プラスチックの精密切削で、全員が加工技術のプロへ。IoT&ICTを導入し生産性向上を図り、増産体制に入る ワークヤマト(長野県)

目次

  1. プラスチック加工の専業として創業。2017年に安曇野市に移転
  2. 「プラスチックのコンビニ」を標榜。短納期で高品質を前面に出す
  3. コロナ対策で医療用の飛沫防護ボックスも製造
  4. 小型から大型部品まで加工可能。0.05mm単位の追加工にも対応
  5. 最新鋭の機械を継続的に導入。OJTで機械操作技術を教育
  6. ファイルサーバーを入れ替え、送付された図面データの加工時間短縮や蓄積データの活用で見積時間短縮実現。遠隔監視システムも検討
  7. 経営理念は顧客第一主義、加工技術の優位性。平均年齢は37歳
制作協力
産経ニュース エディトリアルチーム
産経新聞公式サイト「産経ニュース」のエディトリアルチームが制作協力。経営者やビジネスパーソンの皆様に、ビジネスの成長に役立つ情報やヒントをお伝えしてまいります。

プラスチックの精密切削加工で成長してきた株式会社ワークヤマト(長野県安曇野市)。加工機械などを積極的に導入し、安定した需要をつかんでいる。2023年秋には製造棟を増築し、増産体制に入る。ICTによる文書管理のデジタル化だけでなく、CAD/CAM(コンピューター自動設計・製造)などで製造時間短縮も図る。今後も「顧客第一主義」をモットーとして精密切削技術を極め、新しい需要開拓にも挑戦していく考えだ。(TOP写真:最新鋭の複合加工旋盤)

プラスチック加工の専業として創業。2017年に安曇野市に移転

プラスチックの精密切削で、全員が加工技術のプロへ。IoT&ICTを導入し生産性向上を図り、増産体制に入る ワークヤマト(長野県)
ワークヤマトの本社工場

株式会社ワークヤマトは、金属の切削加工中心の会社に勤務していた鳥羽忠代表取締役の父親が、これからはプラスチックの時代だと考え、1985年に長野県松本市で樹脂の切削加工専業として創業した。創業の地が現在の松本市梓川倭(やまと)だったことから、社名にヤマトを冠した。

鳥羽忠社長は大手機械メーカーの松本工場でタービンの生産技術を担当していたが、「小さい頃から父親の手伝いをしていた」ことから、1996年には父親の跡を継ぐべくワークヤマトに入社。2015年4月には社長に就任した。2017年9月、松本市の工場が手狭になったことから、本社・工場を現在の安曇野市に移転した。

「プラスチックのコンビニ」を標榜。短納期で高品質を前面に出す

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自社の技術力を説明する鳥羽忠社長

同社は「プラスチックのコンビニエンス」を標榜(ひょうぼう)しているように、アクリル、ポリカーボネート、ナイロン、テフロン、エンジニアリングプラスチックなど、さまざまな種類の樹脂資材の在庫を持ち、「短納期で高品質に加工する技術力」(鳥羽社長)で顧客を開拓してきた。その仕事ぶりで地元の商社などとの信頼関係を築き、取引先を増やしていった。

納入先は半導体製造・検査装置や光学・医療機器のほか、電子部品、プリンター、自動車関連など様々で、商社を含めた取引先は年間で約65社に上る。取引先の業種も幅広いため、たとえ一部の業種が不振になったとしても他の業種向けで補う構造となっており、コロナ禍の影響も全くと言っていいほどなかったという。

コロナ対策で医療用の飛沫防護ボックスも製造

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自社で製造した飛沫防護ボックス(ホームページの写真です)

コロナウイルス関連では、2020年8月に医療用の飛沫防護ボックスも製造した。コロナ感染患者に気管を挿入する際に、医師が感染するリスクを回避するためにボックス内に手を入れて施術する。地元の医療機関から製造の依頼があり、仕様を検討していたが、台湾の医師がアクリル製のボックスで作成した公開情報をもとに独自の試作品を開発。試作品の使用状況をもとに形状の変更も行ったところ、県外からも引き合いがあり、5台程度ながら納入した実績を持つ。同社のプラスチック切削加工技術が評価を得ていることの表れといえる。

小型から大型部品まで加工可能。0.05mm単位の追加工にも対応

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大型の切断機

「プラスチックを高精度で切削できる企業は数少なく、新規参入も難しい」(鳥羽社長)ことが、同社の安定性を担保している。例えば、プラスチック板材の加工は、厚さ0.2mmから幅500mm、長さ100mmまで、丸棒なら直径0.3mmから700mm、長さ1,000mmまでと、小型から大型部品まで幅広く多品種少量で加工を請け負うことから、顧客からはまさにコンビニのように気軽に加工を依頼しやすい企業として存在感を示している。

