セントラルフーズ新狭山工場
(画像=セントラルフーズ新狭山工場)

東急グループで精肉、加工肉、総菜製品の製造・販売・卸売を手掛けるセントラルフーズ(本社:東京都品川区)。

同社は製造卸小売の一貫体制を敷き、徹底した品質・衛生管理のもと、埼玉県狭山市と東京都町田市に2つの直営工場を展開し、両工場から総菜販売店「ローゼンハイム」や精肉販売店「精肉あづま」「ベストワン」などへ精肉や食肉加工品、総菜など供給している。

このうち、狭山市にある狭山工場は1973年の稼働以来、49年にわたってハム・ソーセージを中心に冷凍食品や総菜を手掛けてきたが、施設の老朽化に伴い、同市の工業団地拡張地区内の上広瀬西久保地区に新狭山工場を建設、晴れて2021年10月から操業を開始している。

新工場は、新たにIQF(個別急速冷凍)製造ラインなど最新設備を導入する一方、旧工場で培ってきた幅広い対応力と高度な技術力を受け継ぎ、HACCPに基づいた厳格な品質・衛生管理のもと、これまでのラインアップとともに精肉半製品やパスタソースなど新たな商品も提供していく。本紙はこのほど、新狭山工場を訪問、山下征美工場長に工場の特徴を聞いた。

狭山新工場の敷地面積は1万18平方メートル、建屋の延床面積は4,797平方メートル。延床面積は旧狭山工場(5,400平方メートル)からややスリム化したものの、生産能力は年間2,700t(月産)と約2倍に拡大した。このうち、主要品目のハム・ソーセージ類は月産100t、精肉半製品は同50t、総菜は同30tに上るという。

新狭山工場の新たな取組みとして、
〈1〉IQF製造ラインの導入
〈2〉省人化の推進
〈3〉JFS―B認証対応のオペレーション実施
――の3つがある。このうち、IQF製造ラインは、ハム・ソーセージと精肉半製品に新設した。大手メーカー向けのパスタソースのOEM製造(他社ブランドの製品製造)ラインも新設しており、2021年12月から製造を開始している。

「省人化の推進」では、旧工場が増床を重ねてきた結果、作業の導線が一部交差するなど作業効率の面で課題があったが、新工場では工程を集約化させてワンウェイによる効率化と機械化によるコスト削減を行っている。

また、旧工場でもHACCPに準じた運営を行い、JAS認定・特定JAS認定を受けていたが、新工場でもこれらJAS認定に加えて、新たに「JFS―B規格」を来年度に認証を得るべく取組みを進めているところだ。

新狭山工場は、週5日稼働、午前8時から午後5時までの1シフト体制を敷いている。在籍する従業員数は121人(うち社員35人、クルー86人)で、ハム・ソーセージや総菜を手掛ける「製造1課」(68人)と、精肉半製品を製造する「製造2課」(18人)、そして原料管理や出庫管理、工務などを担う「工場管理課」(35人)の3つの組織体制で運営している。

このほか、本部所属の商品開発(3人)と品質管理(9人)の担当者も常駐する。省人化の推進により旧工場よりも生産能力を倍増させつつ、20人の人員を削減して運営することが可能となったという。新狭山工場の最大の特徴が、旧工場から受け継いだ高い技術力にある。旧工場は、2013年に県内の技術力や環境面で優れている工場を県知事が指定する「彩の国工場」に認定されたほか、2016年と2018年にはドイツ農業協会が主催するDLGコンテストでそれぞれ金賞を6品ずつ受賞(2016年は銀賞4品も受賞)。そして2021年には国際味覚審査機構(iTQi)で優秀味覚賞を4品で獲得している。

その世界的に認められる品質を支えていのるが工場のスタッフたちだ。とくに国家資格である「ハム・ソーセージ・ベーコン製造技能士」は、現在、工場の社員35人のうち、1級取得者が15人、2級取得者が4人の合計19人が技能士として日々技術を磨いている。「当工場はものづくりの工場であり、技術力を高めることを重視して毎日の製造に取り組んでいる」と山下工場長。

