esg投資
(画像=momius/stock.adobe.com)

投資の中には、esg投資などのように、投資先の企業が社会全体の持続可能性(SDGs)に配慮しているかを厳しくチェックすることに重きを置いた投資がある。ここでは、esg投資のそもそもの意味や狙いはもちろん、esg投資の具体的な投資スタイルについて解説する。

目次

  1. esg投資は環境、社会、ガバナンスがポイント
  2. 国連責任投資原則もesgを後押し
  3. esg投資における企業調査の3つのポイント
    1. 1.環境面(Environment)の取り組み
    2. 2.社会面(Social)の取り組み
    3. 3.ガバナンス(Governance)の取り組み
  4. esg投資のスタイル
  5. esg投資のメリットとデメリット
    1. esg投資のメリット
    2. esg投資のデメリット
  6. esg投資は今後も注目されていく

esg投資は環境、社会、ガバナンスがポイント

esg投資とは、「環境(Environment)」「社会(Social)」「ガバナンス(Governance)」の3つの頭文字から造られた略語であり、企業の各分野における取り組みを投資の判断基準に利用する投資法である。

投資の世界でも広まりつつあるesg投資の概念が生まれたきっかけになったのが、2015年に国連で定められた「持続可能な開発のための2030アジェンダ」、通称「SDGs(Sustainable Development Goals)」である。

SDGsでは、貧困や格差、ジェンダー、環境など、2030年までに達成を目指す17の目標が掲げられており、目標達成の取り組みを実施するにあたり、「誰一人取り残さない」という強力なコミットメントを提唱している。

さまざまなメディア媒体を通じて、SDGsの目標を示す17のロゴが発信されているため、 持続可能性への取り組みについて理解している人も多いであろうし、既に取り組みに参加している人もいるかもしれない。

機関投資家は、これまで財務諸表や市場動向などの情報を参考に投資判断を実施してきたが、気候変動や環境問題、広がる格差などによって社会活動における歪が顕在化し、将来に渡って安定した生活が脅かされるリスクが高まっている。

これらの潜在的なリスクについては、財務や市場動向だけを注視していても把握することは難しい。結果として、短期的な利益を前提とした投資しかできず、長期的な視点では企業活動そのものの存続が困難となり、投資リスクが高まる恐れがある。

esg投資では、「環境」「社会」「ガバナンス」といった企業活動を把握することで投資リスクを明確にするため、少しずつその存在感を増している。

国連責任投資原則もesgを後押し

SDGsに加えてesgの投資への取り組みを後押ししたのが、国連責任投資原則(PRI)である。機関投資家に向けた、esgを投資判断に活用する原則であり、この原則に賛同する機関投資家は署名を行い、PRIの遵守状況の情報を開示することとなっている。

国連責任投資原則は、SDGsが提唱された2015年よりも早い2006年に発足しており、以下の6つの柱が掲げられている。

1)投資分析と意思決定のプロセスにesgの視点を採用
2)株式の保有方針と所有慣習にesgの視点を採用
3)投資対象にesgに関する情報開示を要求
4)資産運用業界へのPRIの普及促進
5)PRIの実行効果アップのための協働
6)PRIに関する活動状況や進捗状況の報告

2006年にPRIが提唱された当初は、原則に賛同した投資機関数は世界で200 にも満たなかったが、2019年には2,372の投資機関がPRIに署名し、運用資産残高は80兆ドルを超えた。日本においても年金積立管理運用独立行政法人(GPIF)、日本政策投資銀行(DBJ)の他、保険会社などもPRIに署名している。

巨額の資産運用額を誇るGPIFが署名したこともあって、PRIは日本国内でも広がりを見せているが、欧米と比較すると、esg投資を実施した資産保有残高は低水準に留まる。

esg資産保有残高も去ることながら、2018年の運用資産全体に占めるesg資産の割合に着目すると、オーストラリアやニュージーランドは63.2%、欧州は50.6%と半数を超えている。日本の2018年のesg資産の割合は18.3%と、2016年の3.4%からは大幅に増加しているものの、他の先進国と比較すると、まだまだ発展途上にあることが分かる。

裏を返せば、日本では今後さらにesg投資が拡大していく潜在的可能性を秘めており、ますますesg投資に注目が集まるであろう。

esg投資における企業調査の3つのポイント

投資家はesg投資を進めていく上で、企業のどのような取り組みをチェックしているのだろうか?経営者は事業資金の調達のためにも、投資家が企業調査で重視するポイントを把握しておく必要がある。

ここでは、esg投資の3つの項目別にポイントを紹介する。

1.環境面(Environment)の取り組み

環境面(Environment)への取り組みとしては、海洋プラスチック問題や森林保全などの環境保全に関する課題に対して、企業がどのような活動を行なっているかがチェックされる。また、食品ロスの問題など、外食産業などを中心として、廃棄物対策への工夫も求められるであろう。

