2022年の参議院選挙は自民党が圧勝する結果になった。今後、衆議院の解散・総選挙がなければ、次回参院選と衆議院議員の任期満了を迎える2025年までの3年間、大型の国政選挙は実施されない。岸田政権は「黄金の3年」を迎え、何を成すのか。直面している課題と今後の予定を踏まえて予想する。
参院選で自民党が圧勝し与党過半数に
2022年7月10日に実施された参議院議員通常選挙では、改選125議席のうち過半数の63議席を自民党が獲得して大勝した。非改選議員と合わせると自民・公明両党の合計は146議席となり、与党が過半数を占めることになった。
2月に起きたロシアによるウクライナ侵攻や円安の影響を受けて、国内で物価高が深刻化する中での国政選挙だった。インフレ対策は主要な争点となり、与党はこれまでの実績をアピールした。一方で野党は、与党が十分な対策を打っていないと批判したが、説得力のある対案を出せたとは言えず、与党圧勝という結果に終わった。
岸田政権が直面する課題
物価高対策や経済・金融政策に加え、新型コロナウイルス感染拡大への警戒・対策、世界情勢が不安定化する中での安全保障・国防の問題、そして憲法改正など、岸田政権が向き合う課題は山積みだ。
物価高対策と経済・金融政策
参院選翌日2022年7月11日の記者会見で、岸田首相は物価高に対して「政府が責任を持って万全の対応をしていく」と明言した。エネルギーや食料品など、インフラや生活必需品の価格が高騰し、人々の生活に直接的な影響を及ぼしている。その現状に対応するため、「物価・賃金・生活総合対策本部」で新施策を議論し、5兆5,000億円の予備費を活用することが見込まれている。
物価高問題の根本解決に不可欠なのが、補助金などの負担軽減策だけではなく、企業による継続的な賃上げだ。岸田首相は「最低賃金1,000円以上」の早期実現を目指すとしている。また、物価高の一因でもある円安への対応も欠かせない。日銀の金融緩和は円安を助長しており、方針を見直す必要性も指摘されている。
岸田首相は「成長と分配の好循環」を目指す「新しい資本主義」を掲げているが、実体が見えにくいとの声もある。具体的な施策を実現し、結果を出せるかどうかが問われている。
新型コロナ対策
新型コロナウイルスの感染再拡大も予断を許さない。「第7波」に備え、医療体制のさらなる整備が求められており、社会・経済面では、行動制限を行わずに経済活動を維持できる体制作りを目指す。自民党は参院選の公約で、国産飲み薬など治療薬の確保や緊急小口資金など特例貸付の支援といった対策も掲げている。
安全保障・防衛
防衛費を国内総生産(GDP)に対して2%以上に増額し、5年以内に防衛力の抜本強化をする方針を打ち出している。6兆円規模の増額となり、財源の確保が課題となる。また、2022年内には国家安全保障戦略の改定に臨む。
憲法改正
自民党は憲法9条への自衛隊の明記や緊急事態対応など、4項目での改正を訴えている。憲法改正の発議には各議院の3分の2以上の賛成が必要だ。参院選では、改憲に前向きな姿勢を表明している「改憲4党」(自民・公明・維新・国民民主)が発議に必要な議席数(166議席)を獲得できるかも注目されていた。
結果的に4党の合計は177議席となり、3分の2を上回った。ただし、改憲の具体的な方針は各党で異なる部分も多い。今後、慎重な議論を重ねて改憲を目指していくと見られる。
「黄金の3年間」に予定されている政治イベント
2022年の参院選終了以降、2025年までの3年間にはどのような政治・国際関係の予定があるのか。
2023年4月には黒田日銀総裁が任期満了を迎え、その後の新体制や金融緩和・引き締めなどの方針が注目される。そして、2024年には自民党総裁選を迎える予定であり、岸田首相が引き続き政権を握るには再選が必要だ。自民党内で最大派閥を率いていた安倍晋三元首相が参院選の選挙期間中に急逝したことが影響し、党内の勢力図が変わる可能性もある。
2025年の日本はどうなっている?
2025年には、国内経済や財政状況が安定し、コロナ禍や不安定な世界情勢から抜けだしていることが理想だ。そのためにも岸田政権は、まずは差し迫った物価高問題にどう対処するかが問われているのではないか。
本文長で挙げた他にも社会保障やエネルギー、財政健全化など重要課題が待ち受けている。それぞれの課題への迅速かつ的確な対応が求められ、その都度、支持率にも反映されるであろう。もちろん、衆議院の解散・総選挙によって「黄金の3年間」は幻に終わるかもしれないが、民意を得て大勝した政権が役割を果たすよう注視していきたい。
文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)