CSRをわかりやすく解説!意味や具体的な事例、取り組むメリットやデメリット
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「企業が行う活動」と聞くと、利益を得るための事業活動をイメージする人が多いだろう。しかし近年は、利益に直結しない社会的な活動(CSR活動)を重視する企業が増えている。そこで今回は、CSRの意味や実践するメリット・デメリット、事例を解説していく。

目次

  1. CSRとは?
    1. CSRの意味
    2. CSRが注目される背景
    3. CSRとサステナビリティの違い
  2. CSR活動を行うメリット3つ
    1. 1. イメージや企業価値の向上
    2. 2. 取引先や株主との良好な関係性につながる
    3. 3. 優秀な人材の獲得や社員満足度の向上
  3. CSR活動を行うデメリット3つ
    1. 1.コストの増加
    2. 2.設立間もない企業や業績が悪い企業は取り組む余裕がない
    3. 3.人材不足に陥る恐れがある
  4. CSRに取り組む企業の5つの事例
    1. 1.富士フイルム
    2. 2.キヤノン
    3. 3.小松製作所
    4. 4.ブリヂストン
    5. 5.ダノン
  5. 国によるCSRの違い
    1. 1. アメリカ
    2. 2.イギリス
  6. 海外企業のCSR活動例
    1. 1. Google
    2. 2. スターバックスコーヒー
    3. 3.Amazon
  7. CSR活動は企業イメージの向上にも有効

CSRとは?

はじめに、CSRの意味や注目される背景、サステナビリティとの違いを簡単に解説する。

CSRの意味

CSR(Corporate Social Responsibility)とは、直訳すると「企業の社会的な責任」という意味の用語だ。では、具体的に社会的な責任とはどのような意味だろうか?具体的なCSRの定義に関しては厚生労働省が以下のように定めている。

「企業活動に社会的公正や環境などへの配慮を組み込み、従業員や投資家、地域社会などの利害関係者に対して責任ある行動をとると同時に、説明責任を果たしていくという考え方」
出典:厚生労働省

つまり、利益ばかり追求するのではなく「社会や環境にとって利益のある活動を行うべき」という考え方を意味する。社会問題の解決や環境保護などCSRの考え方にもとづいて行う企業活動は「CSR活動」と呼ばれる。

※1 CSR(企業の社会的責任) 厚生労働省

CSRが注目される背景

CSR活動は、2000年ごろから注目されるようになったと言われている。CSRが注目されるようになった背景には、1970年代に生じた公害問題や続発した企業による不祥事(食品の偽装表示など)などがある。公害や相次ぐ不祥事により、企業の事業活動には消費者やNGOなどの各種団体から厳しい目を向けられるようになった。

そのような事態を踏まえて、社内外の利害関係者からの信頼を獲得する目的で多くの企業がCSR活動に取り組むようになったのだ。

※2 開発途上地域における企業の社会的責任 CSR in Asia 環境省

CSRとサステナビリティの違い

CSRとサステナビリティは、しばしば意味が混同されがちだが、厳密には異なる概念である。サステナビリティ(Sustainability)とは、環境や社会、経済の視点から持続可能な世の中を実現するという考え方だ。特に、持続可能な社会の実現を目指して経営戦略を策定することは、「コーポレート・サステナビリティ」と呼ばれている。

以上を踏まえると、CSRはサステナビリティを実現するために企業が取り得る手段(責任)と言える。持続可能な社会(サステナビリティ)を実現するため、企業が責任感を持って社会や環境などの問題に取り組むことがCSR活動というわけだ。

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CSR活動を行うメリット3つ

CSR活動を実践することで主に以下のような3つのメリットを享受できる。

1. イメージや企業価値の向上

CSR活動への取り組みを公表することで、消費者や投資家などの外部の第三者に良いイメージを与える。消費者が良いイメージを持つことにより、自社の商品やサービスの売り上げが伸びたり、投資家からの評価が高まり、積極的な出資を得られたりするなど、結果的に企業価値の向上につながることが期待できるだろう。

