近年、世界中で注目されている「ESG」という言葉をご存じだろうか。ESGは今後の経済や企業価値に大きな影響を及ぼす、非常に重要なキーワードだ。時代の変化についていくためには、いち早くこのESGについて正しい知識を身につけなくてはならない。
目次

ESGとは?基本的な3つの要素
ESGとは企業が長期的な成長を遂げるために、3つの要素を重視する考え方だ。その3つの要素とは「Environment(環境)」「Social(社会)」「Governance(企業統治)」を指し、各単語の頭文字を取って「ESG」と呼ばれている。
これだけでは少しイメージが湧きにくいため、ESGの各要素が具体的にどのような取り組みを表すのかについて、以下でもう少し詳しく見ていこう。

上記のうち「Environment・Social」の2つは比較的わかりやすいが、特に「Governance」は広い意味合いで使われるため注意しておきたい。たとえば、外部取締役や女性管理職の登用、利益を配当金として積極的に分配するなど、企業の持続的成長や中長期的収益につながるさまざまな取り組みが「Governance」に該当する。
ESGとSDGsの違いや関係性
SDGsとは、2015年の国連サミットで採択された「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)」のことである。簡単に言えば、環境保護・社会保護を目指した世界的な目標であり、17の目標と169のターゲットを設定することで、全人類が目指すべき方向性を分かりやすくしている。
ESGとはどのような点が異なるのか、以下で主な違いを整理しておこう。

ESGとSDGsは異なる用語だが、「環境を守る」「持続可能な社会をつくる」といった考え方は一致している。また、SDGsに関連する取り組み内容から、各企業のESGを評価する投資家も少なくない。
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ESGが注目された背景
ESGが世の中に浸透し始めたのは、2006年の「PRI(責任投資原則)」の提唱がきっかけと言われている。当時の国連で事務総長を務めていたアナン氏が、投資家の取るべき行動(PRI)としてESGを推進したのだ。
これ以降ESGは世界的に少しずつ普及していき、最近では「ESG投資」という言葉も使われるようになった。ESG投資では、従来の投資のように売上高や利益を重視するのではなく、「環境・社会・企業統治」の3つの観点から投資対象を選んでいく。
では、なぜESGの注目度が高まっているのだろうか。考えられる要因としては、主に以下のような社会的背景が挙げられる。
○ESGが注目され始めた主な要因
・自然環境や地域社会などのさまざまな外部要因が、企業の成長に影響を及ぼすようになった
・無理に事業展開を行った影響で、環境汚染や労働問題などの不祥事が目立つようになった
・経済格差や自然破壊など、資本主義の負の側面が問題視されるようになった
つまり、利益を追求する企業が世界的に増えた結果、さまざまな環境問題や社会問題につながってしまった。そして、このような結果につながることを防ぐために、ESGという新たな考え方が提唱されたのである。

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企業がESGを意識する重要性
企業がESGを意識して経営を行うことは「ESG経営」と呼ばれており、このESG経営に取り組む企業は着実に増え始めている。では、なぜそれほどまでにESG経営が重要視されているのだろうか?
その理由としては、まず投資規模の拡大が挙げられるだろう。世界的な規模で見れば、ESG投資はすでに投資全体の3割を占めている。今後さらにESGが世界中に浸透すれば、この数値が上昇することは言うまでもない。
日本でもESG投資の市場規模は拡大してきており、2014年からの2年間で投資金額は70倍に膨れ上がったとされている。つまり、ESG経営に力を入れている企業のところへ、投資家の資金が集まりつつあるのだ。
また、以下のようなステークホルダー(利害関係者)への影響も、ESG経営を語る上で外せないポイントと言える。

ESG経営に取り組むことでアピールできる対象は、ESGに興味を示す投資家だけではない。新たな顧客や取引先の開拓にもつながるため、ESG経営は短期間で企業を成長させる手段にもなり得る。
また、欧州ではすでに法的整備が強化されており、世界的なガイドラインや基準も整いつつある。つまり、世界的に浸透させるための準備が着々と整っているので、その波に乗り遅れないようにいち早くESGを理解しておくことが重要だ。
コーポレートガバナンスはなぜ必要?
