(本記事は、江口 克彦氏の著書『こんな時代だからこそ学びたい 松下幸之助のリーダー学』＝アスコム、2021年10月23日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)
部下の心を知るには、「心の動きの共通原則」を知る
人間というものは、お互いが日々の生活の中で身をもって感じているように、実に複雑微妙、千変万化の生き物です。会社生活に例をとっても、そこには、性格も考え方も能力もそれぞれに異なるさまざまな人がいます。しかもそのそれぞれの人が、同じことに対しても、時と場合によっては違った反応を示します。
例えば、リーダーが何人かの部下や社員を集めて「みんな、しっかりやってくれたまえ」と言ったとしても、その受け取り方は、人さまざまです。
〝そうだ、しっかりやろう〟とそのまま受け取る人もあれば、〝なんだ、偉そうに〟とソッポを向く人もあります。また、しっかりやろうと受け止める人でも、何か心配ごとがあるときにその言葉を聞けば、上（うわ）の空で頭に入らないということもあります。
しかし、幸いにして人間の心の動きには、そういう千変万化の複雑さの中にも、おおむね誰にも共通する、一般的な原則があるように思われます。
例えば、誰でもほめられればうれしいし、叱られれば悲しくなります。また、誰もが他人から認められたいと願っているし、自分の能力、持ち味を発揮することには喜びを感じるものです。
もちろん例外もありますが、人の心の動きを心して見るならば、相当に細かいところまで一般的な原則を見いだせるのではないでしょうか。
リーダーが部下を動かそうと願うのであれば、やはりまずそうした人間一般に共通する心の動きの原則について、できるだけ多く、詳しく知っていなければならないと思います。そうであってこそ、部下を喜ばせ、生かすための適切な働きかけが、臨機応変にできるのではないかと思うのです。
1940年名古屋市生まれ。愛知県立瑞陵高校、慶應義塾大学法学部政治学科卒。政治学士、経済博士(中央大学)。旭日中綬章、文化庁長官表彰、台湾・紫色大綬景星勲章、台湾・国際報道文化賞等。
故・松下幸之助氏の直弟子とも側近とも言われている。23年間、ほとんど毎日、毎晩、松下氏と語り合い、直接、指導を受けた松下幸之助思想の伝承者であり、継承者。松下氏の言葉を伝えるだけでなく、その心を伝える講演、著作は定評がある。現在も講演に執筆に精力的に活動。
参議院議員、PHP総合研究所社長、松下電器産業株式会社理事、内閣官房道州制ビジョン懇談会座長など歴任。
著書に、『最後の弟子が松下幸之助から学んだ経営の鉄則』(フォレスト出版)、『凡々たる非凡―松下幸之助とは何か』(H&I出版社)、『松下幸之助はなぜ成功したのか』『ひとことの力―松下幸之助の言葉』『部下論』『上司力20』(以上、東洋経済新報社)、『地域主権型道州制の総合研究』(中央大学出版部)、『こうすれば日本は良くなる』(自由国民社)など多数。【編集部記】
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