「ESG」という言葉を聞いたことはあるが、それがどういうものなのか、よくわからないという経営者は少なくない。ESG投資とは、環境や社会、ガバナンスに対して積極的な取り組みをする企業に投資することである。ESG投資は2006年に国連が提唱し、マーケットにおいてメインストリームになりつつある。この記事では、ESGの意味やCSR・SDGsとの違い、企業での対応法について徹底的に解説していく。

目次

  1. ESGの意味とは?
  2. 「ESG投資」の意味
  3. CSRとESGの違い
  4. SDGsとESGの違い
  5. ESG投資の市場規模
  6. ESG投資の分類
    1. 1.ネガティブ・スクリーニング
    2. 2.国際規範スクリーニング
    3. 3.ポジティブ・スクリーニング
    4. 4.サスティナビリティ・テーマ投資
    5. 5.インパクト・コミュニティ投資
    6. 6.ESGインテグレーション
    7. 7.エンゲージメント/議決権行使
  7. ESG投資の格付けとは?
  8. 企業がESGに対応する2つの方法
    1. 1. 利害関係者の期待を見極める
    2. 2. ガバナンスと情報開示を徹底する
  9. ESGの観点から考える中小企業の経営戦略
    1. ムダを省くことによって環境に配慮する
    2. 働き方改革によって社会に貢献する
    3. コンプライアンス・リスクマネジメントの徹底によってガバナンスを整備する
  10. ESGにおける問題点・注意点
    1. 短期的な有効性を判断しづらい
    2. 基準が複数あり評価基準がわかりにくい
  11. ESGに対する企業の取り組み事例4つ
  12. ESGについて学べる書籍3選
  13. ESGにしっかり取り組み、企業価値を向上させよう
  14. ESGに関するQ&A
    1. Q1.ESGってどういう意味?
    2. Q2.ESGはいつから提唱された?
    3. Q3.日本ではいつからESGが注目された?
    4. Q4.ESG経営は何のために行う?
    5. Q5.ESGのガバナンスはなぜ重要?
    6. Q6.ESGの「マテリアリティ」とは?
    7. Q7.ESG投資の起源は?
    8. Q8.なぜESG投資が重視されている?
  15. 事業承継・M&Aをご検討中の経営者さまへ
ESG
(画像=thithawat/stock.adobe.com)

ESGの意味とは?

ESGとは、「Environment(環境)」「Social(社会)」「Governance(ガバナンス)」のことだ。企業が長期的に成長するためには、ESGへの取り組みが重要との見方が急速に広まっている。それに伴って、ESGに積極的に取り組む企業に投資する「ESG投資」が、マーケットのメインストリームと言えるほど、大幅に拡大している。

ESGの具体的な取り組み例は、以下のとおりだ。

ESGの具体的な取り組み例
Enviroment 環境 ・再生可能エネルギーの使用
・二酸化炭素の排出削減
・製造工程での廃棄物低減
Social 社会 ・サプライヤーの人権問題への配慮
・ダイバーシティやワークライフバランス
・個人情報の保護・管理
Governance ガバナンス ・積極的な情報開示
・取締役会の多様性
・資本効率への高い意識

これまで、多くの投資家が「環境や社会を意識する投資はリターンが小さい」と考えていた。しかし近年では、環境や社会を意識する投資はリターンが大きく、リスクが小さいとの研究結果が多く発表されるようになり、流れは大きく変わっている。

「ESG投資」の意味

前述のとおり、「ESG投資」とは「ESGに配慮した企業に対して投資を行うこと」である。ESGが投資で重視されるようになった背景に、国連が2006年に「責任投資原則(PRI)」を提唱したことが挙げられる。責任投資原則は、以下の6項目である。

責任投資原則(PRI)の6項目
1 投資分析と意思決定のプロセスにESG課題を組み込む
2 活動的な所有者となり所有方針と所有習慣にESG問題を組み入れる
3 投資対象の企業に対しESG課題についての適切な開示を求める
4 資産運用業界において本原則が受け入れられ、実行に移されるように働きかけを行う
5 本原則を実行する際の効果を高めるために稼働する
6 本原則の実行に関する活動状況や進捗状況に関して報告する