実際に東京商工会議所によるアンケートでは、中小企業の79.7%、大企業の98.3%がCSR活動に取り組んだメリットとして「企業イメージの向上」を挙げている。この事実からもCSR活動が企業イメージや企業価値の向上に直結することが理解できるだろう。

2. 取引先や株主との良好な関係性につながる

取引先や株主との良好な関係性につながる点も、CSR活動を行う大きなメリットの一つだ。前述したアンケートにおいて「販売先・納入先との関係強化」は、CSR活動で得たメリット全9項目のうち中小企業は上から2番目(56.7%)、大企業は上から3番目(44.1%)に多い。このように取引先との良好な関係の背景には、やはり消費者を中心とした世間から良いイメージを持たれやすい点にある。

消費者が良いイメージを持っている企業と接すれば、取引先はイメージアップにつながるだけでなく安定した利益を得やすくなる。また、消費者や取引先から信頼を得ている企業は、収益が途絶えるリスクが低いため、投資家から見ても魅力的な出資対象となり得るわけだ。

3. 優秀な人材の獲得や社員満足度の向上

長期的に見るとCSR活動は、人事面にも大きなメリットをもたらす。CSR活動に取り組んでいる企業では、働いている社員も周囲から良いイメージを持ってもらいやすい。また、社員自身も社会的に意義のある事業に携わっていると自覚しやすいため、社員の会社に対する満足度が高まりやすくなるだろう。社員の満足度が高まれば、企業は「離職率の低下」「生産性の向上」といったメリットを享受できる。

また、新卒の大学生や求職中の社会人にも良い印象を持ってもらえるため、優秀な人材が集まりやすくなる効果も見込めるだろう。

※3 「企業の社会的責任(CSR)」についてのアンケート調査結果概要 東京商工会議所

CSR活動を行うデメリット3つ

CSR活動に取り組む企業は、あらゆる面で恩恵を受けられる。しかし一方で、CSR活動への取り組みには以下のようなデメリットもあるため押さえておきたい。

1.コストの増加

CSR活動を行う最大のデメリットは、行わない場合と比べてコストが増加する点である。東京商工会議所のアンケートでは、中小企業の73.8%、大企業の81.1%がCSR活動のデメリットとして「コストの増加」と回答している。8つある回答項目の中で中小・大企業ともに最も多い回答結果だ。コストが増加する理由は、短期的には利益に直結しない活動を行うからである。

例えば、環境保護の活動を行えばそこにかかるコストが上乗せされる一方で、収益は入ってこないため利益は減少してしまう。ただし、長期的には前述したようなメリットを享受できる。そのため、CSR活動は一時的な利益の減少を理解したうえで、長期的な視野で行うことが必要だ。

2.設立間もない企業や業績が悪い企業は取り組む余裕がない

先述した通り、CSR活動を行うと短期的にはコストが増加し、利益が減少する可能性が高い。業績が良く資産に余裕がある企業であれば、短期的な損失に耐えられるだろう。しかし、設立間もなく利益も資産もない企業や業績が悪い企業の場合、短期的なコストの増加は致命的だ。コストが増加した結果資金繰りが悪化し、CSR活動のメリットを得る前に倒産するリスクがある。

CSRに取り組む際には、資金的な余裕があるかどうかをあらかじめ慎重に検討しなくてはならない。

3.人材不足に陥る恐れがある

CSRに取り組むうえでもう一つ忘れてはならないデメリットが「人材不足に陥るリスク」だ。東京商工会議所のアンケートでもコストの増加に次いで回答が多かったのが「人材不足」の項目である。CSR活動への取り組みには人手が不可欠であるため、その分だけ本業に投入できる人手が減ってしまう。人材の数に余裕がない企業の場合は、人材不足から本業が疎かになりかねない。

CSRに取り組む企業の5つの事例

現在に至るまで多くの大手企業がCSRに取り組んできた。この章では、数ある中からCSRに取り組む企業に関する代表的な事例を5つ紹介する。

1.富士フイルム

富士フイルムでは「誠実かつ公正な事業活動を通じて企業理念を実践し社会の持続可能な発展に貢献する」という考え方にもとづき、CSRに取り組んでいる。具体的に同社は、以下のようなCSR活動を実施してきた。

