注目のオークション結果から、NFTのトピックまで。先週1週間でアートマーケットを賑わせた話題を振り返ります。(1ドル=116円で換算)
オークション
▍「CryptoPunk」のNFTがサザビーズでセット販売へ。約23〜35億円の落札予想
2022年2月23日、サザビーズは、Larva Labs社がデザインしたNFTアバター「CryptoPunks」のコレクションを104体セットでオークションに出品する。落札予想価格は2,000万~3,000万ドル(約23.2億円〜34.8億円)。これまでで最大規模のセットでの販売となる。「CryptoPunks」はプロフィール写真(PFP;profile pictures)と呼ばれるもので、当初はソーシャルメディアのアバターとして使用するためのものだったが、現在は最も人気のあるNFTの一つとなっている。(ARTnews)
▍バーチャルヒューマンが制作したNFT作品がオークションへ。オークションデータを利用してリアルタイムにNFTを構築
香港の広告会社Gusto Collective社とフィリップスは共同で、バーチャルヒューマン「MonoC」が制作したデータドリブンなNFTアートワークをオンラインオークションに出品する。全ロットの入札からリアルタイムで収集された最低10万点のデータが、作品をレンダリングするためのアルゴリズムを駆動し、オークション中にリアルタイムで作品が生成されていくという。(MARKETING)
▍フィリップス、エディション作品のオークションを拡大へ。国際的な需要の高まりを受け
フィリップス社は、エディション作品(限定部数で販売される版画などの作品)のオークションを拡大することを発表した。今年は3つのライブオークションが追加され、ニューヨークとロンドンで合計7つのライブオークションが予定されている。
フィリップス社は「20世紀や現代の希少な版画やマルチプル作品の入手を熱望する世界中のコレクターからの増え続ける需要に応えることができる」と述べている。今年最初のニューヨーク・エディションズのセールでは、デイヴィッド・ホックニーやKAWSの版画が目玉となっている。(ARTFIX daily)
NFT
▍NFTはシリコンバレーで投資以外の価値も評価されている
イギリスの経済紙「フィナンシャル・タイムズ」は、「CryptoPunk」などのプロフィール写真(PFP)のNFTを購入するシリコンバレーの投資家・経営者たちを取材し、彼らが投資以外でも価値を感じていることを紹介している。
NFTの購入には技術的な知識が必要である一方、従来のアート界のしがらみにとらわれない新しいアートとして捉えられていたり、「NFTにはこれまでのアートにはない色やムーブメント、起源がある」とアートとしての価値も感じられるほか、NFTを介したコミュニティの形成によってこれまでにない規模の人間関係を築くことができるメリットなどが挙げられている。(FINANCIAL TIMES)
▍PakのNFTが約63億円で落札され、2番目に高価なNFTに。「ウィキリークス」創設者のための訴訟費用へ
匿名で政府、企業、宗教などに関する機密情報を公開するウェブサイト「ウィキリークス」創設者でロンドンに拘束中のジュリアン・アサンジと、匿名のクリプトアーティストPakは、NFTコレクションで5400万ドル(62.6億円)以上を調達した。
2019年4月にアサンジ氏が逮捕されてからの日数をカウントするシングルエディションのNFT ≪Clock≫ のオンラインオークションでは、16,593ETH(5,200万ドル、約60.3億円)での落札を達成。Beepleの≪Everydays-The First 5000 Days≫に次いで、現在2番目に高価なNFT作品となった。このほか、オープンエディションのNFTでは、合計29,766人の購入者がトータル671ETH(210万ドル、約2.4億円)を支払い、PakのオープンエディションNFTの既存記録を更新した。
この収益は、ロンドンから米国への身柄引き渡しに向けて争うアサンジ氏の訴訟費用に充てられる。(artnet news)
▍イタリアの4つの美術館がラファエロ、ダ・ヴィンチ、カラヴァッジョらの名作をNFTとして販売へ
画像出典:https://www.theartnewspaper.com/
ラファエロやダ・ヴィンチ、モディリアーニなど、ウフィツィ美術館を含むイタリアの4つの美術館が所蔵する名画のデジタル複製品が販売される。この事業は、オリジナル作品の保存を支援するための資金を調達すると同時に、オリジナル作品へのアクセスを増やすことも意図しているという。収益は、販売を担当するギャラリー「Unit」と美術館で折半される。
コレクターが作品を購入すると、スクリーン、画像を生成するドライブ、レプリカのフレーム、鑑定書などの物理的な部品を受け取ることができる。ただし、画像の著作権は美術館に帰属するため、コレクターは商品化などの商業目的でDAWを再利用することはできないという。(THE ART NEWSPAPER)
アーティスト
▍ダミアン・ハースト、米国で最も好かれているアーティストになる 椅子に腰掛けるダミアン・ハースト
オンラインアートギャラリーSINGULARTは、Googleの検索データを用いて、世界で最も好かれているアーティストを調査した。53人の世界的なアーティストをリストアップし、2021年の間に彼らの名前が検索された量を分析し、各国で最も好まれているアーティストを明らかにしたもの。
この結果、アメリカではイギリスを代表するアーティストであるダミアン・ハーストが1位となった。2020年から2021年にかけて、アメリカでの検索数が232%増加したという。このほか、奈良美智、ジェフ・クーンズ、ニコラス・パーティの3人は、それぞれ4つの国で1位になり、世界的に好かれているアーティストであることなどが明らかとなった。(FAD magazine)
▍Instagramで最も人気のアーティストは誰か?
では、インスタグラムで人気のアーティストは誰だろうか?フォロワー数を見ると、バンクシー(1,120万人)、KAWS(390万人)、JR(160万人) らストリートアーティストが多くのフォロワーを獲得している。
女性アーティストでは、オノ・ヨーコ(61.6万人)のフォロワーが最も多く、次いでシンディ・シャーマン(35.7万人)、マリーナ・アブラモヴィッチ・インスティチュート(31.6万人)、草間彌生(26.7万人)の順となっている。(OCURA)
▍ダミアン・ハーストの「桜」は盗作?イギリスのアーティストが訴え
画像出典:https://www.theguardian.com/
3月に日本初の大規模個展「ダミアン・ハースト 桜」を控えるダミアン・ハーストだが、その作品が自分の桜の絵にそっくりだとイギリスのアーティスト ジョー・マシンがクレームを付けている。彼はハーストの作品が自作の直接のコピーではないことを認めつつも、「非常に暗い色の枝、パウダーブルーの空、ピンクのインク滴で描いた花が、自作と似すぎている」と主張している。
これまでにも、ハーストのダイヤモンド・スカル、メディシン・キャビネット、スピン・ペインティングなどの作品について、さまざまなアーティストがハーストより先に制作したという主張をしてきている。ハーストは盗作を常に否定してきたが、2018年のインタビューでは「私のアイデアはすべて盗んだものだ」とも語っている。(The Guardian)
▍90歳を迎えたゲルハルト・リヒター、母国の3つ都市で展覧会を開催
ゲルハルト・リヒターは、2022年2月9日に90歳を迎えた。ドイツではこれを祝福し、彼とゆかりの深い3つの地域でそれぞれ異なるテーマで展覧会を開催している。長年教鞭をとっていたデュッセルドルフでは、ゲルハルト・リヒターの最も重要な作品とも考えられている≪ビルケナウ・サイクル≫(2014年)が展示されている。ホロコーストと第二次世界大戦におけるナチスの残虐行為をどのように描くかを考えて制作された作品。本作品は、2022年に東京・愛知で開催される「ゲルハルト・リヒター展」でも公開予定だ。(artnet news)
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文:ANDART編集部