認定を受けている。

とはいえ「本格炒め炒飯」だけを指名買いしている人は数%に過ぎず、冷凍炒飯を全く買わない人が3割いるという。「まだまだマーケットを伸ばせると思っている。お米の消費量はほとんどが家庭内の炊飯で、中食や冷凍米飯の比率は全体の中で6%程度。お米の消費量は年々低下しているが、分母は大きい。加工米飯全体の市場は年々拡大している。家庭で炊飯する時代が終わり、これからは選んで買う時代になると見立てている」とした。

「本格炒め炒飯」は2030年までに次の大台突破を目指したいとした。

チキンの主力商品「特から」の前身は「若鶏の唐揚げ」という商品名だった。テレビCMでは紫色をテーマカラーにして鈴木亮平さんを起用して放映した。商品名にインパクトを求めて、ニックネーム的に「特から」という名称を付けた。紫のテーマカラーを「特から」のパッケージに採用し、CMには同じ鈴木亮平さんを起用した。「特から」は1粒の大きさが特徴の一つ。開発の際には専門店や持ち帰り惣菜の平均を取り、従来の冷凍唐揚げの平均29.7gよりも大きい32gに決めた。

「特から」は2017年の発売から1カ月で店頭配荷80%と一気に市場を席巻した。「唐揚げは手作りが減り、代わって冷凍が伸びている。冷凍3割、手作り3割、惣菜3割――が家庭内食の指標で、一旦3割の市場を取れれば、マーケットとして確立する」との見方を明かした。

同社は業務用から商売が始まり、客に対応した商品をつくり、それを家庭用に提供するために電子レンジ対応技術が生まれた。広域事業は業務用の大口得意先の囲い込みのために始まった事業だ。「味の素にはアミノ酸が、カゴメにはトマトと野菜が、ミツカンには酢と発酵がある。絶対的な味の核を持っているのでイノベーター気質で市場創造型、マーケティング寄りといえる。そしてオーナーシップも強い。それに対して、ニチレイの核は強いて言えば冷凍だが、味とはいえない。どちらかといえば市場拡張型のフォロワーで、モノづくり寄りの会社だ。業務用でプロの反応を見ながら事業展開しており、物事の価値観を相対化して測るのがニチレイのビジネスの中心だ。ニチレイにはニチレイらしいアプローチの仕方があると思う」とした。

ただ冷食はそのまま食べる、加熱、調理して食べる、下ごしらえ済み――とすべてで置き換えができるものだけに「チャレンジしないとわからないことがたくさんある」とした。

〈冷食日報2023年11月27日付〉