のれん償却とは 会社の財政状態及び経営成績を理解する上で、企業価値を左右する「のれん償却」は見過ごせない要素です。本記事では、のれん償却の概要や、メリット・デメリットなど詳しく解説します。

のれん償却とは

のれん償却とは、会計処理の一つで、主に企業の買収や合併などで発生する「のれん」の価値を、一定期間にわたり規則的に償却することを指します。

具体的には無形固定資産に計上した「のれん」の一部を、一定の期間ごとに「のれん償却」として費用(販売費及び一般管理費)に計上し、その価値を減らしていきます。

のれんが大きいほど、計上する費用は大きくなるため、M&Aにおいて適正な額かどうかを十分に検討する必要があります。なお、負ののれんについては発生時に一括で収益計上されます。

のれんとは

M&Aにおいて、買収金額が対象企業の時価純資産を上回る場合があります。 この差額部分を会計上、無形固定資産として計上したものがのれんです。これは、企業のブランド価値や顧客基盤、技術ノウハウといった「無形の価値」が含まれるため発生します。

日本基準の会計上、こののれんは実質的な自己創設のれんの計上防止の観点等から、一定期間にわたり規則的に償却を行います。これを「のれん償却」と呼びます。

<関連記事>
M&Aにおける「のれん」とは?税理士がわかりやすく解説

のれんの償却期間

のれんの償却期間は、日本の会計基準により「20年以内のその効力が及ぶ期間にわたって行う」と定められています。

つまり、最長20年を期限として、事業や業界の特性などに基づき、各企業が償却期間を設定します。一度決定した償却の期間は、変更することはできません。

償却期間を短く設定した場合、計上する費用が大きくなり、営業利益に影響が出る可能性があるため、期間は慎重に決める必要があります。

また後述の通り、国際財務報告基準(IFRS)では、のれんの償却を行わない代わりに、必ず毎年減損テストが行われるなど、会計上ののれんの償却は国や地域、使用する会計基準によって異なります。

のれん減損との違い

「のれん償却」と「のれん減損」は、ともに企業が他の企業を買収した際に生じる「のれん」の帳簿価額を減少させる会計処理ですが、その方法とタイミングが異なります。

のれん償却は上述の通り、買収した企業ののれんを一定期間にわたって等分し、毎期同額を費用計上することです。これにより、のれんの帳簿価額が規則的に減少し、特定の期間内でのれんの価値をゼロにすることを目的としています。

一方、のれん減損は、定期的に(通常は年に一度)のれんの価値を評価し、現在の価値が帳簿上の価値を下回っている場合に、のれんの価値を減少させる(減損する)ことを指します。

具体的には減損の兆候の判定を行い、兆候があると判断された場合に、減損損失の認識の判定を行います。そして減損損失を認識することとなった場合に、減損損失の測定を行います。

例えば、買収した企業が期待通りのパフォーマンスを発揮できなかった場合や、経営環境の著しい悪化、最初に予想されていた価値が低下している場合等には、のれんの過大計上のおそれがあります。

この場合、帳簿価額から回収可能価額まで、その差額を一度に減額するのが減損処理です。

ここで重要な違いは「のれん償却が規則的に価値を減じていく」処理であるのに対して、「のれん減損は一度に大きな価値を減じる」という点です。