  • 再生可能エネルギーへの転換
  • 社会インフラの維持管理支援へのAI導入
  • 多様な人材・活躍のための仕組み作り
  • 物産品購入による被災地支援
  • 教育格差是正を支援する新興国における教材提供

幅広い分野・地域でCSR活動を積極的に行ってきた点が、同社のCSR活動における特徴である。

※4 CSRの考え方と各種方針 富士フイルムホールディングス

2.キヤノン

キヤノンでは「CSR活動はマーケティングそのもの」という考え方のもと、持続可能な社会と事業の成長を同時に実現することを目標としている。例えば、日本の医療現場では、高齢化による医療費の増加や医師不足といった課題が深刻化している。同社では、先進的な医療機器を提供することで医療従事者や患者への負担を軽減し、高度医療の実現に努めているのだ。

また、ICT(情報通信技術)と教育を組み合わせたソリューションを提供することで、教育現場が抱える課題の解決や質の高い教育の提供にも取り組んでいる。

※5 CSR報告書2019 キヤノン

3.小松製作所

キヤノンと同じく、本業を通じたCSRに取り組んでいるのが小松製作所だ。小松製作所は「生活を豊かにする」「人を育てる」「社会とともに発展する」という3つの項目に重点を置いてCSR活動を行っている。具体的には、建設機械を稼働させているときのCO2排出を削減する取り組みや、海外諸国での人材育成などだ。

※6 環境・社会活動(CSR) 小松製作所

4.ブリヂストン

ブリヂストンでは「最高の品質で社会に貢献」という社是を実現する取り組みの一環として、グローバルな規模でCSR活動を行っている。主な取り組みとしては、原材料である天然ゴムの苗木を生産国に配布し、生産性の向上を支援している。また、タイヤ作りで培った技術を用いた建物用免震ゴムの販売により、オフィスビルから戸建住宅、公共施設に対し地震の際の安全性に貢献する。

※7 サステナビリティ 株式会社ブリヂストン

5.ダノン

ダノンは「企業が社会の問題・課題の解決に貢献しなければビジネスを発展させることは不可能である」という考え方にもとづいてCSR活動に取り組んでいる。具体的には「廃棄物の大幅削減による環境への負担軽減」「従業員の成果評価に社会貢献に関する項目を設けることでボランティアを促進する」など全社一丸となってCSRを推進している。

参考:社会と環境の共存 ダノンジャパン

国によるCSRの違い

アメリカやイギリスなど欧米諸国のCSRに対する考え方を見ていこう。

1. アメリカ

アメリカでは、デラウェア州会社法が代表するように各州の会社法が法人の取締役会による統合的意思決定や自己優先的意思決定を防ぐ機能を提供している。デラウェア州会社法の要諦は、株主を筆頭とするステークホルダーの利益を守ることだ。アメリカにおけるCSRとは、あらかじめ法律システムに組み込まれた構成要素である。

アメリカでは、過去に発生した数々の企業による不正事件を経て国として企業にCSR活動強化を求めてきた。なかでも大きかったのは、1989年3月24日に発生した大手石油メジャー企業エクソンによる原油流出事故だろう。5,300万ガロンの原油を積んだエクソン・ヴァルディーズ号は、積み地アラスカからカリフォルニアへ向かっていた。

しかしアラスカ州プリンスウィリアムズ湾沖で座礁し流出事故が発生。積荷の20%にあたる1,100万ガロンの原油が流出し周辺の海洋資源を汚染するなど深刻な環境被害を招いた。この事件の結果、環境保護を求める市民意識が高まり、エクソンに対して社会的責任を果たすことを求める機運が高まったのだ。 最終的には、環境NGOの「環境に責任を持つ経済主体連合」が、環境保全に関して企業が守るべき10の倫理原則をまとめ、後に「ヴァルディーズ原則」と呼ばれるものとなった。

