矢野経済研究所
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フードロス削減の機運が高まり、食品産業全体で取組みが本格化

~フードロス削減を中核とした新たなビジネスも誕生、食品産業の変革に挑む~

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、フードロス削減の現状と市場を取り巻く環境について食品関連企業のみならず、周辺企業まで含め幅広く調査・分析を行い、日本におけるフードロス削減の全体像を明らかにした。

フードロス(食品ロス)削減の取組みの有無

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1.調査結果概要

農林水産省・環境省のデータによると、日本では年間約640万トンのフードロス(食品ロス)があるとされる。クリスマスケーキやおせち料理、恵方巻きなどの季節商品が大量に廃棄されるニュース報道等により、社会的関心が高まり、フードロス削減の機運が近年急速に拡大している。

フードロス削減に対する取組みは、これまでは食品関連企業が中心であり、その理由もコスト削減や効率化、環境や社会的問題といった観点からの取組みであるケースも少なくなかったが、近年はフードロス問題をビジネス(営利目的事業)として解決しようとするスタートアップ企業や、他業種から大手企業が参画する動きも顕在化してきている。

ビジネスモデルは多岐に亘るが、一例では、Webやスマートフォンアプリを利用することで人手をかけずに事業を開始できることがスタートアップ企業と親和性が高いことから、フードシェアリングサービスなど、販売期限が過ぎたものや余った食材などと消費者を結び付けるプラットフォームビジネスに繫がる事例が多く見られる。

また、技術革新によって既存ビジネスや商品の延長線上でフードロス削減に寄与する資材等を提供する事業や、より直接的にロス食材を使用した商品を新たに開発する事例も見られる。さらに、AI(人工知能)を用いた需要予測分野でフードロス削減に貢献しようとする取組みもある。

2.注目トピック

食品製造業の多くですでにフードロス削減の取組みを実践

2019年11月から12月に実施した、日本国内の食品関連企業(食品メーカー、飲料メーカー、酒類メーカー)103社に対するフードロス削減の取組みに関する法人アンケート調査によると、フードロス削減に向け何らかの取組みを行っている(単数回答)と回答した企業は、全体で82.5%となっており、業種別にみても、食品メーカーで84.4%、飲料メーカーで73.3%、酒類メーカーで81.8%と総じて高いという結果であった。

フードロス削減に取組む理由(複数回答)では、最も多いのが「コスト削減の為」で、全体で78.8%となり、次いで「製造・販売体制の効率化の為」が47.1%となっている。また、フードロスの発生量(単数回答)について、最も多かった回答が「加工・調理くず、端」であったことからも、食品の製造時の無駄を極力減らしていくことがコスト削減、延いてはフードロス削減につながるものと考える。