グリーンボンドとは? 利回りやメリット・デメリットを詳しく解説!
(画像=TarikVision/stock.adobe.com)

近年、グリーンボンドに対する注目度が世界的に高まっている。日本では2020年10月、当時の菅総理大臣が所信表明演説の中で「2050年までに温室効果ガス実質ゼロ」の目標を打ち出して以降、社会の中で環境問題への意識が急速に向上。それに伴い、グリーンボンドが改めて関心を集めつつある。

そこで今回は、グリーンボンドとは何かについて詳しく解説し、メリットやデメリット、利回りの実情などについて紹介していこう。

目次

  1. グリーンボンドとは?
    1. グリーンボンドとは環境事業の資金調達で発行される債券
    2. グリーンボンドのガイドラインであるGBP
    3. グリーンボンドの日本における展開
  2. グリーンボンドのメリット・デメリット
    1. グリーンボンドを発行するメリット
    2. グリーンボンドを発行するデメリット
    3. グリーンボンドに投資する側のメリット
    4. グリーンボンドに投資する側のデメリット
  3. グリーンボンドの利回りにおけるグリーニアム現象
    1. グリーンボンドが普通債よりも利回りが低くなる現象が生じている
    2. 日本でも起こりつつあるグリーニアム現象
  4. まとめ
  5. 事業承継・M&Aをご検討中の経営者さまへ

グリーンボンドとは?

現在、ビジネスの場で環境問題について語られる場合、必ずといって登場するのが「グリーンボンド」というワードである。グリーンボンドとは一体何なのか。まずはその意味や定義について解説し、さらに世界・日本における普及状況についても紹介しよう。

グリーンボンドとは環境事業の資金調達で発行される債券

グリーンボンドとは、企業や地方自治体などが環境の改善に資する事業=グリーンプロジェクトに取り組むための資金調達をする際に発行する債券のことだ。発行者はグリーンボンドを発行することで、環境分野への取り組み姿勢をアピールすることができる。

グリーンボンドの発行を世界で初めて行ったのは、世界銀行グループの一員である国際復興開発銀行だ。2008年に発行を開始して以降、環境への関心が高まっていく中で発行額は増え続け、その市場規模は拡大しつつある。

環境省のデータによると、全世界において企業や自治体が発行したグリーンボンドの発行額は、2013年当時では116億ドル(USドル)だったが2015年には461億ドル、2020年には2,960億ドル、さらに2021年には3,870億ドルにまで増加。特に2020年から2021年にかけては、たった1年の間に900億ドルも増えている。今まさに、グリーンボンド市場は世界規模で急成長中である。

グリーンボンドのガイドラインであるGBP

グリーンボンドを発行する場合、国際資本市場協会(ICMA)が定めている自主的ガイドラインである「グリーンボンド原則」(GBP)に従うのが慣例となっている。GBPは2014年に策定されたが、その後も随時改定が行われ、2021年にも改定版が公表されている。

このGBPは柱ともいえる以下4つの原則を持っている。
①調達資金の使途(気候変動緩和策、気候変動適応策、自然環境保全、生物多様性保全、船対策のいずれかに貢献する事業が対象)
②プロジェクトの評価と選定のプロセス(投資家に対して評価・プロセス内容を伝達する)
③調達資金の管理(調達した資金は企業の財務諸表とは別勘定で管理する)
④レポーティング(資金調達の使途に関するレポーティングの内容を規定)

2021年の改定では、この4つの基本原則に加えて、新たに重要推奨事項として「外部レビュー」と「グリーンボンドフレームワーク」が追加されている。

「外部レビュー」とは外部レビュー機関が作成するレポートの内容や情報開示に関する規定で、外部レビュー機関が持つべき専門性や倫理的基準についても言及されている。

「グリーンボンドフレームワーク」とは債券に関する投資家向けの情報として策定するもので、改定原則の中ではグリーンボンド4原則との整合性(盛り込むべき事項)や事業選定の基準・認証制度(盛り込むことが奨励)に関して規定されている。

グリーンボンドの日本における展開

日本の民間企業では、トヨタファイナンスや日本電産、セイコーエプソンなど主に大企業を中心としてグリーンボンドの発行が増えつつある。

例えばトヨタファイナンスの場合、グリーンボンドによって集めた資金は、電気自動車を扱うトヨタ販売店への融資に充てられている。また、日本電産は電気自動車の開発、セイコーエプソンは環境にやさしい商品の開発などに融資されている。

自治体では東京都の取り組みが有名だ。2017年度にグリーンボンド発行を開始し、2020年度には発行額が300億円にのぼっている。集めた資金は、東京オリンピック関連の施設における環境対策、太陽光発電設備、上下水道施設の省エネ対策、環境負荷の少ない都営バスの導入などに充てられた。

国内企業等が行ったグリーンボンドの発行額は、2014年当時は337.5億円だったが、2021年にはなんと1兆4,066億円にまで伸びている。発行者の数は2014年当時1機関だけだったが、2021年現在では110以上の機関が発行を実施している。急速に市場規模は拡大しつつあるのだ。

グリーンボンドのメリット・デメリット

大企業や自治体がこぞって取り組みつつあるグリーンボンドだが、発行することにはどのようなメリットやデメリットがあるだろうか。

グリーンボンドを発行するメリット

・企業・自治体のイメージアップにつながる
グリーンボンドによって調達した資金は、原則として環境に貢献する事業にしか使用できない。そのため、グリーンボンドの発行は、環境問題に取り組んでいる姿勢を社会に示すことになる。

特に日本は2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにするという国家戦略をかかげ、官民挙げてその目標に向かっている最中だ。環境問題への取り組みは国民に好意を持って受け取られ、イメージアップにつながる。