2.イギリス

イギリスもヨーロッパを代表するCSR先進国として知られている。イギリスにおけるCSRの歴史は古くすでに1953年には、CSRという言葉が現代と同じ意味で使われていた。イギリスにおいてCSRの実践が本格化したのは1990年代に入ってからといわれている。当初はプライス・ウォーターハウス・クーパーズやKPMGといった大手監査法人などから始まり、やがて他の一般企業に広がった。

CSRは、今や企業以外のNGOやNPOなどでも導入が進んでいるのだ。なお興味深いことにイギリス政府そのものも自らのCSR活動について声明を発表している。

・環境
・ヒューマンリソース
・ファイナンスと購買
・コミュニティ

上記の4つで構成されイギリス政府が具体的にどのようにCSRをはたすのかについて説明。例えば環境では「私たちは、天然資源の廃棄や排出、消費を積極的に管理することで環境への直接的な影響を低減に取り組んでいる」となっている。

海外企業のCSR活動例

続けて海外企業のCSR活動例を3つ紹介していく。

1. Google

Googleは、CSRへの取り組みに非常に熱心なことでも有名だ。同社は、専用ページで自社のCSRについてコミュニティもGoogleのステークホルダーであるとしたうえで以下のように述べている。

「GoogleのCSR活動は、これまで1億米ドル(1米ドル110円換算で約110億円)以上寄付してきた奨学金や寄付金も含まれます。特に気候変動やグローバルヘルス、飢餓の領域での活動にフォーカス、サプライヤー行動基準に国際環境基準と倫理コードを盛り込み関係者に徹底を促します」

このように自社のみならずサプライヤーを含む関係者全員のコミットメントを求めているのだ。なおGoogleのCSR活動については、Google.orgで最新の情報がアップデートされている。

2. スターバックスコーヒー

世界75ヵ国で2万8,000店を運営するスターバックスコーヒーもCSRの熱心な信奉者だ。自らのCSRを「スターバックス・ソーシャルインパクト」と呼び4つのフィールドでゴールを設定している。

・原料調達の行動基準
不法労働などが行われやすいコーヒー農場に対し、適正な労働倫理基準の順守を求めている。

・公平な機会の提供
人種やジェンダー、年齢などにかかわりなくあらゆる人に公平な機会を提供。

・グリーンリテールの追求
環境フットプリントを削減し他者にも実践するよう促す。

・コミュニティの強化
スターバックスを「パブリックな会話の場」として提供しコミュニティのエンゲージメントを高める。

3.Amazon

新型コロナ禍でも業績を大きく伸ばしたAmazon。しかし実は、自らに厳しいCSR基準を課してもいる。自社のみならずサプライヤーなどに対しても4つのフィールドにおいて詳細なコードを定めているのだ。特に目を引くのが「気候」のフィールド。Amazonは、パリ協定が定めたカーボンニュートラル実現目標の2050年を10年前倒しした2040年を目指すとしている。

また2025年までにオペレーションで使うすべての電気を再生可能エネルギーに切り替える予定だ。さらに20億米ドル(1米ドル110円換算で約2,200億円)の資金を出資して「クライメート・プレッジ」財団を設立。ゼロカーボン実現を目指す企業や製品、サービス、テクノロジーに投資するとしている。ジェフ・ベゾスCEOのコメントは以下の通りだ。

「ゼロカーボンを実現し、未来の世代の地球を守る企業であれば、スタートアップ企業から大企業まで幅広く投資する」

このようにAmazonは、ゼロカーボンへ積極的に投資する意向を示している。

CSR活動は企業イメージの向上にも有効

CSRへの取り組みは、単に社会貢献を果たせるだけでなく、企業イメージの向上や取引先との関係性強化などのメリットを得られる可能性が高い。実際に多くの企業がCSR活動に取り組み、自社と社会にとって大きな恩恵を得ている。短期的にはコストが増えるリスクはあるものの、長期的に事業を続けるうえではデメリットよりもメリットが上回る可能性が高いだろう。

長期的に企業経営を続けていきたい経営者は、ぜひCSR活動に取り組んでみてはいかがだろうか?

文・鈴木 裕太(中小企業診断士)

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