さまざまな経営課題の中でも、コーポレートガバナンスは「Governance(企業統治)」の中核テーマと言われている。簡単に言えば経営を管理監督する仕組みのことだが、なぜコーポレートガバナンスが現代企業に求められるのだろうか。
世の中の株主が求めているのは、健全性や透明性が高い企業である。仮に多くの収益を上げていても、法的にグレーな事業や資金使途が不明瞭な企業には、投資先としての不安が残る。
一方で、社会・地域から求められるビジネスを行っていたり、内部の仕組みが分かりやすかったりする企業は、さまざまなステークホルダーから評価される。つまり、コーポレートガバナンスを整えることは企業の健全性・効率性を高める効果があり、ひいては株主の利益(会社の成長)につながるのだ。
そのため、多くの機関投資家はESGの中でもガバナンスを最も重視している。特にコーポレートガバナンスは社会的な評価に直結しやすいため、ESG経営を目指す企業は強く意識する必要があるだろう。
企業がESG経営に取り組むことで発生する3つのメリット
ここからは、企業がESG経営に取り組む具体的なメリットを見ていこう。細かく見れば非常に多くのメリットが発生するが、以下では特に押さえておきたいものを紹介する。
1.将来的なキャッシュフローが増強される
前述の通り、ESG経営に取り組むと新たな顧客や取引先を開拓できる。また、これまでとは異なる観点から新規事業を創出すれば、大きなビジネスチャンスをつかめるかもしれない。
つまり、ESG経営への積極的な取り組みは、将来的なキャッシュフローの増強につながる可能性がある。もちろん確実に成功するわけではないが、ESGの概念が広く浸透していくほど、ESG経営に取り組む企業の価値も高まっていくだろう。
2.リスク管理が高度化される
ESGが表す「環境・社会・企業統治」の3つの要素は、いずれも企業にとってはリスクとなり得るもの。たとえば、自然環境や労働環境の悪化によって、著しく生産性が下がってしまう企業は多く存在するだろう。
そのため、ESGの概念を強く意識することは、企業がリスク管理を高度化させることにつながる。リスクが下がれば安全に事業を進められるだけではなく、消費者や投資家からの注目も自然と集まるだろう。
つまり、ESG経営のリスク管理には一定のコストが発生するものの、将来的にはそれ以上のリターンを期待できる可能性があるのだ。
3.ブランド力の強化
ESG経営を意識すると、企業の健全性は自然と高まっていく。環境・社会にやさしく、そして透明性の高い経営状態を作り上げられるため、結果的に企業全体のブランド力もアップするだろう。
ブランド力の向上は、さらにIR活動の面にも良い効果をもたらす。消費者や投資家へのアピールにつながるので、自然と資金が集まりやすい状況を作り出せるのだ。
上記ではメリットを3つに分けて解説したが、簡潔にまとめればESG経営は「企業価値の向上」につながる。利益が増えることはもちろん、資金調達のハードルが下がったり、その資金でさらに大きなビジネスに挑戦できたりするなど、ESG経営は会社の可能性をぐっと広げられるポテンシャルを秘めている。
ただし、既存の事業やシステムなどを広く見直す必要があるため、ESG経営に切り替えるためのコストは意識しておきたい。もちろん失敗するリスクも潜んでいるので、さまざまな知識・情報を身につけたうえで、慎重に計画を立てることが重要だ。
ESG経営の3つのデメリット
ESG経営には注意すべきリスクも潜んでおり、メリットだけに目を向けると大きな失敗を招くことがある。ここからはESG経営の主なデメリットをまとめたので、計画を立てる前に確認しておこう。
1.短期間では効果が出ない
本当の意味でESG経営を実現するには、地道な努力をコツコツと続ける必要がある。効果が出るまでに数年単位の時間がかかるケースもあるので、あらかじめ中長期的な戦略になることを覚悟しなければならない。
さらに注意しておきたいポイントは、短期間で見たときに費用対効果が釣り合わなくなることだ。費用を回収するまでの期間があまりにも長引くと、資金力のない企業はキャッシュ不足や資金ショートに陥ってしまう。
したがって、ESG経営では費用対効果を強く意識し、プロジェクトそのものに加えて資金管理にも力を入れたい。
2.正しい方向性を見極めにくい
ESGには統一された評価基準がなく、2021年現在では複数の調査会社が指標を算出している。つまり、多くの基準が乱立している状況であるため、ESG経営に取り組む企業からすると正しい方向性を見極めにくい。
特に欧米では評価基準のばらつきが懸念されており、2020年には証券規制当局が聴取・規制に踏み切る意向を示した。将来的には評価基準が統一されるかもしれないが、ESGの調査会社は世界中に600社ほど存在している。
したがって、ESG経営に取り組む企業は世の中の動向を読み取り、評価されやすい取り組みに絞って計画を立てる必要がある。欧米の影響を受ける可能性も十分に考えられるため、国内だけではなく海外にも目を向けて情報収集をしておこう。
3.経営者の振る舞いが注視されるようになる
世の中にESGの考え方が浸透すると、現在よりも経営者の振る舞いが注視されるようになる。すでにその兆候は現れており、日本でも大手化粧品会社の会長が差別表現を含んだ文章を発表した際に、この文章を撤回するまでに追い込まれた。