・環境問題への意識が高い投資家から資金調達できる
投資家の中にはリターンの大小ではなく社会貢献度を基準として投資先を選定する人・機関もあり、グリーンボンドを発行することでそのような人・機関から資金調達が可能となる。環境問題への取り組みをビジネスチャンスととらえている企業・起業家にとっては、絶好の資金調達先となるだろう。

グリーンボンドを発行するデメリット

・調達した資金は環境分野にしか利用できない
グリーンボンドで調達した資金は環境分野にしか利用できないことは、GBPの中でも明記されている。大企業であれば多様な事業を展開する資金力・人材力があるので、CSR(企業の社会的責任)目的などで環境事業を展開することもできるだろう。

しかし、経営資源に限界があり、環境分野とは無関係のビジネスに取り組んでいる中小企業などは、環境事業に進出する余裕はなく、グリーンボンドを発行する理由や必要性はない。グリーンボンドは発行できる企業・事業分野は、事実上限られているともいえる。

・手数料が発生する
グリーンボンドは外部機関による評価(外部レビュー)を受けることが推奨されているため、そのための手数料が別に必要となる。グリーンボンドは一般的な債券に比べて、発行には費用も時間もかかる。

グリーンボンドに投資する側のメリット

・投資家のイメージアップも可能
グリーンボンドへの投資はESG投資(環境や社会への貢献度により企業価値を計り、その評価基準に基づき行われる投資)の一種であり、持続可能な世界を構築する投資として社会的に認識される。そのためグリーンボンドへの投資により、社会活動に積極的な投資家としてのイメージアップが期待できる。

・リスクヘッジを行える
グリーンボンドは環境事業に対するプロジェクトボンドであるため、利益追求型の企業・事業を軸とする一般的な株式や債券等との価格連動性が低い。その特徴を利用して投資先の一つとしてグリーンボンドを選択することで、分散投資によるリスクヘッジを行うことが可能である。

グリーンボンドに投資する側のデメリット

・投資先の事業に環境改善効果がないこともあり得る
グリーンボンドの発行者は事前に環境プロジェクトの内容・選定方法を投資家に詳細に伝えるが、実際に取り組んでみると事業が上手くいかず、計画通りに環境改善効果が見込めない可能性もある。せっかく資金を投じても、地球環境の改善という目的を達成できないリスクがあるわけだ。

・投資先の資金の使途が不適切となるリスク
企業側がグリーンボンドとして資金調達を行っているのに、集めた資金を環境分野の事業に使用しないという危険性もある。

投資先を選ぶ場合、その企業・自治体が本当に環境問題に取り組む意欲があるのか、信頼できる相手なのかを十分に吟味する必要があるが、そのためには時間もコストも必要となる。

グリーンボンドの利回りにおけるグリーニアム現象

現在、投資家の間で環境問題に対する意識が高まり、グリーニアム現象という事態が起こっている。特にグリーンボンドの発行が進んでいる欧州で強く表れており、日本でも同様の兆候がみられる。

以下では、企業にとって資金調達の機会が増えるグリーニアム現象とは何かについて詳しく説明しよう。

グリーンボンドが普通債よりも利回りが低くなる現象が生じている

グリーニアム現象とは、グリーンボンドの利回り(年間利益)が普通債よりも低くなる現象を指す。

グリーニアム現象が起こると、投資家にとってはグリーンボンドよりも普通債を購入する方が多くの利益を得られる。そのため常識的に考えれば、グリーンボンドへの人気は低下していくことになる。

しかし欧州では、「地球の環境改善に貢献する」という点に価値を認めてグリーンボンドへの投資の応募が殺到し、利回りが低くても投資家の購入意欲が低下しない事態が起こっている。つまり、敢えて割高の債券を買うという状況が生じているのだ。

例えば、ドイツ政府は2020年の9月に10年返済のグリーンボンドを発行したが、発行額の3倍以上にのぼる投資の申し込みが殺到。その結果、グリーンボンドの利回りが、同じ返済年数の国債よりも0.01%低くなった。こうした状況はその後も続き、約半年後には0.01%から0.05%までその差は広がったのだ。

グリーニアム現象は投資する側にとって資産の運用低下を意味するのだが、地球環境を保護できるという達成感がその損失を埋めている。債券の発行主体である企業・自治体にとっては、低いコスト負担で資金調達を実現できるのだからお得な状況といえる。

日本でも起こりつつあるグリーニアム現象

グリーニアム現象は日本でも起こり得る兆候が生じている。というのも、「2050年までに温室効果ガス実質ゼロを目指す」という国家戦略が打ち出されたこともあってか、投資家の中でグリーンボンドへの選好が生じているからだ。

実際、Jパワー(電源開発株式会社)が2021年1月にグリーンボンドを200億円発行したところ、投資家から1,000億円以上の応募があった。グリーンボンドへの需要は国内でも高まりつつあるわけだ。欧州と同様の事態が、日本にも到来しつつあるともいえる。

まとめ

グリーンボンドとは、企業や地方自治体などが環境事業に取り組むための資金調達をする際に発行する債券である。現在、グリーンボンド市場は世界的に急速に成長しつつあり、日本においても同様の現象が生じている。

ただし、グリーンボンドは発行する側、投資する側の双方に、メリットだけでなくデメリットもある。実際に発行する・投資する際は、デメリットへの対策を講じておくことも大切だ。

グリーンボンドへの需要は高く、今や普通債よりも利回りが低くなるグリーニアム現象まで生じている。日本は現在、脱炭素社会を目指して挙国一致で取り組んでいる最中だが、この状況が今後も続く限り、国内のグリーンボンド市場は拡大し続けるだろう。

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野口和義
野口和義
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