「当社が百貨店に販売店を展開していることを踏まえると、職人が培ってきた匠の技術を使った優れた商品をどれだけ作ることができるかが当然のことながら求められるため、その部分に力を注いでいく。他方で、OEMやロットの大きな商品を手掛けるなどして、工場の稼働率をいかに高めていくかも同時に考えていく必要がある」という。

〈直営店向け製品のほか、外販向けハム・ソー、精肉半製品も多数請け負う〉
新狭山工場で製造する主力商品のうち、外販関係では、斜切りウインナーや短冊ベーコンといった大手メーカーのパスタソースのトッピングをはじめ、牛タン燻製、大手有名ブランドのローストビーフなどのOEM製造を多数請け負っている。

また、直営店向けでは、コンシューマ製品を中心に「ローゼンハイム」「高座豚」「あづま」の各シリーズを手掛けている。精肉半製品と総菜は外販商品が中心で、仙台の商社との協力で、牛タン味付肉を月間30~40t製造しているほか、スーパーやドラッグストア向けに各種味付け肉を手掛けている。

そして、2021年12月からスタートを切ったパスタソース(業務用個食パック)のほか、年末年始にはデパート向けにチルドのおせち料理も請け負っている。「製造する商品構成は旧工場と同じだが、今後は新たに取り組み始めたパスタソースをはじめ総菜関係など、IQFラインも生かすことで生産量を高めていきたい」(山下工場長)。

新狭山工場は1階部分が全て製造エリアになっており、2階が事務室や検査室、試作室、食堂などの非製造エリアとなっている。製造エリアは、〈1〉ハム・ソーセージ(195品目)〈2〉精肉半製品(牛タン味付肉、ハラミ味付肉、豚・鶏味付肉など45品目)〈3〉総菜(パスタソース、ローストビーフなど20品目)――3つのゾーンに分かれており、IQFルームはハム・ソーセージ(処理量は1時間当たり400kg)と精肉半製品(同300kg)の製造エリアに併設されている。

フロア全体が、東から西へと一方向で工程が進んでいくワンウェイ方式のレイアウトとなっており、中央の加熱室(スモークハウス、ボイル、オーブン)を境に、加熱前の生工程を扱う「汚染区域」と、加熱後の製品を取り扱う「清浄区域」で完全に区分けされている。フードディフェンス(食品防御)の観点から、従業員はそれぞれ担当するエリア専用の出入り口から入退室を行う。従業員に支給されるセキュリティカードには入退室履歴が記録されるほか、汚染区域の従業員が清浄区域の出入口のセンサーにカードをタッチしてもゲートが開かないなど入退室の権限を持たせている。各エリアには監視カメラが約40台設置されている。

このうち、ハム・ソーセージの製造エリアでは、漬け込んだ国産豚ロース肉を天竺木綿で巻いた人気の「布巻ロースハム」(ノンスモーク)をはじめ、直営店向けコンシューマ商品や業務用の外販向けなど195品目を製造している。加熱室にはスモークハウス8器、ボイル漕5器、コンベクションオーブン2器を導入、とくにスモークハウスは新たにワンウェイ方式のスモークハウスを採用したことで、庫内に入れられた台車は加熱後、もとの場所(生工程)に戻すことなく、反対側の清浄区域に移動させることができる。

セントラルフーズ新狭山工場 スモークハウス8器
(画像=セントラルフーズ新狭山工場 スモークハウス8器)
セントラルフーズ新狭山工場 コンベクションオーブン2器
(画像=セントラルフーズ新狭山工場 コンベクションオーブン2器)

IQF製造ラインも導入したことで、トッピングなどのバラ凍結が可能となったという。それぞれのエリアで製品化されたハム・ソーセージ、精肉半製品は、最終的に包装室で一括梱包され、冷蔵庫および冷凍庫で保管される。

ピッキング室では、各店舗・顧客向けに仕分けされ、出荷される。出来上がった製品は、物流機能を持つ横浜工場へ一度運んだうえで各店舗へ出荷するほか、一部の外販商品は営業倉庫へ搬入してから納品している。

〈畜産日報2022年3月3日付〉