世界最大級の美術品の価格データベースであるArtprice.comで、2022年第1四半期の世界各国のオークション結果トップ10が発表された。この作品と落札価格を紹介する。落札価格は手数料、消費税込みで計算。レートは一律 1ドル=128円で計算している。
10) デイヴィッド・ホックニー ≪Garrowby Hill≫ (2017)
落札価格:約24.1億円 (約1,880万ドル)
2022年3月2日、サザビーズ・ロンドン
画像出典:https://www.sothebys.com/
イギリスのアーティスト、デイヴィッド・ホックニーが、イギリスの東ヨークシャーの風景を描いた作品。本作はボストン美術館が所蔵する1998年の同名の作品に基づき、六角形のキャンバスで再構築したもの。2018年にギャラリーで購入された後わずか3年間でオークションにかけられたのは、ホックニーが現代で最も人気のある存命アーティストの一人であることを象徴しているとArtpriceは分析している。
ホックニーの価格は、2018年に《Portrait of an Artist (Pool with Two Figures)》が約104億3000万円( 90,312,500ドル)で落札されて以降、大幅に上昇している。80代のアーティストでありながら、その創造性はいまだエレガントでダイナミックであるという、まばゆいばかりの人気を物語っている。
画像出典:https://www.artprice.com/
ANDARTでは、ホックニーのスイミングプールを描いた代表的なシリーズの「Paper Pools」のリトグラフ作品を取り扱い中。
9) ルシアン・フロイド ≪Girl with Closed Eyes≫ (1986-1987)
落札価格:約25.9億円 (約2,020万ドル)
2022年3月1日、クリスティーズ・ロンドン
画像出典:https://www.artprice.com/
ルシアン・フロイドのかつての愛人でミューズであった作家ジャニー・ロングマンの肖像画で、1990年代初頭に購入されて以来、同じコレクションに収められていたもの。精神分析医・ジークムント・フロイトの孫であるルシアン・フロイトは、現代で最も人気のある画家の一人であり、現在最も注目されている存命中のアーティストの一人。
8) アンディ・ウォーホル ≪Silver Liz (Ferus Type) ≫ (1963)
落札価格:約26.6億円 (約2,080万ドル)
2022年3月30日、シンワオークション・東京
画像出典:https://www.artprice.com/
アンディ・ウォーホルの ≪Silver Liz(Ferus Type)≫ は、日本で行われたアートオークションの最高落札価格を記録した。本作はエリザベス・テイラーのポートレートシリーズの集大成とも呼ばれており、本作の他にもディプティク(二連)の形になった作品も存在する。「シルバー」はハリウッドの「銀幕」を表す。
ANDARTは、ウォーホルのエリザベス・テイラーを被写体に制作したオフセットリトグラフの作品《Liz》を取り扱い中。
7) パブロ・ピカソ ≪La Fenêtre ouverte≫ (1929)
落札価格:約27.8億円 (約2,170万ドル)
2022年3月1日、クリスティーズ・ロンドン
パブロ・ピカソのシュルレアリスム時代のキャンバス作品。この作品が制作された1929年、ピカソはまだオルガ・ホクロワと結婚していたが、この作品に描かれているマリー=テレーズ・ウォルターと2年前から既に恋愛関係にあった。初めてオークションに出品された本作品は、その「新鮮さ」によって価格が爆発的に上昇することはなかったが、それでも8位のランクインとなった。
6) ジャン・シメオン・シャルダン ≪Le Panier de fraises des bois≫ (1761)
落札価格:約34.3億円 (約2,680万ドル)
2022年3月23日、アールキュリアル・パリ
画像出典:https://www.artprice.com/
1760年頃に描かれたジャン・シメオン・シャルダンの≪Le Panier de fraises des bois≫は、最低見積価格の約2倍となる値をつけた。この結果は、これまで1,000万ドルの壁を越えたことのなかった「同アーティストのオークション記録」、「オークションで販売された18世紀のフランス絵画の記録」、そして「アールキュリアル社の「Old Masters & 19th Century Art」部門の記録」の3つの記録を更新した。
