遺産が現金や預金なら相続財産評価の計算は比較的簡単ですが、不動産となると、その評価計算は複雑です。しかも土地と建物では、計算方法が大きく異なるのです。
この記事では、国税庁が定めた「財産評価基本通達」に基づき、土地・建物の評価額計算プロセス、節税につながる減額特例、土地形状による補正について解説します。
1. 土地と建物は別々に計算しよう
甲州街道や東海道などの国道から、住宅地の入り組んだ道まであらゆる道路には国税局が毎年7月に路線価を定め、この路線価に基づき土地の評価額は計算します(一部山間地を除く)。
路線価とは㎡あたりの価格で、ちなみに最も路線価が高いのは銀座中央通りでなんと4432万円/㎡です。
一方、建物は固定資産税評価額に基づき計算します。固定資産税評価額は市町村の固定資産評価員が、建物の構造・材質に基づいて積算したうえで経年での劣化損耗率を加味します。
因みに建物の所有者は、毎年4-5月頃に市役所から送付される固定資産税の納税通知書で、固定資産税評価額を確認します。
アパートや借地などの権利の対象となる不動産に関しては、借家権割合・借地権割合を加味します(これは土地・建物とも共通です)
2. 減額措置がある!小規模宅地等の特例
相続財産が現預金なら、そこから相続税を納付するのも難しい話ではありません。
それが持ち家や店舗だけならどうでしょう?税金を払うために不動産を処分しなければならないケースも考えられます。
それはあまりに不合理なので、一定の要件を満たした居住用や事業用宅地の評価額に関しては、一定の面積に限り(居住用で330㎡・事業用で400㎡)、最大80%までの減額措置を認めています。
3. 土地の形によっても金額が変わる
敷地面積が同じでも、間口が狭い・道路に面していない・奥行きがないといった土地は価値が下がります。こうした「不細工な土地」の評価額計算には補正率表を用います。
補正率には間口狭小・奥行長大・無道路地・道路開設・袋地・通路拡幅・不整形地・がけ地など17もの種類があります。どの補正率を適用するかで、不動産鑑定士などのプロでも見誤ることがあります。
4. まとめ
相続財産評価の中でも金額ウエイトの大きい不動産、その計算を間違えると多めに税金を納める羽目に陥りかねません。
最近は国税庁もHP上で評価額計算の基本、借地・借家権割合、不整形地補正率の適用方法を丁寧に解説しています。
こうした情報も活用しながら、間違いのない評価額計算と適正な納税につなげましょう。(提供:ベンチャーサポート法律事務所)