2006年の提唱以来、機関投資家やアセットオーナーが続々と署名し、署名数は2019年現在2,000件を上回っている。

責任投資原則(PRI)への署名数

2015年には、「世界最大の年金基金」である日本の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)もPRIに署名した。日本政府もESG投資を推進し、2014年2月に金融庁により発表された“日本版スチュワードシップ・コード”である「“責任ある機関投資家”の諸原則」、および2015年6月に東京証券取引所により公表された「コーポレートガバナンスコード」は、いずれもESG投資を推進するものである。

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CSRとESGの違い

ESGと似た意味を持つ言葉に「CSR」がある。ESGとCSRは、何が違うのだろうか。

CSRとは「Corporate Social Responsibility」の略で、日本語では「企業の社会的責任」と訳されている。企業が成長を続けていくためには、株主や従業員、顧客、取引先、地域社会などから信頼を得なければならない。

そのためには、製品やサービスが高品質であるだけではなく安全であること、公正で倫理に沿った活動を行っていること、環境に配慮していることなどの「社会的責任」が近年は求められるようになった。

CSRは、「企業が社会的責任を果たすための活動を経営に組み込んでいくこと」を意味する。利益の一部を社会に還元していくとともに、ガバナンスに関する情報を定められたガイドラインに沿って開示する。つまり、CSRは「企業側の視点」と言える。

それに対してESGは、「社会的責任を果たす企業に投資をすること」を意味する。したがって「投資家側の視点」と言える。この視点の違いが、CSRとESGの違いである。

SDGsとESGの違い

「SDGs」も、ESGと似た意味を持つ言葉だ。SDGsとESGの違いは、何だろうか。

SDGsとは「Sustainable Development Goals」の略で、日本語では「持続可能な開発目標」と訳される。2015年9月の国連サミットで採択された「2030年までに持続可能で多様性と包摂性のある社会を実現する」ための国際的な目標だ。貧困や飢餓、保険、教育、ジェンダー、水・衛生、エネルギー、不平等、気候変動、陸上資源など17の目標が定められており、さらに詳細な169のターゲットも示されている。

各国政府もSDGsに主体的に取り組んでおり、日本でも2016年5月に総理を本部長とし、全閣僚を構成員とする「SDGs推進本部」設置された。「SDGsアクションプラン2020」では、企業が中心となる「ビジネス」のほか、科学技術イノベーション、地方創生の推進、強靱なまちづくり、循環共生型社会の構築、次世代・女性のエンパワーメント、保健・教育などについて、政官財が一丸となって取り組むとしている。

「ビジネス」の目標には、「ESG投資を後押し」することも掲げられている。したがって、SDGsとESGの違いは「取り組みの規模の違い」であり、SDGsが政府や行政も含めた日本全体で取り組んでいくものであるのに対し、ESGは主に投資家が取り組んでいくものと言える。

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ESG投資の市場規模

ESG投資の市場規模は、世界的に年々拡大している。

世界のESG投資残高

上の図は、世界のESG投資残高をグラフ化したものだ。

SDGsが採択される以前(2014年)の投資残高は約18.2兆ドルだったが、2016年には20兆ドルを、そして2018年には30兆ドルの大台を超えた。さらに、2020年のESG投資残高は約35.3兆ドルと発表されており、この数値は2018年比で15%増となっている。

ちなみに、日本におけるESG投資残高は、2018年の時点で231兆円(約2兆ドル)と言われている。欧米に比べると市場規模は大きくないが、新型コロナウイルスの影響を受けた2019年までは増加傾向が続いており、アジア諸国のなかではトップクラスの投資残高を維持している。

このように、ESG投資の規模は欧米を中心に拡大しているが、欧州(※特にEU)に関しては状況が少し変わりつつある。投資家からの資金を集める目的で、見せかけだけの取り組みを行う企業が増えてきたため、ESGの定義を厳格化するなどのルール整備が行われているのだ。

この基準見直しにより、2020年における欧州のESG投資残高は15%ほど減少した。オーストラリアをはじめ、ほかにもルール整備を行う地域がいくつか見られるため、今後しばらくはESG投資残高の伸び率が低下することも考えられる。

ESG投資の分類

ESG投資は、以下の7種類に分類される。

1.ネガティブ・スクリーニング

ネガティブ・スクリーニングとは、投資の対象から特定の業界を除外することである。除外する業界には、武器や原子力発電、化石燃料、ギャンブル、ポルノ、タバコ、アルコールなどがある。ネガティブ・スクリーニングは、ESG投資の代表的な手法と言える。