経営者は会社の顔となる存在なので、ESGに反する言動を取ると会社全体の評価が下がってしまう恐れがある。ESG経営に取り組む企業はさらに厳しい目で見られると予想されるため、プライベートから振る舞いを見直すことが重要だ。
ESGとの関連性が強い事業とは?ESG経営の計画を立てるポイント
ESG経営を成功させるには、ESGとの関連性が強い事業に取り組む必要がある。では、どのような事業であれば社会的に評価されやすいのか、以下で一例を紹介しよう。

上記を見ると分かるように、ESGとの関連性が強い事業はどれも時間がかかる。社内や周囲の環境を地道に改善する必要があるので、短くても数年規模の計画を立てなくてはならない。
ちなみに以下で挙げるような事業や施策は、ESGの観点からは訴求力がないとされている。
・目先の利益を重視し、安全性や持続性の低い製品を開発する
・製品製造を通して多くの廃棄物を生み出す
・企業理念や目的が曖昧であり、優秀な人材が流出してしまう
・短期的な投資や、環境に悪影響を及ぼすような投資に力を入れる
ESG経営に力を入れても、一部の事業や施策が上記に当てはまると高い評価は受けられなくなる。ESG経営を成功させたいのであれば、会社組織や指針などの根本的な部分から見直す必要があるだろう。
5つの事例から見るESG経営への取り組み方
ESG経営の計画を立てる前には、事例にもしっかりと目を通しておきたい。事例からは成功のポイントや鍵となる考え方を学べるため、より多くの事例に目を通しておくことが大切だ。
そこで以下では、特に押さえておきたい国内の事例を並べてみた。自社のケースにも当てはめながら、ESG経営を成功させるためのヒントをつかんでいこう。
1.「TOTO水環境基金」の設立/TOTO株式会社
住宅設備機器を製造するTOTO株式会社は、水に関わる問題を解決するために「TOTO水環境基金」を設立している。
2018年2月にはこの基金を通して、国内外の計11団体に1,812万円を助成。2005年の設立から数えれば、全250団体に対して3億円にものぼる助成を行ったことになる。
TOTOはほかにもさまざまな水問題に取り組むなど、地域社会の活性化に積極的な姿勢を見せている。その結果として、国際的な社会問題を解決しつつも、水に関わるメーカーとしてそのブランド力の強化に成功した。
2.生物多様性の保全など、「共生」に関する活動/キヤノン株式会社
大手電気機器メーカーのキヤノン株式会社は、その技術力を活かしてESG経営を行っている。生物多様性の保全や文化財の未来継承プロジェクト、コーポレートガバナンス体制の見直しなど、その内容は実にさまざまだ。
1988年の時点で「共生」を理念に掲げ、地球環境や自然との関係性を大切にしていることからも、ESG経営への意識の高さがうかがえる。
3.ESGデータの公開/森永製菓株式会社
大手菓子製造業者である森永製菓は、使用したエネルギーや資源などを項目別にまとめた「ESGデータ」を公式ホームページ上で公開している。廃棄物や環境違反に関する項目など、企業にとってはマイナス要素となるデータも公開されているので、まさに経営の透明性を高める取り組みと言えるだろう。
ほかにも海外の教育環境を整備するなど、地域社会を直接的に支援するような取り組みも。特にカカオ産出国を積極的にサポートすることで、原材料供給の安定化を目指している。
4.SDGsとひもづけた活動/新日本空調株式会社
空調機器を中心に取り扱う大手メーカー新日本空調は、国連サミットで採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」とひもづけたESG経営に取り組んでいる。具体的な活動としては、ジェンダー平等を実現させる女性管理職・技術職の採用や、再生医療等・先端医薬に関する事業の拡大などが挙げられる。
「環境・社会・企業統治」の3つの観点から非常に幅広い活動に取り組んでおり、活動の大部分が公式ホームページ上で公開されているため、経営者はぜひ確認しておきたいところだ。
5.地域活性化に関する多様な取り組みとIR活動/株式会社リクルートホールディングス
求人広告を手がけるリクルートホールディングスは「中長期の価値創造」を目的として、地域活性化を目指した取り組みに力を入れている。具体的なものとしては、地域産品のプロデュースや事業承継のマッチングなどが挙げられるだろう。
同社もさまざまな観点からESG経営に取り組んでいるが、株主や投資家からの理解を得るために、「統合報告」という形でレポートを公開している点も重要なポイントだ。社会的な責任を果たすだけではなく、ESG経営を通したIR活動もしっかりと行っている。
上記の事例を見て分かるように、ESG経営への取り組み方は企業によって大きく異なる。もちろん社会貢献や環境保全も意識されているが、ブランドの確立や原材料の安定供給など、本業に関わる目的がしっかりと押さえられている点が重要なポイントだ。
つまり、ESG経営では本業と関連性のある活動に目を向けて、慎重に計画を立てる必要がある。活動に取り組んだ後の具体的な効果・影響も意識しながら、本業にプラス効果が生じるプロジェクトを検討してみよう。

