世界で最も売れているアーティストと聞いて、最初に思い浮かべるのは誰だろうか?「売れているアーティスト」を定義するとしたら、「高価格で取引される」のに加えて大きく関わってくるのが「数の多さ」だ。そこで、数多くの作品を制作した3人のアーティスト、パブロ・ピカソ、サルバドール・ダリ、アンディ・ウォーホルを例にその市場を見てみよう。(記事内は1ドル=110円で計算)

パブロ・ピカソ

Pablo Picasso
(画像=Pablo Picasso)

出典:https://indiehoy.com/

【2021年の結果】
販売ロット数:3,462ロット
最高落札額:約1億340万ドル (約113億7,400万円)

パブロ・ピカソ(1881-1973)は、アート市場において最も作品価値の高い作家の一人だ。世界一多作な作家としてギネスブックに登録されているだけあって、2021年の販売ロット数は3,462(1日に約10作品が取引されている)にものぼる。数の多さだけで言うと「希少」な存在とは遠いとも言える。

しかし、そのうち52点の作品が1,000万ドル(約11億円)以上の高値で落札。最高落札額である1億340万ドルをつけた《Femme assise près d’une fenêtre (Marie-Thérèse)》は、2021年のオークションでトップの作品となった。一方で、ピカソ作品の約43%が5,000ドル(約55万円)未満で取引されており、多くのコレクターにピカソの作品が届いている。

《Femme assise près d’une fenêtre (Marie-Thérèse)》(1932)
(画像=《Femme assise près d’une fenêtre (Marie-Thérèse)》(1932))

出典:https://www.artsy.net/

サルバドール・ダリ

salvador dali
(画像=salvador dali)

出典:https://www.artspace.com/

【2021年の結果】
販売ロット数:2,387
最高落札額:約1,070万ドル(約11億7,700万円)

シュルレアリスムを代表するスペイン人作家、サルバドール・ダリ(1904-1989)は、2021年において著しい作品数の増加を見せた。販売ロット数は、2000年初頭の約4倍になる2,387点となり、歴史的な記録を更新。人気作品は1,500万ドル(約16億5,000万円)以上の値がつくこともあるが、5,000ドル以下で取引される作品は87%と高い割合を占めている。

この割合の高さは、ダリ作品の購入を考えている人にとって注意が必要だ。なぜなら、1980年にダリが“サインのみ”を入れたリトグラフの紙を販売していたことが発覚したからである。それは1960年代から80年まで続けられ、その数は何万枚もあるという。発覚後は、当然のように自身の市場価値を下げる結果になってしまい、今もなお何千枚もの偽物の版画が流通していると言われている。そのため、ダリの愛好家は1960年代以前または1980年代の版画を好んで購入するコレクターが多い。

《L’Àngelus》(1934-1935)2021年最高落札額の作品
(画像=《L’Àngelus》(1934-1935)2021年最高落札額の作品)

出典:https://www.sothebys.com/

アンディ・ウォーホル

 Andy Warhol
(画像= Andy Warhol)

出典:https://www.highsnobiety.com/

【2021年の結果】
販売ロット数:1,591
最高落札額:約4,730万ドル(約52億300万円)

代表作シリーズ「キャンベル・スープ缶」で知られるポップアートの代表的作家、アンディ・ウォーホル(1928-1987)。ポップアートは大量生産・大量消費される大衆文化のイメージを取り入れたアートのため、ウォーホルの作品数が多くなるのは必然的。ウォーホルを象徴する技法、シルクスクリーンによって複製された作品は、アート市場でも根強い人気を誇っている。

オークションで販売されるウォーホルの作品の4分の3のうちに含まれるサイン入りの版画は、名作と並んで高く評価されている。特に最も高値がつくのは、ウォーホルが存命中に制作されたサイン、ナンバー入りの作品で、数百万ドルまで高騰することも。それとは反対に、2021年で5,000ドル以下の取引は44%を占めている。高額落札は話題になるゆえに強いイメージが残るが、ピカソやダリと同様、実は思っている以上に手が届く作品が多いのである。

《Nine Marilyns》(1962)2021年最高落札額の作品
(画像=《Nine Marilyns》(1962)2021年最高落札額の作品)

出典:https://www.sothebys.com/

一点物のキャンバス、ドローイングや版画などのエディション作品などで作品の価格帯を幅広く構成することで、さまざまなニーズに応えることが可能となる。潤沢な資金のある一部のコレクターだけではなく、より多くのコレクターからの継続的な人気を得ることは、アーティスト自身の価値を上げていくことにも繋がっていく。「数の多さ」は、アート市場全体をも推進していく強力な要素の一つと言えるだろう。

ANDARTでは、アンディ・ウォーホルの代表作シリーズ、キャンベル・スープより「PEPPER HOT」のプリント作品を含む全4作品を取り扱い中。他の取り扱いアーティスト・作品とあわせて、以下の作品一覧よりご覧下さい。無料会員様には、オークション速報やアートニュースをメルマガとLINEで配信もしています。

文:ANDART編集部

参考
https://www.artprice.com/artmarketinsight/the-three-best-selling-artists-in-the-world