2.国際規範スクリーニング

国際規範スクリーニングとは、特定の業界を除外するネガティブ・スクリーニングに対し、環境や社会に関する国際的な規範について、一定の水準に達していない企業を業界として横断的に除外するものである。除外される国際規範は、児童労働や強制労働、環境破壊などがなる。

3.ポジティブ・スクリーニング

ポジティブ・スクリーニングとは、前述の2つが特定の企業を除外するものであるのに対し、ESGについて高水準な取り組みをする企業に積極的に投資していく手法である。環境問題や人権問題、従業員への対応、ダイバーシティなどさまざま基準について、銘柄をスコアリングする「ESG評価」が行われている。

4.サスティナビリティ・テーマ投資

サスティナビリティ・テーマ投資とは、持続可能な社会を実現するために特定のテーマを選び、そのテーマについての取り組みを積極的に行う企業に対して行われる投資のことである。選ばれるテーマには「再生可能エネルギー投資ファンド」や「水ファンド」、「エコファンド」などがある。世界的に見れば少数派ではあるが、日本では比較的以前から行われている投資手法だ。

5.インパクト・コミュニティ投資

インパクト・コミュニティ投資とは、社会や環境、コミュニティなどに対するインパクトが大きい活動を行う企業に対して行われる投資のことである。インパクトが大きい活動を行う企業は非上場であることが多いため、非上場企業や特定のプロジェクトなどに対して投資を行うことになる。

6.ESGインテグレーション

ESGインテグレーションとは、投資先を判断する際に財務情報のみならずESG情報も取り込むことである。特定の企業を排除・選抜するのではなく、またESGのみについて評価するのでもなく、銘柄を評価する際の情報としてESGも勘案する。比較的穏当な手法であるため急成長しており、ESG投資全体の中では、ネガティブ・スクリーニングに次ぐ規模になっている。

7.エンゲージメント/議決権行使

エンゲージメントや議決権行使は、ラジカルなESG投資手法と言える。エンゲージメントとは、単に投資を行うだけではなく、株主の立場から企業に対して発言することを意味する。議決権行使は、エンゲージメントよりさらに強力な手法である。ESG投資の議決権行使では、委任状争奪戦にまで発展することもある。

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ESG投資の格付けとは?

ESG投資の観点は従来の投資(※財務情報を重視した方法)とは大きく異なるため、機関投資家などは多方面から情報収集を行っている。なかでも投資家から重視されているのは、各企業のESGに関する取り組みを評価する「格付け機関」の存在だ。

主な格付け機関 概要
ブルームバーグ・エル・ビー 1981年にニューヨークで設立された、世界的なESGの格付け機関。資本市場の透明性を高める目的で、全世界の金融やビジネスなどをリサーチしている
CDP 2000年にロンドンで設立された、企業や自治体の情報開示基盤を提供している機関。収集した情報を投資家だけでなく、世界の企業や政府にも提供している
MSCI ニューヨークに拠点を構える、世界中の機関投資家をサポートしている金融サービス企業。ニューヨークの証券取引所に上場していることから、知名度や権威性の高い格付け機関として知られている

ほかにも格付け機関は世界中に存在しており、各機関が「AAA」や「B」などの分かりやすい形で各企業を評価している。この評価によって投資先・出資先を決める投資家も少なくないので、現代企業はESG格付け機関の存在を軽視できない。

つまり、これからは格付け機関による評価を意識し、ESGに関する取り組みをより強化する企業が増えると予測される。

企業がESGに対応する2つの方法

このように、近年ESG投資はマーケットにおいて拡大している。ESGに対応した経営を行うことによって、投資先として選択されてキャッシュフローが拡大する、また「信頼できる企業」としてブランディングができるなどのメリットがある。企業がESGに対応する方法には、以下のようなものがある。

1. 利害関係者の期待を見極める

まず必要になるのは、自社の利害関係者がESGに対してどのような期待を抱いているかを見極めることである。企業がESGに対応するメリットは、利害関係者の共感や賛同を得ることによる投資の拡大や、ブランド力の向上だ。ESGへの対応を利害関係者の期待に合わせたものにすることで、より大きなメリットを享受できる。

2. ガバナンスと情報開示を徹底する

ESG投資においては、ガバナンスや情報開示も重視される。適切な組織体制の構築、および透明性の高い情報開示は欠かせない。ダイバーシティに配慮して女性社員の育成・登用を積極的に行うことも、ESGの観点では重要である。

