日清食品ホールディングスと新潟薬科大学の髙久洋暁教授の研究グループは、油脂酵母が生産する酵母油を使った油揚げ麺の作製に世界で初めて成功した。同研究成果は、3月15日から18日に実施された「日本農芸化学会2022年度大会」で、学術的、社会的にインパクトのある「トピック演題」として発表された。この酵母油は食用代替パーム油として期待できるとしており、今後は工場での生産を想定した製造法の確立と実用化を目指していく。
油脂酵母とは、さまざまな糖を原料とし、菌体内に油脂を生産、蓄積する酵母のことだ。油脂酵母が生産する酵母油は、アブラヤシから採れるパーム油と非常に近い脂肪酸組成を持っている。また、広大な土地を必要とせず、タンク培養で油脂を生産でき、気候の影響も受けずに安定供給することが可能だ。パーム油はインスタントラーメンなど食品の製造に広く使用されていることから、酵母油は食用代替パーム油として期待されている。
これまでの研究で作られた酵母油は、食品加工に使用できないものだったという。同研究では、食用可能な培養液や油脂抽出法について研究を行い、「食用代替パーム油」の製造や、これを用いた油揚げ麺の作製に成功した。特許も出願中としている。
食用代替パーム油で作製した油揚げ麺の味、香り、食感を評価したところ、パーム油で作製した油揚げ麺と同等の結果となったという。今後は、工場での生産を想定した製造法の確立と実用化を目指していくとしている。
同研究の背景として、日本の油脂資源の自給率は低く、世界的な人口増加に伴う需要拡大が見込まれる中、その確保が大きな課題となっており、日本独自の油脂資源の確保方法が求められていることを挙げる。日清食品グループでは、2017年に制定した「持続可能な調達方針」に基づき、地球環境と人権を尊重した原材料の調達を進めており、今回の新潟薬科大学との「油脂酵母が生産する酵母油を使った油揚げ麺の作製」に関する共同研究は、「未来を見据えたこれまでにない資源調達を目指すもの」としている。
〈大豆油糧日報2022年3月28日付〉