黒坂 岳央
黒坂 岳央(くろさか・たけお)
水菓子肥後庵代表。フルーツビジネスジャーナリスト。シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、東京で会社員を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。ビジネス雑誌やニュースサイトでビジネス記事を書いている。著書に『年収1億円超の起業家・投資家・自由業そしてサラリーマンが大切にしている習慣 “億超えマインド"で人生は劇的に変わる!』など。

1つの業種に一点集中する、これがかつての社長が目指すべきスタイルだったに違いない。だが、現代では違う。今は繁栄を築く企業も、20年後、30年後にそのままのビジネスモデルで生き残っている可能性は小さいだろう。では、中小企業の社長の理想のビジネススタイルとはなんだろうか。

相互補完的パラレルワークをしよう

中小企業
(画像=Bimbim / Shutterstock.com)

むやみにあれこれとビジネスに手を出しても、どれも中途半端に終わってしまう。そこで筆者がおすすめしたいのは、複数の事業が相互補完的な役割を果たし、互いに価値を高められるようなビジネスをパラレル(複業)で取り組んでいくというものだ。

このような話をすると、「カフェで働く人が、同じフード業界の居酒屋を経営することでは?」と返ってきそうだがそうではない。それは単に業務経験が働く上で役に立つだけであって、レバレッジがかからない。1日8時間カフェで働く代わりに、1日4時間カフェで働き、4時間居酒屋で働いてもそれぞれの業績が2分の1になるだけである。

私がお伝えしたいのはそうではなく、レバレッジとしてのパラレルワークだ。レバレッジには「テコの原理」という意味がある。足し算ではなく、掛け算的な効果を発揮するものを指す。そう、パラレルワークとは、「相互補完的」でなおかつ「レバレッジがかかるもの」でなければ意味がないのである。

理想的なパラレルワークの事例

筆者の知人に年収が2億のIT社長の経営者がいる。彼はとあるITアプリケーションを開発したことで、業界で大きな成功を収めた。ロングセラーとなったその商品は、未だに売れ続けており、彼は一般人が使い切れないほどの資産を手にした。

彼の会社には多くの投資家、エンジニアが集まっている。元・米国系外資の投資銀行で数学の博士号を持ったクオンツ、人工知能、ビッグデータ、ディープラーニングなどそれぞれの開発者などだ。彼はその貴重な人材を活かし、仮想通貨投資を始めることにした。彼は2017年の仮想通貨バブルで元々あった資産をさらに数倍にすることに成功し、今では開発したアプリケーションを、サブスクリプション契約で投資家に使わせるサービスを提供している。

仮想通貨はITと金融を融合したフィンテック分野であり、まさにITと金融両方に精通している必要がある。彼がITアプリケーション開発で培ったノウハウは、そのまま金融投資ツールの開発に転用できるし、ITアプリケーションを購入した顧客リストも、そのまま金融投資のアプリケーションの潜在顧客として属性も重なっている。

彼のケースではITアプリビジネスの実績やノウハウ、経験をうまく拡張させることにより仮想通貨における金融投資や投資ビジネスのサービスにレバレッジをかけて展開することができたのである。

パラレルワークは、本業との属性を考える

本業で企業のインハウス・ロイヤー(企業内弁護士)で実績と知名度を高めながら、個人で弁護士業をパラレルワークする人の例を紹介しよう。この方は、会社のブランド力や知名度を活用してインハウス・ロイヤーとして安定的な収入を得ながら、会社の名刺で個人で仕事も取っている。会社員としての会社のブランドを利用するメリットと、個人事業主の自由さと収益が青天井であるという双方のメリットを活かした事例と言えよう。

パラレルワークを検討している経営者は、本業のビジネスにレバレッジをかけられるか、顧客や実績などの属性とマッチするものは何かなど、今一度、確認をしてさらなるビジネスの発展に役立ててもらいたい。

文・黒坂岳央(水菓子 肥後庵 代表・フルーツビジネスジャーナリスト)