(写真=Billion Photos/Shutterstock.com)

2018年度のPOCT市場は前年度比2.7%増の1,095億円

臨床検査薬・機器分野で成長を続けるPOCT市場、異業種企業等にもビジネスチャンスの芽~

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、国内POCT市場を調査し、市場規模、参入企業動向、将来展望を明らかにした。

国内POCT市場規模推移・予測

国内POCT市場規模推移・予測

1.市場概況

2018年度の国内POCT市場規模(事業者売上高ベース)は、9分野計で前年度比2.7%増の1,095億円となった。2018年度は前年度に比べインフルエンザの流行が穏やかであったため、インフルエンザ迅速検査キットは前年度比で縮小し、その他A群β溶連菌、マイコプラズマ抗原などのイムノクロマト法臨床検査キット市場の伸び率が低下した。HbA1c(ヘモグロビンA1c)検査等その他のPOCT製品(検査薬・機器)は堅調傾向を持続した。

2.注目トピック

~POCT製品群の中では、HbA1c分析装置市場などが伸長~

HbA1c(ヘモグロビンA1c)は糖尿病の診断、管理指標として定着しており、診療所レベルでの検査需要も高く、POCT製品群の中ではHbA1c分析装置市場の伸びが高い。
HbA1c分析装置は、当初外資系企業の製品が先行した分野であるが、ここ数年国内企業の製品(臨床検査薬・機器)が市場に浸透しつつあり、2019年にはきわめて短時間(90秒)で測定できる新型分析装置も上市され、引きつづきPOCT製品群の中では注目度の高いテーマとなっている。

3.将来展望

POCTは、患者の近くでポータブルな検査装置や迅速診断キットなど利用してリアルタイムで行われることから、検査装置の設置台数も必然的に多くなる。臨床検査薬と機器の比率で見た場合、病院の中央検査室や外部の検査センター等に検体を運ぶ検査室検査等に比べ、機器関連の構成比率が高まる。そのため、産業の裾野も広くなり、エレクトロニクス系や機械系など異業種企業等にもビジネスチャンスが生まれやすい。

また、臨床検査薬としても専用試薬化が図られ、一旦検査装置が納入されれば、継続的に需要が生まれる。容易に他社の臨床検査薬・機器に切り替わることも少なく、事業としての安定感は生まれやすい。