矢野経済研究所
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2030年の物流業界は人手不足への対応、テクノロジーの活用やデジタル化、脱炭素に向けた対策を軸とした取り組みが加速

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、国内の物流業界を調査し、現況や進行している取り組みを踏まえ、2030年の物流業界の将来展望について複数のシナリオを提示し、考察する。ここではその一部を公表する。

1.調査結果概要

近年の国内物流の動向は、国内貨物総輸送量は緩やかな減少傾向となる一方、インターネット通販(EC)市場が好調であることから、ラストワンマイル配送※は活況を呈している。2030年の物流市場は、国内GDPの成長に加え、物流費の上昇、営業用貨物自動車の輸送量の増加、ラストワンマイル領域における取り扱い個数の増加(配送回数の増加)が想定される。その一方、懸念事項としては、人口減少に伴う消費の減少や国内製造業の生産量の低下(主に海外移転等)、国内輸送の大半を担うトラックドライバーの労働力不足が挙げられる。特に、2030年における物流業界の人手不足は現在より深刻になることは明白であり、その時点までにいかに労働生産性の向上、物流の効率化や、物流業界の構造改革を進められるかが物流業界の健全な成長に繋がっていくと考える。こうした状況を踏まえ、今後物流事業者が取り組むべき課題・方向性として具体的な取り組みを次に提示する。

【人手不足への対応】
自動運転トラック、配達ロボット、宅配ドローンなどの無人運行手段の導入による輸配送(長距離輸送および宅配)に加え、輸配送の効率化(共同物流※、中継輸送※、トラック車両の大型化等)に関する取り組みを加速させる。輸配送の効率化にはメーカー、卸売業、小売業といったサプライチェーン全体で物流システムを構築するなど、関連企業間の連携(協業)が重要である。またこうした企業を超えた連携を加速させるためには、現下、個別企業内で最適化された情報を物流システム内で統一化し、標準化するためのデジタル化を進めることが前提要件となる。こうした取り組みが進展し、現行のドライバーの労働環境(給料や労働時間、環境)が見直され、改善されることで、将来の人手不足への対応にも資するものと考える。

【テクノロジーの活用、デジタル化の促進】
倉庫の管理や制御を兼ね備えた倉庫実行システムやトラックの入出庫を管理する配車システム、倉庫業務の各工程を担うロボットの導入を進めることで、アナログからデジタルへの移行を促進させる。デジタル化を進めるにあたっては情報共有のための規格の統一や標準化を進めるとともに、人材配置やピッキング作業など暗黙知に依存している属人的な情報を可視化することで作業の均質化を図り、輸配送から倉庫管理・制御までの一貫した工程の最適化をはかる。

【環境(脱炭素)に向けた対策】
政府の2050年カーボンニュートラル(脱炭素)宣言に向けた取り組みとして、ラストワンマイル配送※に用いる車両の電動化をはじめ、太陽光発電システムを倉庫に設置し電力消費を賄うなど、再生可能エネルギー由来の電力の利活用を進める。

2.注目トピック

2030年の物流業界の理想的なシナリオ

現在から2030年までの物流に関わる政府・業界団体の目標値や、改正が予定されている法制度等を前提に、2030年の物流業界について長距離輸送、倉庫、地場配送(宅配)の観点から理想的なシナリオを考察する。

【長距離輸送】
人手不足に対応すべく、テクノロジーの活用と輸送の効率化に向けた動きが並行して加速する。2030年には、高速道路など一部区間で自動運転トラックが運行するようになり、将来的には自動運転トラックが走行する専用レーンが主要高速道路に設置されることが期待される。 同時に、輸送の効率化に向けた動きとしては、共同物流※や中継輸送※、モーダルシフト※の動きが物流業界全体で加速していくとみる。

【倉庫】
2023年から2030年にかけてロボット・システムの導入が進み、倉庫内全体の最適化を人ではなくAIが判断するようになる。一部の倉庫事業者では、完全自動倉庫を実現し、「人」から「ロボット」を前提とした倉庫設計へと移り変わる。なお、中小規模の倉庫ではここまでは至らないものの、RaaS(Robot as a Service)などロボットをサブスクリプションで提供するといった手軽に導入できるサービスが普及することにより、省人化、デジタル化が進んでいくとみる。

【地場配送(宅配)】
インターネット通販(EC)の伸長に伴う物量増加、及び荷物の小口化による配送回数の増加が続く一方、労働時間の上限規制があるため、より効率的な配送手段として、自動配車システムの導入の可能性がある。また、個人事業主といった宅配の新たな担い手を守るための労働環境の整備や安全対策が制度として確立する。 また、車両については電動車両による配送がみられるようになるとみる。

※共同物流:複数の企業が倉庫や物流センターを共有し、共同輸配送を行うことをさす。
※中継輸送:長距離・長時間に及ぶ運行などにおいて、運行途中に中継地点を設置し、他のトラックドライバー(運転手)と交代することで一つの運行を複数人で分担する輸送形態をさす。
※モーダルシフト:トラック輸送から環境負荷の少ない海運・鉄道輸送へ転換することをさす。
※ラストワンマイル配送:一般消費者と物流の最終拠点を結ぶ事業者から一般消費者個人(BtoC)、一般消費者個人から同個人(CtoC)における配送サービスとする。

調査要綱


1.調査期間: 2023年1月~3月
2.調査対象: 国内物流に関わる事業者(運送事業者、倉庫事業者、物流ロボットメーカー、物流テック事業者等)
3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、電話・e-mail等によるヒアリング調査および文献調査併用
<物流業界とは>
本調査における物流業界とは国内輸送(幹線輸送、地場配送、宅配便)、国内倉庫、関連する物流ロボットなどICT(情報通信技術)を活用した物流システム全般を対象とする。
<市場に含まれる商品・サービス>
国内輸送、幹線輸送、地場配送、宅配便、国内倉庫、危険物倉庫、自動運転、電動化車両、物流ロボット、物流システム、物流テック等

出典資料について

資料名2030年の物流業界の展望
発刊日2023年03月28日
体裁A4 204ページ
価格(税込)165,000円 (本体価格 150,000円)

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