2022年5月のオークション市場は、オークションレコードを更新したアンディ・ウォーホルに始まり、前澤友作氏が所有していたジャン=ミシェル・バスキア作品の出品など、話題に事欠かない月であった。ここで改めて、5月開催のオークションに登場した作品のうち、Artpriceが選んだ10の非常に重要な作品の落札結果をランキングでご紹介。1USD=129円、1EUR=133円で計算、落札価格は手数料込み。
目次
10位:マン・レイ
《Le Violon d’Ingres, 1924》(1924)
落札価格:約16億121万円($12,412,500)
日本語で「アングルのバイオリン」という意味の本作は、アメリカの写真家マン・レイ(1890-1976)のミューズであったキキ・ド・モンパルナスを撮影したもので、レイの作品群のなかでも最も有名な作品の一つ。専門家によると、ネガが作られたのと同時期にプリントされたオリジナルのものであるという。今回予想を大きく超え、オークションにおける写真作品史上最高落札価格を記録した。
クリスティーズ「The Surrealist World of Rosalind Gersten Jacobs and Melvin Jacobs」(NY)
予想落札価格:約65億〜90億円($5,000,000 – 7,000,000)
9位:フィリップ・ガストン
《Nile》(1958)
落札価格:約23億2,200万円($18,000,000)
カナダ系アメリカ人画家のフィリップ・ガストン(1913-1980)は、一つの作風に固執せず、時代ごとに変化してきたことでも知られている。ガストンが具象から抽象へと転換した1948年頃から65年頃の間に制作した作品群は、抽象表現主義の最前線に位置づけられている。サザビーズによると、代表作《Nile》はこの時代の中心的な作品として、美術史的重要性、芸術的品質、経験的希少性、商業的魅力という基準において傑作だとしている。
サザビーズ「Modern Evening Auction」(NY)
予想落札価格:約25億8,000万〜38億7,000万円($20,000,000 – 30,000,000)
8位:ミケランジェロ・ブオナローティ
《A nude man (after Masaccio) and two figures behind him》
落札価格:約30億,8055万円(€23,162,000)
《ダヴィデ像》で有名なイタリア盛期ルネサンス期の彫刻家/画家のミケランジェロ(1475-1564)によるデッサン。ミケランジェロの作品は、世界中で10点以下しか個人所有されておらず、デッサンは過去40年間に出品されたのは8点のみで、本作は9点目になる。フィレンツェのブランカッチ礼拝堂にあるルネサンス初期の画家・マサッチオのフレスコ画(イタリアの教会に見られる壁画)からインスピレーションを得ている。
7位:フィンセント・ファン・ゴッホ
《Champs près des Alpilles》(1889)
落札価格:約67億円($51,915,000)
出典:https://www.artprice.com/ 《ひまわり》で世界中で愛されるオランダのポスト印象派の画家フィンセント・ファン・ゴッホ(1853-1890)のキャンバス作品。本作は、ゴッホがフランスのサン=レミの療養院に入院していた時に、アルルで出会った郵便配達員ジョセフ・ルーランに贈ったもの。その後、この作品は個人の手に渡り、以降一度も一般公開されていなかった。ルーランとその家族は、ゴッホの作品に数多く登場する重要な人物である。
6位:ジャクソン・ポロック
《Number 31》(1949)
落札価格:約70億円($54,205,000)
ジャクソン・ポロック(1912-1956)は、抽象表現主義を代表するアメリカの画家。20世紀美術の象徴的で重要な作品とされる《Number 31》は、キャンバスの上に顔料を滴らせるポロックの有名な技法「ドリッピング」の一例。ポロックは1949年にこの「ドリップ・ペインティング」を13点だけ紙に描き、そのうちの8点だけに、本作で用いたメタリックペイントを施した。今回の落札を受けて、ポロックのオークション落札価格では4番目に高い作品となった。
5位:マーク・ロスコ
《Untitled (Shades of Red)》(1961)
落札価格:約86億1,720万円($66,800,000)
マーク・ロスコ(1903-1970)はロシア系ユダヤ人のアメリカの画家。カラーフィールド・ペインティングの先駆者として、抽象表現主義を代表する一人。ロスコがニューヨーク近代美術館で回顧展を開催した同じ年に描かれた本作は、これまでのロスコのオークション落札価格でトップ10に入る結果を残した。
クリスティーズ「The Collection of Anne H. Bass」(NY)
予想落札価格:約77億4,000万〜103億2,000万円($60,000,000 – 80,000,000)
4位:パブロ・ピカソ
《Femme nue couchée》(1932)
落札価格:約87億1,280万円($67,541,000)
本作は、パブロ・ピカソ(1887-1973)のミューズであったマリー=テレーズ・ウォルターの裸婦像を描いたキャンバス作品。フランス・ボワジュルーにあった家で、抽象性の高い空間に横たわるウォルターの姿は、色気と優雅さを兼ね備え、色彩豊かでダイナミックな1枚。ピカソが1932年に制作した作品の中で最も力強い作品とされている。
サザビーズ「Modern Evening Auction」にて落札され、同セールはサザビーズのオークションとしては、3番目に高い総額4億850万ドルを記録した。
3位:クロード・モネ
《Le Parlement, soleil couchant》(1900-1903)
落札価格:約98億円($75,960,000)
クリスティーズ「The Collection of Anne H. Bass」では、印象派を代表するフランスの画家、クロード・モネ(1840-1926)の3作品が出品された。最も高額で落札された本作は、モネが1899年にロンドンで描き始め、1904年にフランス・ジヴェルニーで完成させたシリーズの中で最も色彩豊かな作品。モネのオークション落札価格で5番目に高い結果を残した。
クリスティーズ「The Collection of Anne H. Bass」(NY)
予想落札価格:約51億6,000万〜77億4,000万円($40,000,000 – 60,000,000)
2位:ジャン=ミシェル・バスキア
《Untitled》(1982)
落札価格:約109億円($85,000,000)
アメリカの画家、ジャン=ミシェル・バスキア(1960-1988)による本作は、2016年5月に前澤友作氏がクリスティーズオークションにて5,730万ドル(当時約62億円)で購入したもの。バスキアのオークションレコードでもトップ3に入ったことで話題を呼んだが、6年近い保有期間を経ての今回の売却で1.5倍近く価格が上がった。
フィリップス「20th Century & Contemporary Art Evening Sale」(NY)
予想落札価格:公式HPでは非公開(開催前に7,000万ドルと予想されていた)
1位:アンディ・ウォーホル
《Shot Sage Blue Marilyn》(1964)
落札価格:約252億円($195,040,000)
ポップアートを代表するアンディ・ウォーホル(1928-1987)の象徴的な作品群である「マリリン・モンロー」の肖像画。今回の落札をうけて、ウォーホル史上、20世紀の作品史上、そして歴代アメリカ人アーティスト史上という3つのオークションレコードを更新した。ウォーホルのキャリアにおいて重要な時期である1960年代に制作されたこの作品は、名実ともに美術史に生涯残る傑作となった。
クリスティーズ「The Collection of Thomas and Doris Ammann Evening Sale」(NY)
予想落札価格:公式HPでは非公開(開催前に2億ドルと予想されていた)
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文:ANDART編集部
参考:「A stunning selection of Masterpieces in May!」