ESGの観点から考える中小企業の経営戦略

ここからはESGの観点から、中小企業がとれる経営戦略をもう少し詳しく見ていこう。

ムダを省くことによって環境に配慮する

食品や製造に関する業種の場合は、「ロスをなくすこと」や「廃棄物を減らすこと」に着目したい。例えば、これまで捨てていた部分をローコストで商品化するだけでも、環境面には大きく貢献できる。

そのほかの業種に関しても、環境面に対する基本的な考え方は同じだ。これまで発生していた仕入れのムダ、輸送のムダ、製造工程のムダなどを見直せば、環境配慮に向けて改善すべきポイントが見えてくる。

再生可能エネルギーの活用もひとつの手だが、中小企業の場合はコスト面で難しくなる可能性があるため、まずは改善しやすい業務から見直すことをおすすめする。

働き方改革によって社会に貢献する

ESG経営を目指して大きな改革をすると、会社全体がうまく機能しなくなる恐れがある。そのため、社会(Social)の観点についても、まずは取り組みやすい部分から見直すことがポイントだ。

中小企業が実践しやすい取り組みとしては、主に以下のようなものが挙げられる。

中小企業の取り組みの例 概要
ダイバーシティ 組織に多様性を持たせること。性別や国籍に関わらずさまざまな人材を雇用したり、従業員一人ひとりが力を発揮できる環境を整えたりすることで実現できる
ワークライフバランス 従業員の仕事と生活をうまく調和させること。具体的な取り組み例としては、新たな休暇制度やフレックスタイム制の導入、有給休暇の取得促進などが挙げられる

地域活性化やボランティア活動なども考えられるが、近年の日本では「働き方改革」が重視されていることから、上記の2つに取り組む意味合いは大きい。また、女性の活躍推進もESG経営と働き方改革を両立する手段となるため、女性の管理職や人材が少ない企業は積極的に検討してみよう。

コンプライアンス・リスクマネジメントの徹底によってガバナンスを整備する

ガバナンス(Governance)に関しては、まずは「コンプライアンス(法令順守)」を徹底するところから始めたい。単に法令・条例を遵守するだけではなく、ホームページ上にコンプライアンス宣言を掲載したり、従業員にコンプライアンス教育を受けさせたりなど、プラス面として評価されるような取り組みを行うことが重要になる。

また、自社に潜むリスクを徹底的に洗い出し、丁寧にリスク対策を考える方法(リスクマネジメント)もひとつの手だ。リスクマネジメントに取り組むと、商品・サービスの質や消費者からの評価が高まるので、結果的に財務情報を向上させることにもつながる。

ESGにおける問題点・注意点

ESG投資において、企業のESGを判断する7つを紹介したが、ESGを用いた企業評価の判断には難しい点がある。

短期的な有効性を判断しづらい

ESGは投資判断の指標として用いられるが、取り組んだ内容がすぐに成果として現れるわけではない。直ちに結果が出ないという点ではSDGsに似ているが、日々継続して活動を続け、中長期的な視野でのリターンを見込むのがESGの基本的なあり方である。

基準が複数あり評価基準がわかりにくい

企業のESGを財務諸表から判断するのは難しい。そのため、各調査会社等が算出する指標を基に、ESGの計画を構築するのが一般的だ。

例えばアメリカの「MSCI指数」は、二酸化炭素の排出抑制や労働安全衛生などにおける課題を設定し、リスクが発生した際の企業財務に与える影響を考慮して評価が行われる。

また、ロンドンで2000年に設立された非営利団体であるCDPは、グローバルに活動するESGの評価機関である。全世界の1万5,000以上の企業に質問状を送付し、回答内容を基に「気候変動」「水セキュリティ」「フォレスト(森林保護)」分野での企業活動のスコアリングを実施し、結果の公開を行っている。

日本でも、例えば「サステナブル・ラボ株式会社」(東京都)は、ESGへの取り組みにより収益・株価の上昇にどれだけ貢献したかを“見える化”する「ESGテラスト」の開発を進めている。また、同社はESG・SDGsへの取り組みが、環境・社会利益にどれだけ貢献したかを提示する「GIRIGO」の開発にも取り組んでおり、国内のESG評価に取り組む先駆的な企業といえよう。

しかし、こうしたESG評価基準は団体・企業ごとに開発・提示されているため、統一性や整合性に欠ける。評価方法によって、ESGの評価内容も変わってくるため、客観性に限界がある。