さらに、企業活動を行う上では、店舗や事業所、オフィスの運営において電気などのエネルギーを消費することになるが、省エネ対策にどれほどコミットしているかに対しても投資家の厳しい目が注がれる。

環境保全の意識を従業員に高めてもらうために、森林保全のボランティア活動に従業員が従事する企業もあり、esg投資においてもこうした活動が評価されることとなる。

2.社会面(Social)の取り組み

社会面(Social)に関しては、概念が抽象的になりがちであるが、実際の企業の社会的な取り組みからイメージが掴めるだろう。

多様な人材を採用し、企業での育成を通して活躍を促すことも、esgの社会面での実践例として挙げられる。女性従業員の活躍を推進したり、育児や介護をしながら仕事に取り組めるような両立支援を積極的に行ったり、ワークライフバランスをサポートしたりする企業などは、社会面の評価が高まるであろう。

また、各企業が活動する地域との共生を目指して、スポーツイベントの後援、青少年のキャリア教育支援を行っている企業もある。

企業の社会的評価に関する取り組みは幅広いため、投資家もesgの取り組みとして判断するのは容易ではない。各企業は、それぞれの取り組みを通して、どのような社会の実現を目指すのかといった「ビジョン」を示せるかが鍵となりそうだ。

3.ガバナンス(Governance)の取り組み

ガバナンス(Governance)という言葉はとっつきにくい印象を受けるが、企業活動において、経営の透明性や効率性を高めるための取り組みをしっかりと実行し、管理していることを示す上で重要である。

ガバナンスの評価を高めるには、社内の意識決定のプロセスやスピード、経営をどのように管理・監督していくか、責任の所在をどのように管理するかなど、企業構造を明確化しなければならない。社内の取締役会や監査役会が形骸化せずに、適切な意思決定がなされ、不正を防止する仕組みの構築が必要である。

また、企業活動には多くのステークホルダーが関与するため、企業がいかにしてステークホルダーとの信頼関係を構築し、その利益を最大化するための取り組みを行なっているかは、esg投資のガバナンスとしてチェックされる。

esg投資のスタイル

機関投資家などは、esg投資を実施するにあたって、各企業の取り組みを厳しくチェックした上で投資対象を絞り込んでいく。世界におけるesg資産の内訳をみると、上場株式が半数に上り、次いで債券が3割ほどを占める。

こうした傾向を捉えて、日本国内の企業の中にはesgへの取り組みに使途を限定した社債を発行する動きも活発化しており、esg投資を呼び込む動きを見せている。一方、esgは持続可能性の観点から企業を選定するため、環境への影響が懸念される化学燃料業界や、健康に害を及ぼすたばこ等の業界から投資を引き上げる動きもみられる。

esg投資のメリットとデメリット

個人投資家でもesg投資を実践することは可能であるが、esg投資を行うにあたってのメリットとデメリットについても把握しておかなければならない。

esg投資のメリット

esg投資のメリットは、esgに関係するSDGsの基本概念である「持続可能な社会活動」に、投資を通じて貢献できる点が挙げられる。持続可能な社会の実現は、企業だけの活動や資金だけで達成するには限界があり、投資家がesgに配慮した投資を行うことで、企業の取り組みを後押しすることもできる。

esg投資によって投資を受けた企業は、SDGsに則るような持続可能性を高めるための企業活動を行い、結果的に長期的に安定した事業を継続する原動力となり、投資家サイドも投資リスクを低減することができるであろう。

esg投資のデメリット

esg投資のデメリットは、長期的な投資に向いている反面、短期的な投資には適さない 点である。

esgに配慮する企業は、短期的な収益に執着せず、長期的な持続可能性を追求する傾向があるため、esg投資は短期的な運用には不向きと言えるだろう。

また、従来の投資では、企業の財務諸表や決算などから投資判断をしていたが、esg投資を実践するには、数値化されていない各企業の取り組みについてもチェックしなければならない。企業のesgの取り組みが、今後どのように企業価値を高めていき、利益向上に貢献するのかを見極めなければならない。

esg投資の歴史がまだまだ浅いため、成功事例やセオリーから投資判断基準を導けるものではないため、投資対象を絞り込む難しさがあることも、esg投資のデメリットとして挙げられよう。

esg投資は今後も注目されていく

esg投資は、新たなトレンドとして世界中で広がりを見せており、投資を通じて持続可能な社会の実現を目指す企業をサポートすることを目的としている。各企業がesgにどのように取組んでいるか、投資家からも厳しい目が向けられるように、投資家もまたesg投資に真摯に取り組んでいるのかが問われる時代を迎えている。

文・THE OWNER編集部

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