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理解しておきたいESG投資の7つの種類
ESG投資は、統計をとる目的で7つの種類に分けられている。主に手法によって分類されているため、経営者の立場からすれば関係ないと感じるかもしれない。
しかし、ESG経営によって企業価値を高めるには、投資家側の考え方を理解しておくことも重要だ。そこで以下では、7つのESG投資の概要を簡単にまとめたため、ある程度の内容は理解しておこう。
1.ネガティブ・スクリーニング
ESGの理念と反する、特定の業界を投資対象から除外する方法。主に「罪ある株式(sin stocks)」と呼ばれるものが除外され、具体的な除外対象としては以下が挙げられる。
・たばこ
・アルコール製品
・ポルノ
・ギャンブル
・動物実験
・化石燃料、原子力発電 など
ネガティブ・スクリーニングは世界最大のESG投資手法であるため、新たな事業を始める際にはしっかりと意識しておきたい。
2.国際規範スクリーニング
国際労働機関や経済協力開発機構などが定める、国際的規範の最低基準に達していない企業を投資対象から除外する手法。特に環境破壊や人権侵害に関する規範が重視されており、主に北欧の機関投資家から採用されている。
ただし、世の中には数多くの国際的規範が存在しており、どの規範を採用するかは各投資家の判断によるため、細かく見れば実際の投資手法は多岐にわたる。
3.ポジティブ・スクリーニング/ベスト・イン・クラス
環境や人権、ダイバーシティなど、ESGの観点から優れたものを投資対象として選ぶ手法。環境などのテーマごとに基準が設けられており、その基準で計算された総合スコアの高いものが投資対象として優先される。
マイナス要素があるものを除外するのではなく、プラス要素があるものを選抜する方法なので、上記の「ネガティブ・スクリーニング」とは正反対の手法と言えるだろう。
4.サステナビリティ・テーマ投資
エコファンドや水ファンドのように、特定のテーマに関連する企業に対して投資をする手法。ほかにも再生可能エネルギー投資ファンドなど、「持続可能性」に関連した投資対象が中心となっている。
サステナビリティ・テーマ投資は、ESGの元となる概念が国内に入ってきたときに日本で流行り始めた。ただし、世界的に見れば投資規模は小さく、近年ようやく注目されつつある。
5.インパクト・コミュニティ投資
社会や環境に大きく貢献するサービスなど、社会的インパクト・環境インパクトが強いものに対して投資を行う手法。インパクトのみを重視する方法もあるが、インパクトと財務パフォーマンスの両方を追求する方法も実践されている。
投資対象として非上場企業が多く含まれており、企業単位ではなくプロジェクト単位での投資も多く行われているため、中小企業にも関連性が高いESG投資と言えるだろう。
6.ESGインテグレーション
各企業の財務情報に加えて、「環境・社会・企業統治」の非財務情報も投資判断に含める手法。ESGを強く意識した投資手法と言えるが、どの非財務情報を重視するかは各投資家の判断によるため、実際には多様なスタイルで投資が行われている。
近年ではESG投資の中でも特に注目度が高いので、経営者も強く意識しておきたい手法のひとつだ。
7.エンゲージメント/議決権行使
株主という立場から、企業のESG経営に関して積極的に働きかける手法。ここまで紹介した6つの手法とは大きく異なり、この手法では議決権などを行使して企業の内部から働きかけていく。
また、上記6つの手法と組み合わせて使用される点も、エンゲージメントや議決権行使の大きな特徴だ。株主としての権利を活かすことで、投資家は企業とより密接な関係を構築できる。

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「ESG」はどれくらい浸透している?押さえておきたい現状と将来性
評価基準については課題も残されているが、ESGの考え方は着実に世界中へと浸透している。
その大きなきっかけとなったものが、2020年から始まった新型コロナウイルスの蔓延だ。新型コロナウイルスによる生産性の低下を防ぐために、2020~2021年にかけては多くの企業が健康管理や勤務形態などを見直した。
また、近年日本で推進されている働き方改革も、ESGを浸透させる一因になっている。例えば、最近では障がい者を採用したり女性を管理職に登用したりなど、ダイバーシティを実現しようとする国内企業も多く見られる。
このような状況や前述の事例を踏まえると、ESGの考え方はますます浸透していく可能性が高い。日本でもその動きは広がっており、2016年からの3年間でESG資産保有残高(※ESG投資の市場規模)は約8倍に増加した。
ESGやSDGs(持続可能な開発目標)が提唱された影響で、現代企業に求められるものは確実に変わりつつある。どのような社会になっても評価される企業で在り続けるために、引き続きESGに関する情報収集を続けていこう。
ESG経営に関するよくある質問集
ここまでの内容も含めて、以下ではESG経営に関するよくある質問をまとめた。いずれも今後のビジネスに欠かせない基礎知識であるため、成長や生き残りを目指す経営者はぜひ最後までチェックしてほしい。
Q1.ESG経営とは?何の略?
