旭酒造 発酵管理の様子
(画像=旭酒造 発酵管理の様子)

日本酒「獺祭(だっさい)」蔵元の旭酒造(山口県岩国市)は2月17日、2022年・2023年製造部入社の大卒新入社員の初任給を、従来の月額21万円程度から30万円に引き上げると発表した。

同社では2022年、「5年で平均基本給を2倍」を掲げ、2026年度の製造部の給与を、2021年度比2倍以上を目指すプロジェクトを開始。そのために、初任給、既存社員給与共に2026年まで段階的にベースアップを実施している。

「獺祭」の海外輸出金額は、2021年9月期に国内販売額を超えた。旭酒造では世界中のアルコール市場やラグジュアリー市場で、より多くの厳しい目に獺祭の品質やブランドがさらされるとし、「獺祭の価値の中心を担う製造メンバーが誇りを持ち、美味しさを追求し続ける酒造りの環境を作りたいと考えている」などと説明。そのような環境構築手段の一つとして、製造社員給与の引き上げを決断したという。

処遇以外の環境構築では、“酒造りの品質を追求し、技術的挑戦や試行錯誤の場となる”高級酒に特化した新規酒蔵の建設を計画している。

旭酒造では、近年の日本の傾向である“良いものをより安く”とコストパフォーマンスを追求した結果、安価な人件費を求めて海外に出ることや、研究や開発に割く余裕がなく“イノベーションが生まれにくい事”は、日本のモノ作りの未来にとって課題だと捉える。

旭酒造は「“手間”による高品質なモノづくりが評価される未来を創りたいと考えている」としており、今回の給与引き上げについての説明に際し、「一握りの成功者が富を独占し、その他大勢の労働者は低賃金労働を余儀なくされる現代の二極化が進む資本主義経済の構造的問題が、近年のIT技術やグローバル社会の発展でより一層加速している」などと述べている。

これら問題の解決策として、同社は「日本の高品質なモノづくりの根幹にある価値“手間”を掛けて酒造りに取り組む職人達に適切な報酬が還元される仕組み」が、新たなモデルとして機能すると確信したとし、「高付加価値が評価される市場に踏み込みたい」とする。