P&Gで学んだ経営戦略としての「儲かる人事」
松井 義治
経営(人材・組織開発)コンサルタント、HPOクリエーション代表取締役。北九州市立大学卒。日本ヴイックス株式会社に入社し、マーケティング本部で医薬品や健康食品の戦略策定、商品開発など企画宣伝・プロモーション開発から市場導入までのトータル・マーケティングを担当。同社がP&Gと合併して7年後、人事統括部に異動し、教育・採用担当のシニアマネージャーを務め、グローバルリーダーを育成する「P&G 大学」づくりとプログラム開発に貢献。台湾P&G 人事部長、北東アジア採用・教育・組織開発部長等を歴任。ノースウエスト・ミズーリ大学経営学MBA、ペッパーダイン大学教育学博士。

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外資系企業に学ぶ 執念で人を育てるGEの文化

すべての原点は価値観

以前、GEの人事マネージャーにうかがったことです。

同社の新人育成もリーダーシップが軸となっています。そして、その根底にあるのが「GEバリュー」(GEの価値観のベース)です。同社の価値観は8つのポイントにまとめられています。

①好奇心(CURIOUS)、②情熱(PASSIONATE)、③工夫に富む(RESOURCEFUL)、④責任を持つ(ACCOUNTABLE)、⑤チームワーク(TEAMWORK)、⑥コミットメント(COMMITTED)、⑦開かれた姿勢(OPEN)、そして⑧鼓舞する(ENERGIZING)です。

GEでは、パフォーマンス(仕事の能力・成果)よりもバリュー(価値観)のほうを重視します。それがGEの企業文化といえるでしょう。

したがって、価値観(バリュー)は合っているが業績は振るわないという社員に対しては、ラインのマネージャーのコーチングや研修を通じて、スキルとマインド両面の弱点克服を促し、再チャレンジの機会を与えます。

一方、高い業績を上げていても、価値観(バリュー)が不適合の社員は、価値観教育を徹底します。それでも価値観が合わなければ、去ってもらうことになります。

すべてのスタートラインにあるのがGEバリューなのです。同社にあっては、この点に妥協はありません。

新入社員に対するリーダーシップ養成プログラム

GEにはもちろんマネージャー層に対するリーダーシップ研修があり、それがGEの養成プログラムの中核になっているのですが、そのほかに新入社員向けのグローバルなリーダーシップ養成プログラムがあります。

GEのトップリーダーといわれる人々は、大部分がキャリアスタートの段階でこのプログラムを経験しています。

この「リーダーシップ養成プログラム(ExperiencedCommercialLeadershipProgram)」と呼ばれるプログラムは、将来のリーダーを養成する2年間の実務体験型の養成プランです。プログラムの目指すところは、GEバリューの深耕、インテグリティ(真摯さ)の養成、リーダーシップと専門能力を身につけることにあります。

このプログラムでは、6か月単位で4つの異なる実務経験(ローテーションアサインメント)が2年間続きます。養成期間中には、講義形式でのトレーニングもあり、複数の国にまたがって行われることもあるようです。

グローバルなコミュニケーション力を養成する場となるとともに、GEのトップリーダーたちと直接に接するチャンスも多く、それがGEバリューを体験的に学ぶことにつながっています。

ただし、希望すれば誰でも受けられるというわけではなく、プログラム受講生は、①ビジネスの現場で課題を的確かつ迅速に把握し、改善に向けたアクション・プランを策定できる分析能力、②自らが策定したプランを、イニシアチブをとって関係者とともに実現化するリーダーシップ、③優れたコミュニケーション能力とプレゼンテーション力(語学力)のある人とされています。

GEも変化し続ける企業ですので、価値観も制度も当然変化しているでしょうが、人材育成の基本原則は変わっていないと思います。