ESGに対する企業の取り組み事例4つ

ESGに対して取り組みを行っている企業の4つの具体的な事例を説明する。

(1)SOMPOホールディングス

保険業界大手のSOMPOホールディングスでは、グループが直面しているESG課題を把握した上で、取り組み内容をすべて情報開示している。

環境分野では、温室効果ガス(GHG)の排出制限に取り組み、「直接排出」「エネルギー起源の間接排出」「購入した製品・サービス」「燃料・エネルギー関連活動」「輸送・配送」「事業活動で発生する廃棄物」「出張」などの項目における年度ごとのGHG排出量を試算し、その減少に取り組んでいる。

また社会分野では、「グループ内の女性管理職比率」「障がい者雇用率」「労働組合等の加入率」「育児休業取得者数」「育児支援制度」「介護休業取得者数」などをすべて開示し、取り組み内容を公開。各種比率・制度利用者数の上昇を目指している。

(2)丸井グループ

首都圏を中心に商業施設を展開している丸井グループでは、環境分野において以下のように取り組んでいる。

気候変動:GHG排出量、エネルギー使用量、エネルギーコストの削減
資源と廃棄物:リサイクル率の上昇
サプライチェーン:法令・人権・公正な取引に抵触しないCSR調達の実施
グリーンポンド:グリーンポンドへの充当

また、社会分野においては、「女性管理職比率」「育児休職取得率」「人材への投資額」「社員離職率」などの情報公開や、各数値の改善に取り組んでいる。企業内ガバナンスにおいても、「サステナビリティ委員会の設置」「女性取締役の選任」などにも取り組み、その成果・情報を公開している。

(3)オムロン

大手電機機器メーカーのオムロンは、環境分野では「温室効果ガスの排出削減」「エネルギー使用量の削減」「水銀削減」「使用化学物質の管理」「ゼロエミッション」などに取り組み、その成果を年度ごとに公開している。

また、社会分野では「海外重要ポジションの現地化比率向上」「日本人以外のグローバルな従業員の確保」「女性管理職の採用」「障がい者雇用」などに取り組んでいる。他にも「ステークホルダーエンゲージメント」(社会貢献活動への支出)や「ガバナンス」(内部通報・相談件数の開示)などにも取り組み、その成果を開示している。

(4)KDDI

大手電気通信事業者のKDDIは、環境分野では、情報通信技術を活かした業務効率化や人の移動削減に取り組んでいる。また、「KDDI GREEN PLAN 2017-2030」「KDDI Sustainable Action」を策定し、2050年までにCO2排出量実質ゼロを目指している。

社会分野では、時間や場所に縛られない多様な働き方や、さまざまな才能を如何なく発揮できる魅力的な労働環境の提供を行っている。2019年4月にKDDIラーニング株式会社を設立し、2020年4月には「LINK FOREST」という複合型の研修施設を開設した。教育プログラムや教育管理システムなどの人材育成サービスを法人へ提供している。

ESGについて学べる書籍3選

ESGについて実際に理解が深まる書籍を3冊ご紹介する。

・『1冊で分かる!ESG/SDGs入門』:中央公論新社

企業における利潤追求とESGとに整合性を持たせ、株主の合意を得るための企業経営のあり方について解説している。入門書なので内容が分かりやすく書かれており、図やデータが多いので内容の理解を助けてくれる。

・『投資家と企業のためのESG読本』:日経BP社

ESGに取り組んできたアナリストによる著作で、入門書として最適。ESG投資のこれまでと今後の動きを詳細に分析し、企業のIR部門がESG投資家にどのような情報を開示すべきなのかを示している。

・『ESGケーススタディ20』:日経エコロジー

ESGに配慮した経営を行っている先進企業を実際に取材し、その取り組み内容を紹介している。実例を学べるので、ESGの理念や取り組み方法などを解説する入門書と合わせて読むと理解をより深められる。

ESGにしっかり取り組み、企業価値を向上させよう

マーケットのメインストリームとなりつつあるESG投資は、環境と社会、および自社のガバナンスに配慮した企業に対して行われる投資である。CSRとの違いは視点が「企業側であるか投資家側であるか」、SDGsとの違いは「日本の政官財が一丸となって行うものか投資家を主体としたものか」である。

今後多くの投資を呼び込んだり、ブランディングを向上させたりする際は、ESGは欠かせないものになるだろう。ESGにしっかりと取り組んで、企業価値を向上させていこう。

ESGに関するQ&A

ESGは企業の在り方を変える新しい概念であるため、意味や目的については十分に理解することが必要だ。ここからはESGに関するQ&Aをまとめたので、本記事の内容をおさらいするためにも最後までチェックしていこう。

Q1.ESGってどういう意味?

