起業,年代,ハードル
(画像=GaudiLab /Shutterstock.com)
黒坂 岳央
黒坂 岳央(くろさか・たけお)
水菓子肥後庵代表。フルーツビジネスジャーナリスト。シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、東京で会社員を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。ビジネス雑誌やニュースサイトでビジネス記事を書いている。著書に『年収1億円超の起業家・投資家・自由業そしてサラリーマンが大切にしている習慣 “億超えマインド"で人生は劇的に変わる!』など。

筆者は経営コンサルタントではないのだが、起業して様々ビジネスを手掛けて会社員時代の10倍ほど稼げるようになり、ネット記事を中心にメディア露出をするようになって「副業・起業」に関する相談を受けるときがある。

年代20代から50代までと様々だ。興味深いことにこの年代の差に起業に関する違いが垣間見えるように思える。

中高年は「リアル起業」

まず、40代以降の中高年の方に見られるのが「リアル起業」である。

リアル起業とは、英語力を販売するために会議室を借りて英会話スクールを立ち上げる、料理の腕を生かしてそば屋を開業する、駅前のオフィスを使ってコンサル事務所を開くといったものだ。

こうしたリアル起業は何をやっているのかが外から見えやすく、労働集約的に働くので起業する本人の体力、時間がそのまま収益資本力となる。昨今のタピオカブームで「フランチャイズ契約希望者募集」なども見られるようになった。当たれば大きく、多店舗展開などで全国制覇をするのは派手さがある。
だが、こうしたリアル起業には資金的なリスクが少なくない。「脱サラして、のんびりと自分のカフェを持ちたい」というささやかな夢を語る人も少なくないが、開業資金は最低でも1,000万円以上必要となる。気軽に始めるにはあまりにもハードルが高いのだ。

筆者も最初のビジネスは「リアル起業」だった。銀座のレンタルオフィスを借りて、英会話スクールを立ち上げてみたが見事に失敗。損失は数十万円程度で済んだのだが、もしも本格的にオフィスを用意してしまい、お客さんが来ずにコストと言う出血が止められなければと思うと、ゾッとする話である。

若い世代は「ネット起業」

20〜30代の起業相談で圧倒的に多いのが、「ネット起業」だ。物心ついた時からコンピュータに触れてきた経験があるし、彼らにとってはリアル起業よりネット起業で稼ぐイメージの方がしやすいのだろう。筆者も目下、ネットショップ、オンライン英語スクールビジネスで稼いでいるので分かるのだが、ネット起業はリアル起業にはない様々なメリットがある。

まずはなんと言っても、コスト面でのリスクがリアル起業に比べて圧倒的に小さいということである。オフィスや店舗を構えるのには、巨費を投じる必要があるリアル起業に対して、ネット起業では毎月のレンタルサーバー費用があれば、集客の準備が整えられる。筆者も大きな収益の柱となっている、ネットショップと、オンライン英語スクールのビジネスは、毎月それぞれ1000円程度のサーバー代、年間数千円のドメイン代が固定費である。どれだけ安い物件を探しても、ネット起業の低コストに敵うものはないだろう。

さらにネット起業は空いた時間に取り組める、という利点がある。筆者がネットショップで事業を始めた時は会社員だった。もちろん、本業は真面目にやっていたので帰宅後と土日の週末だけ取り組む副業としてのスタートだ。初年度からそこそこ売れていたのだが、リピート顧客がいなかったので、経営・売上が安定するまでは1年ほどを要した。ここでもネット起業の低コストメリットが効いてくるのだが、本業の安定収入があったので、家計が傾く心配は一切なく精神的に不安定になることはなく、じっくりと取り組むことができたのだ。

加えて、リアル起業の商圏が近隣に限られるのに対し、ネット起業ではまさに世界となる。筆者は講演に呼ばれて登壇することもあるのだが、東京の講演では参加者の多くが関東エリア在住者となる。それに対して、ネットに物理的距離は関係ない。

経営者は「ハイブリッド型起業」で挑戦せよ

経営者は利益を最大化させることを考慮する必要がある。そうなると、オススメしたいのが「ハイブリッド型起業」である。つまりは、ビジネスをリアルだけ、ネットだけに限定するのではなく上手にリアル・ネットを介在させるのだ。

筆者はネットショップで高級フルーツを販売しているのだが、プロのパティシエと組んで食事イベントに提供させてもらった体験がある。ネットの顧客がリアルの場に参加できる絶好の機会となった。また、提供しているオンライン英語教育ビジネスでも、受講者が筆者主催のリアルセミナーに申込みをしてくれることが少なくない。「ブログやメディアを通して振れている相手と直に会える」という価値として感じてもらえているようだ。

ネットもリアルもそれぞれのスタイルにメリットがある。すでにリアル、ネットでビジネスを提供している経営者も違う路線で再展開してみてはいかがだろうか。

文・黒坂 岳央(水菓子肥後庵代表 フルーツビジネスジャーナリスト)

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