世界各地でワクチン接種が進む中、日本でも10/5現在、国民の6割がワクチン接種を完了したと報告されています。接種証明書(ワクチンパスポート)の提示などを条件に、入国時の隔離期間を免除する国が増えてきていますが、日本ではワクチン接種の有無に関わらず、入国・帰国時に待機期間が設けられているため、海外へ渡航しにくい状況であることは変わりません。
イスラエルは度重なるロックダウン(都市封鎖)により、海外からの渡航者はもとより、国内居住者に対しても厳しい制限が与えられてきました。迅速なワクチン接種により、現在国内居住者に対する制限は緩和されてはいるものの、旅行者の受け入れについては未だ厳しい状況が続いています。
そしてその影響を大きく受けるのが旅行業界です。そこで今回は、45年にわたりイスラエル旅行を取り扱うアミエルツアーズの2代目代表取締役社長であるオニ・アミエル氏に、パンデミック発生後の状況についてお話を伺いました。
―――パンデミックにより旅行業界は大きな打撃を受けていますが、今の心情はいかがでしょうか。
コロナ禍以前にあった状況には戻れないということを理解しています。そこで新しい現実にビジネスをどう適応させるかといった、柔軟性を持つことが大事だと考えていますね。
―――新型コロナウイルスの感染が拡大し始めた当初、どのような気持ちでしたか。
友人に仕事の調子はどうかと聞かれた際にもこう答えていたのですが、”高速道路で160kmのスピードを出しながら、急にハンドブレーキをかけられたような気持ち”でした。何年にもわたって多忙な毎日を送っていましたが、それが一転、仕事はほぼストップ。大量のキャンセルや終わりの見えない状況に不安を感じていました。
―――イスラエルの観光が完全にストップしたことで、一番困難なことは何でしょうか。
チームやグループとの特別で緊密な関係を維持することが一番大変ですね。長年スタッフとの緊密な関係を築いてきたことが、会社の成功に繋がっているのです。この「人」との結びつきこそが、「アミエルスピリット」であると考えています。アミエルツアーズにはイスラエル国内と世界中にグループ会社がありますが、パンデミックの影響により海外スタッフとのコミュニケーションは全てオンラインとなり、これまでのような緊密な関係を取りにくくなりました。オンラインミーティングでは、対面と比べて上手くコミュニケーションが取れず、孤独感さえ抱くこともあります。チームとの関係が希薄になり、また一部のスタッフに対して無給休暇を出さざるを得なかったことは、とても悲しく切ない気持ちでした。
―――今後についてはどう考えていますか。
今の状況は一時的なのか、どうやって希望を見出せば良いのか、といったことを日々考えています。一時は状況が良くなり、観光業が再開するという希望が生まれては、再び状況が悪化し観光業の再開もストップ、希望が失望に変わるといったことが繰り返されているのです。しかし落ち込んでばかりはいられませんので、前向きに希望を見出し、社内システムのアップグレードなどに時間を使っていますね。イスラエル全土の視察ツアーを行い、新しい観光地や観光素材を探しています。観光業が再開した際、魅力的な旅行商品を販売するためには、以前よりもイスラエルに関する深い知識と、その知識を十分活用した商品作りが必要です。そこで残っている少ないスタッフと共に、コロナ時代に合う新しいプログラムを考えています。
―――アミエルツアーズのトップとして、現在課せられている最も重要なミッションは何でしょうか。
このような困難で不透明な状況の中でも、代表としての責任とマネジメント能力を示すことが私に課せられているミッションです。コロナウイルスという未曽有の事態の中で、「何が正しいか」を判断することは容易ではありません。新しい現実にビジネスをどう適応させるか、その答えを出すには常に柔軟であることが大事だと考えています。
また私が所属しているイスラエル観光主催者協会のメンバーと一緒に、経済産業省と観光省に対して観光業の現状を伝え、より有益な改善策を見出しています。政府がよりインバウンドの重要性を理解し、近いうちに観光客が戻ってきてくれることを願っています。