ESG経営とは、「Environment(環境)」「Social(社会)」「Governance(ガバナンス)」の3要素を重視した経営方針である。2006年に国連事務総長のコフィー・アナン氏が紹介したことで、世界中の企業からその考え方が注目されるようになった。
労働問題や気候変動問題など、さまざまな社会課題が顕在している現代において、ESG経営は世界中の投資家・消費者から重要視されている。
Q2.ESG経営はなぜ必要?
社会や自然への影響が見直されてきた中で、近年では「環境・社会・ガバナンス」を判断材料にする投資家が増えている。各企業にESGスコアをつける企業・機関も現れているため、長期的な成長を目指す企業にとってESG経営は欠かせないものになりつつある。
また、環境・社会・ガバナンスに配慮しない経営は、企業自らの業績に悪影響を及ぼす恐れもある。経営リスクを軽減するためにも、ESGを意識した経営方針は早めに考えておきたい。
Q3.ESG経営ではなぜガバナンスが求められる?
環境問題・社会問題に対処する上で、健全なガバナンスは前提とも言える要素である。健全性かつ透明性が高い企業でなければ、仮に何らかの問題を解決したとしても、社会的な評価は受けられない。
中でもコーポレートガバナンスは、あらゆる企業の経営に係る課題だ。役員報酬を適正額にしたり、取締役会の独立性を高めたりなど、外部から見ても安心できる経営体制を整える必要がある。
Q4.なぜESG投資が注目されている?
現在では、世界中で「サステナビリティ(持続可能性)」が重要テーマとして掲げられている。例えば2015年9月の国連サミットでは、2030年までに達成すべき世界の目標として「SDGs(エス・ディー・ジーズ)」が採択された。
海外では温室効果ガスに関する裁判も起こっているなど、環境問題・社会問題への関心は世界中で強まっている。このような状況を踏まえると、ESG投資は今後も広く浸透していく可能性が高い。
Q5.サステナビリティとはどういう意味?
サステナビリティとは、経済・社会・環境における「持続可能性」のことである。ESGやSDGsが重視されている現代において、サステナビリティは世界共通の目標として認識されている。
2005年の世界社会開発サミットでは、サステナビリティには「経済発展・社会開発・環境保護」の3つの柱があると提唱された。
Q6.マテリアリティって何?なぜ必要?
マテリアリティとは、各企業が設定する「重要課題」のことである。現代の企業が長期的な成長を目指すには、自社に影響する課題(マテリアル)を洗い出し、明確なマテリアリティを設定することが重要とされている。
特にESGやSDGsに関するマテリアリティを設定すると、一般投資家や機関投資家へのアピールにもつながるため、近年では外部向けの報告書などに記載するケースも増えている。
「ESG」は今後の経済を左右するキーワード
ESG投資やESG経営は、今後の経済を大きく左右する重要なキーワードだ。スケールが大きいため実感が湧かないかもしれないが、その波は着実に世界中へと広がっており、中小企業にとっても他人事とは言えない時代が到来しつつある。
そのため、現時点では社会問題や環境問題の影響を受けていなくても、中小経営者はESGの概念をいち早く理解しておきたい。いつ時代が変化しても対応できるように、基礎知識を身につけたうえである程度の準備は整えておこう。
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文・中村太郎(税理士)