5) クロード・モネ ≪Water Lilies≫ (1914/17)
落札価格:約39.7億円 (約3,100万ドル)
2022年3月2日、サザビーズ・ロンドン
画像出典:https://www.artprice.com/
1890年代末から1926年に亡くなるまで、クロード・モネは有名な「睡蓮」の連作に専念した。約250枚のキャンバス(うち40枚は大判のパネル)からなるこのシリーズだが、市場に出回ること自体がひとつのイベントともいえる作品であり、本作も約39.7億円 (約3,100万ドル)に達した。なお、「睡蓮」シリーズでの最高額落札額は、2018年に約108.4億円 (8,470万ドル) を記録している。
4) サンドロ・ボッティチェリ ≪The Man of Sorrows≫ (1500〜1510)
落札価格:約58.1億円 (約4,540万ドル)
2022年1月27日、サザビーズ・ニューヨーク
画像出典:https://www.artprice.com/
ルネッサンス期の巨匠サンドロ・ボッティチェリの作品はこの30年間で30点しかオークションに出品されてこなかった。そんな中、サザビーズはボッティチェリの極めて稀な傑作2点を1年のうちに続けて市場に提供した。この2点は、過去の作品を通しても最高級ランクの作品。
2021年1月に≪Portrait of a young man holding a Roundel≫で約117.8億円 (約9,200万ドル) という価格をたたき出したが、今回の ≪The Man of Sorrows≫ は約58.1億円 (約4,540万ドル)。サザビーズの提示した予想最高見積価格を500万ドル以上上回ったものの、この結果はやや「残念」ともとられる結果となった。
3) フランシス・ベーコン ≪Triptych≫ (1986-1987)
落札価格:約65.5億円 (約5,120万ドル)
2022年3月1日、クリスティーズ・ロンドン
画像出典:https://www.artprice.com/
2022年第1四半期には、フランシス・ベーコンのサイン入りロットが29点以上落札されたが、本作はその中で傑出した作品。約65.5億円 (約5,120万ドル)の値をつけ、ベーコンのトリプティク(三連祭壇画)のトップ10に加わった。
左側のパネルは1919年にウッドロウ・ウィルソン米国大統領がヴェルサイユ条約の交渉を打ち切った際の報道記事の切り抜きから、右側のパネルは1940年に暗殺されたレオン・トロツキーの書斎の写真から、中央のパネルはベーコンのパートナーだったジョン・エドワーズに似た人物からインスピレーションを得ているといわれている。
2) フランツ・マルク ≪The Foxes≫ (1913)
落札価格:約72.7億円 (約5,680万ドル)
2022年3月1日、クリスティーズ・ロンドン
画像出典:https://www.artprice.com/
本作品は、波乱に満ちた歴史を持つドイツ表現主義の名作。フランツ・マルクは1916年に36歳の若さで亡くなっており、彼の作品は比較的希少だ。毎年20点ほどがオークションに出品され、世界的な人気を博している。2007年頃からの15年間で、フランツ・マルクの作品は明らかに再評価されているが、本作品は彼の作品の中で新記録となる約72.7億円 (約5,680万ドル)を樹立した。
1) ルネ・マグリット ≪Empire of Lights≫ (1961)
落札価格:約101.6億円 (約7,939万ドル)
2022年2月3日、サザビーズ・ロンドン
画像出典:https://www.artprice.com/
2022年第1四半期、ピカソやバスキアをも抑え、8,000万ドル弱の圧倒的な最高額を記録したのは、ルネ・マグリットだった。意欲的な3人の電話入札者が競り合った結果、本作品はマグリットのオークション記録(2020年の≪Meeting Pleasure≫、約31.5億円 (約2,460万ドル))の3倍以上もの値をつけた。
1961年にアンヌ=マリー・ジリオン・クロヴェ男爵夫人(マグリットのパトロンの娘)のために制作されたこの作品は、制作依頼、ずっとその家族の手元に置かれていたもので、オークションにかけられるのは今回が初だった。
2022年の第一四半期には世界のオークションで200を超える作品が100万ドル以上の高額で落札され、クリスティーズは1000点もの作品を販売し、4億ドルを超える四半期最高の売上高を記録している。
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文:ANDART編集部