近年、食品の栄養成分表示で新たな試みが広がっている。消費者庁が実施した食品表示に関する意識調査(2018年度)によると、6割以上の人が食品選択時に栄養成分表示を参考にしていることが分かった。コロナ禍で足元の健康需要がより一層高まるなか、栄養成分表示の重要性は増している。
特に、選択時の“顔”となるパッケージ上でそうした取り組みが加速している。ダイショーは、2021年秋に発売した27品を皮切りに、商品単品に加え、調理例による栄養成分の表示をパッケージ上に記載している。執行役員商品本部部長の根岸宏樹氏は「調味料カテゴリーとしては当社が初めての試みだと認識している。消費者と流通双方から反応が良く、今後も導入商品を増やしたい」と話す。
ダイショーの独自調査では、食品選択の際、義務表示の熱量やたんぱく質以外に、食物繊維(推奨表示)やビタミン(任意表示)などの栄養素が重視されていることが分かった。この結果をふまえ、食物繊維やビタミン量を積極的に表示するとともに、肉や魚を使った調理例による栄養成分表示を併記することにした。「1メニューあたりの栄養成分値が把握しやすくなり、健康管理しやすいと好評だ」(ダイショー商品本部商品企画部東京企画開発課課長代理の田中耕太郎氏)。関連食材との併売を促すことができるため、買い上げ点数のアップにも貢献している。
栄養成分表示の重要性に着目した業界の先駆け的な存在は日本ケロッグだ。かつて日本の朝食は和食中心で栄養価も高いというイメージが定着していたが、時代とともに手軽さや利便性が求められるようになってきたことから1998年以降、和食やパンメニューとシリアル食を比較し、それぞれに含まれるミネラルやビタミン類をレーダーチャートで比較表示する取り組みを開始した。
この栄養バランスチャートを広告や製品パッケージで展開したところ、導入当時の売上高で前年比40%増という大きな成果を生み出した。直感的に栄養バランスの良さが伝わる手法としてその後も継続。日本ケロッグは「シリアルは栄養バランスがいいというイメージの醸成に大きく寄与している。近年ではミルクボーイさんの漫才の中でも紹介していただき、さらなる認知拡大やリマインドにもつながった」としている。
また、三井農林は、2020年2月に発売した粉末飲料の「日東紅茶 朝の大麦ラテ」で、商品単体と牛乳や豆乳に溶かした場合のそれぞれの栄養成分表示を記している。大人も手軽に、美味しく栄養補給できる商品という特徴を分かりやすく伝える。「牛乳や豆乳自体に含まれる栄養素と一緒に取ることで、不足しがちな栄養素を充足できるように設計した。昨今、牛乳の廃棄問題が報道されているが、この商品と一緒に並べていただくことで、牛乳の販促でもお役に立てると考える」(同社)。