ESGとは、「環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)」の頭文字を取った用語である。ESGは投資判断における新たな観点であり、その考え方は世界中に広まりつつある。

企業に対しても「ESG経営」を求める声は強まってきており、近年ではさまざまな企業が環境問題・社会問題の解決に取り組んでいる。2015年に採択された「SDGs(持続可能な開発目標)」とも深く関連しているため、ESGへの取り組みはさらに拡大していく可能性が高い。

Q2.ESGはいつから提唱された?

ESGは、当時の国連事務総長であるコフィー・アナン氏によって2006年に提唱された。もともとは機関投資家に対する「責任投資原則(PRI)」の中で提唱されたものだが、その考え方は一般投資家にも広がってきている。

ESGは金融業界全体のガイドラインとして機能しており、提唱されてからは非財務情報にも目が向けられるようになった。また、機関投資家に「リスクマネジメント基準の設定」や「社会的責任」が強く求められるようになった点も、経営者が押さえておきたい変化である。

Q3.日本ではいつからESGが注目された?

日本でESGが注目されたきっかけは、コフィー・アナン氏による「責任投資原則の提唱」と言われている。世界的にESGの概念が広がっていく中で、2006年以降は日本でもさまざまなシーンで議論が交わされるようになった。

近年では経済産業省や財務省などが、ESGに関する資料や検討状況などをホームページ上で公開している。

Q4.ESG経営は何のために行う?

持続可能な社会づくりが求められる現代において、ESG経営は中長期的な成長に欠かせないものと言われている。ESG(環境・社会・企業統治)の概念は一般投資家にも広がっているため、ESG経営は資金調達やイメージアップにもつながるだろう。

一方で、利益のみを求める従来の経営体質は、投資家などにマイナスイメージを与える恐れがある。ブランド力や信頼性を向上させるためにも、特に環境問題・社会問題との関わりが深い企業はいち早くESG経営を意識したい。

Q5.ESGのガバナンスはなぜ重要?

ESGの中でもガバナンス(Governance)は、ステークホルダー(株主・従業員・取引先など)の利益を守ることにつながる。例えば、徹底した監視によって上層部による不正を防止すれば、株価の暴落やイメージダウンのリスクを抑えられる。

ガバナンスの実施方法としては、コーポレートガバナンス体制の明記や発信、社外の取締役・監査役の設置などが挙げられる。また、会社全体の透明性を高めるために、最近では意思決定のプロセスを公開しているケースも多い。

Q6.ESGの「マテリアリティ」とは?

マテリアリティとは、ESGの中でも企業が優先的に取り組むべき課題のことである。業種や地域によって関わりがある環境問題・社会問題は異なるため、マテリアリティも企業によって変わってくる。

マテリアリティの要素は、環境・社会が企業に与える影響(※1)と、企業が環境・社会に与える影響(※2)に分けられている。このうち、投資家の判断を支援するものは「シングルマテリアリティ(※1のみ)」、幅広いステークホルダーに利用されるものは「ダブルマテリアリティ(※1と※2を合わせたもの)」と呼ばれている。

Q7.ESG投資の起源は?

ESG投資の起源は、アメリカのキリスト教協会が1920年代に始めた投資規制と言われている。当時のキリスト教協会は、宗教上の理由によってアルコールやギャンブル、タバコの関連産業への投資を禁止した。

ESG投資の本格的な普及は2006年以降だが、社会問題については1960年代、環境問題は1990年代から注目され始めている。つまり、ESGは近年いきなり広がった考え方ではなく、社会問題・環境問題が深刻視されるにつれて徐々に注目されるようになった。

最近では2015年に採択されたSDGsも、ESGを広く普及させる一因となっている。

Q8.なぜESG投資が重視されている?

ESG投資は、長期的なリターンを狙うための手法として注目されている。ESG経営に取り組む企業は、社会問題・環境問題への貢献を通して、持続的な成長を遂げる可能性が高いためだ。

従来の財務情報に加えて非財務情報も重視すると、投資家はさまざまリスクを抑えやすくなる。その結果として安定的なリターンを期待できるため、ESG投資は年金を運用するファンドや機関などからも採用されている。

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