切削加工では、追加工(ついかこう)も手掛ける。これは、成型機では対応できない精度の寸法に加工するために、精密に切削する工程だ。例えば、人工透析器の挿し込み口は血液が漏れないよう、0.05mm単位の切削が必要だ。こうした精密切削も、部品を1個ずつ手作業で切削しているという熟練技術も持つ。

営業担当者は置いていないが、その技術力が評価され、ホームページを見た県外の顧客が直接加工を依頼してくるなど注文も増えていき、地元・長野県だけでなく中部、関東、東海地方など全国的に取引が広がっている。これに伴い、生産能力拡充のために2023年11月完成を目指して、本社工場の裏手に新工場棟を建設中だ。現在の工場棟の床面積約780平方メートルに対し、新棟の床面積は約180平方メートルだ。

最新鋭の機械を継続的に導入。OJTで機械操作技術を教育

さまざまな部品の切削加工を可能にしているのが、鳥羽社長が「安曇野に本社工場を移転してから2年に1台は新しい機械を導入している」というように、最新鋭の機械の導入に積極的で、多種の加工機械や測定機を備えているためだ。現在ではマシニングセンター(MC)、NC旋盤、フライス盤などに加え、寸法や精度を測る測定機など計24台を導入。この2年でも、国のものづくり補助金を活用して5軸加工MCを取り入れた。このほか、地元・安曇野市の補助を受けて生産設備も更新している。もちろん、新工場棟にも最新鋭の機械を導入する。

プラスチックの精密切削で、全員が加工技術のプロへ。IoT&ICTを導入し生産性向上を図り、増産体制に入る ワークヤマト(長野県)
4台をそろえるマシニングセンター

新しい機械を導入した際には、従業員11人に対して鳥羽社長やベテラン技術者がマンツーマンで操作方法を指導。しかも、工作機械などは比較的プログラミングが容易な機種を選定していることで、従業員が自分でプログラムして操作することが可能だ。こうしたOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)により、1年から1年半で一人前になるという。しかも、1人で複数台の機械を担当するなど、「一人ひとりが加工技術のエキスパートを目指す」(鳥羽社長)姿勢を徹底している。

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補助金で導入した5軸加工MC
プラスチックの精密切削で、全員が加工技術のプロへ。IoT&ICTを導入し生産性向上を図り、増産体制に入る ワークヤマト(長野県)
各種の検査機器をそろえる検査室

ファイルサーバーを入れ替え、送付された図面データの加工時間短縮や蓄積データの活用で見積時間短縮実現。遠隔監視システムも検討

生産管理にはICT導入が役立っている。文書管理システムを導入し、ファイルサーバーも入れ替えた。FAXやメールなどで送られてきた注文書や図面をサーバーに保存し、必要なものをCAD/CAMでプログラミングして、工作機械で読み込み製造する方式だ。これらのデータはサーバーに蓄積・管理しているため、同じような加工依頼が来た場合は保管データを参照でき、見積や設計などの時間短縮につながっているという。

今後のICT化については、紙を使用している発注書などをタブレット端末で管理し、ペーパーレス化により時間短縮を図る考え。製造面では機械類の稼働率を上げるため、IoT化によってネットワークでつなぎ、遠隔監視できるシステムの導入などを検討している。

経営理念は顧客第一主義、加工技術の優位性。平均年齢は37歳

ワークヤマトの経営理念は、「顧客第一主義を基本とし、優位性のある加工技術の追求により顧客との強い信頼関係構築を図り、会社のさらなる発展と社員の幸福、社会への貢献に取り組む」と、顧客重視、技術重視という鳥羽社長の考えを端的に表している。行動指針でも、一人ひとりがエキスパートを目指し、工程改善と高い技術力を追求する努力を続け、5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)を徹底して社会人としての自覚を持つことなどとうたっている。

切削加工だけでなく、溶接や接着なども手掛け、プラスチックに関する加工は一通り対応している。今後も「加工技術を極めたい」と強調する鳥羽社長は、その延長線上に次の経営の柱を作りたいと構想している。従業員の平均年齢は37歳と、若い力を結集してコンビニのように身近な存在ながら、高い技術力を背景にした利便性を武器に、存在感を高めていく考えだ。

プラスチックの精密切削で、全員が加工技術のプロへ。IoT&ICTを導入し生産性向上を図り、増産体制に入る ワークヤマト(長野県)
「プラスチック切削技術を極めたい」と話す鳥羽社長

企業概要

会社名株式会社ワークヤマト
住所長野県安曇野市豊科高家6565-1
HPhttp://work-yamato.com
電話0263-87-6801
設立1985年10月
従業員数12人(パート・アルバイト含む)
事業内容樹脂部品の精密切削加工、樹脂成型品の追加工、樹脂試作品の製作、各種治具の製作