2022年3月3日、ロンドンでフィリップスオークション「20th Century & Contemporary Art Evening Sale」が開催。クロード・モネなど近代の巨匠から、セシリー・ブラウンやジェイド・ファドユティミら最近のオークション上位常連の現代アーティストまで、絵画、版画、立体など47点が出品された。落札価格TOP5の作品とANDARTに関連するアーティストの落札情報をピックアップして紹介。落札価格は1£=154.16円で計算(3月3日終値)、手数料込み。

5)草間彌生《Infinity Nets (SENN)》
落札価格:約1億9,933万円(£1,293,000)

水玉模様と並んで草間彌生を代表する網の目の絵画。本作と同じ『無限の網』というタイトルで草間の自伝も出版されている。草間いわく、始まりも終わりもない無限の繰り返しが、一種のめまいのような感覚を引き起こすのだという。

鮮やかな赤や黄色で描かれた網の絵も多いが、本作は珍しく黒一色。補色のコントラストに頼らず、絵具の物質性を強調して没入感のある画面をつくりだしている。(予想落札価格:約1億8,499万円〜2億7,749万円 / £1,200,000〜1,800,000)

ANDARTでは網の目を背景に使った草間彌生作品4点を取り扱い中。

4)ハーヴィン・アンダーソン《Untitled (Handsworth Park)》
落札価格:約2億615万円(£1,337,250)

ハーヴィン・アンダーソン《Untitled (Handsworth Park)》
(画像=ハーヴィン・アンダーソン《Untitled (Handsworth Park)》)

出典:https://www.phillips.com/

ジャマイカ移民の両親を持つイギリスの画家ハーヴィン・アンダーソン。2017年にターナー賞にノミネートされるなど近年飛躍を見せており、2019年には東京・南青山のRat Hole Galleryで日本初個展が開催された。本作はアンダーソンが30代の頃に描いた初期作品の中でも、アイデンティティの探求や疎外感など今日まで続くテーマが濃く現れており重要視されている。(予想落札価格:約1億8,499万円〜2億7,749万円 / £1,200,000〜1,800,000)

3)ニコラス・パーティー《Houses》
落札価格:約4億8,846万円(£3,168,500)

ニコラス・パーティー《Houses》
(画像=ニコラス・パーティー《Houses》)

出典:https://www.phillips.com/

1980年スイス生まれのニコラス・パーティーは、どこか異次元の雰囲気が漂う具象画で高く評価されている画家。ナビ派のフェリックス・ヴァロットン、象徴主義のフェルディナント・ホドラー、シュルレアリスムのルネ・マグリットらの影響が見られる。本作はパーティーがソフトパステルで描いた2作のうちのひとつ。ルネサンス期を思わせる古典的な建築群を、絶妙なバランスと色彩感覚でまとめている。(予想落札価格:約1億6,958万円〜2億3,124万円 / £1,100,000〜1,500,000)

2)セシリー・ブラウン《When Time Ran Out》
落札価格:約2億2,731万円(£1,474,500)

セシリー・ブラウン《When Time Ran Out》
(画像=セシリー・ブラウン《When Time Ran Out》)

出典:https://www.phillips.com/

具象画を大胆な筆致で抽象的に変貌させるイギリスの画家セシリー・ブラウン。世界屈指のメガギャラリーGagosianの所属作家だ。本作は195.6 x 246.4cmの大型作品で、近年取り組んできた「難破船」をメインモチーフとしている。ロマン主義の巨匠テオドール・ジェリコーによる《メデューズ号の筏》(1818〜1819年)を参照しつつ、明るい色彩と躍動感のある肉体表現でオリジナリティあふれる作品に昇華させている。(予想落札価格:約3億832万円〜4億6,248万円 / £2,000,000〜3,000,000)

参考:テオドール・ジェリコー《メデューズ号の筏》
(画像=参考:テオドール・ジェリコー《メデューズ号の筏》)

出典:https://www.franceculture.fr/ © 2003 Musée du Louvre / Erich Lessing

1)デイヴィッド・ホックニー《Self-Portrait on the Terrace》
落札価格:約7億4,960万円(£4,862,500)

デイヴィッド・ホックニー《Self-Portrait on the Terrace》
(画像=デイヴィッド・ホックニー《Self-Portrait on the Terrace》)

出典:https://www.phillips.com/

イギリスを代表する具象画家デイヴィッド・ホックニーの作品が1位となった。強い日差しを感じさせる大胆で鮮やかな色彩は、カリフォルニアの光に魅せられたホックニー作品の特徴。本作はその中に繊細な自画像が組み込まれた珍しい例となっている。近代建築の巨匠ル・コルビュジエが提唱した「住宅は住むための機械である」という考えに反し、ホックニーは家をドラマチックな場所として生き生きと描いた。(予想落札価格:約6億1,664万円〜9億2,496万円 / £4,000,000〜6,000,000)

【ANDART関連アーティスト落札情報】
ジャン=ミシェル・バスキア《Untitled》
落札価格:約1億606万円 (£688,000)

ジャン=ミシェル・バスキア《Untitled》
(画像=ジャン=ミシェル・バスキア《Untitled》)

出典:https://www.phillips.com/

自身と同じ黒人を主人公とした絵画を多数描いたジャン=ミシェル・バスキア。本作は2019年に森アーツセンターで開催された「バスキア展 メイド・イン・ジャパン」でも展示された。水彩やクレヨンで紙に描かれており、バスキアのドローイングの中でもここまでキャンバス作品に近い印象のものは珍しい。アフリカの仮面を思わせる誇張された頭蓋骨、剥き出しになった臓器からは、生々しい人間性が感じられる。(予想落札価格:約9,250万〜1億2,333万円 / £600,000〜800,000)

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文:ANDART編集部