味の素冷凍食品が2017年9月に東京・赤坂に開業した日本式餃子レストラン「GYOZAIT.」が2021年12月28日に閉店した。開業当初から期間限定店舗だったため予定通りの閉店となる。
新型コロナウイルス禍によって当初想定した活動は制限されたが、メーカーとしての製品販売とは異質な、外食店での消費者との接点から貴重な経験も得た。経営企画部「GYOZA IT.」グループ長・松宮健太氏は「インバウンド需要が増加する中、日本式餃子の魅力を伝えるために、お店をオープンした。東京五輪の際に海外選手からも『ギョーザ』が高く評価されたように、我々が思っている以上に日本式餃子の魅力が広く伝わった」と話す。店舗運営やイベントを通じて広がった“餃子コネクション”の今後の展開にも期待できそうだ。
「もともと外国人をターゲットに据えていたが、国内在住の方や日本人を含めてGYOZA を楽しんでもらえた。リピーターも多数おり、一定の成果があったと思う」(松宮氏)「GYOZA IT.」は日本式の餃子を世界に発信する場として開業した。開業当初は行列ができ、社員でも予約が取れない状態だったという。2019年度までは客数、外国人比率とも着実に増加。開業初年度の外国人比率は10%だったが、2019年度は19%まで増えていた。「外国の方が餃子を頬張ってシャンパンやワインを楽しむ姿を見て、餃子という大衆的なメニューをおしゃれに楽しめる新しさ」(経営企画部「GYOZA IT.」グループ地曵朋子氏)があった。
ソムリエも雇い、餃子をはじめとする料理とお酒を組み合わせる楽しみ方を提案した。メニューには味の素冷凍食品の冷凍餃子もあるが、店舗で手作りした変わり餃子も多数開発した。一口にGYOZAと言ってもバラエティに富んでいるため、飽きずに楽しめたという感想が多く届いたという。葉物野菜で巻いたり、独自の調味料をつけたりと、同店ならではの食べ方も提案した。
空間的な魅力もあった。「天井が高く、オープンな広々とした空間も特徴で、小さなお子さんにも喜んでもらえた」(松宮氏)。コロナ対策の取りやすさや安心感にもつながったと見る。
〈コロナ以降もさまざまな企画を展開〉
「店内が外国人でいっぱいになるというのはこの店ならではの現象だと感じていた」(地曵氏)が、新型コロナによって、外国人比率は9%に落ち込んだ。
一方で国内在住の外国人が一人で気軽に来店し、カウンターで食事をする場面も見られたという。確かにコロナ禍で訪日外国人は消失したが、多言語対応のスタッフをそろえている同店の良さを含め、店舗の魅力は少なからず浸透していた。
味の素冷凍食品は2019年度から、同店の役割として、外国人への啓もうとは別に、本業の事業活動に活用する方針を立てた。また2021年夏からは、オンライン限定販売の「For ATHLETE」ギョーザも、発売と同時にメニューに揃え、体験できる場を提供している。
この点で悔やまれるのはコロナ禍において、集客イベントに制約があったことだという。量販店との販促企画として実施した、店舗への招待企画は好評を得たが、その後コロナ禍によって、このような集客型の企画はできなくなった。2021年4月からはGoTo イートをもじった「GyoTo Eat!(ギョートゥーイート)」企画を展開。焼き餃子協会の小野寺力代表理事推薦の名店の餃子を店舗で焼き上げて提供した。最終第4弾では東京「おけ以」と福岡「湖月」の餃子を提供した。
「その店の餃子を目当てに来店する方もおり、餃子が人を引き付ける力を改めて感じた」(松宮氏)という。
「GYOZA IT.」ではダイレクトに客の反応を感じ取れた経験や、メーカーの通常の営業活動では出会えない人との出会いがあったとして、松宮氏も地曳氏も異口同音に今後の事業に活かしていきたいと話している。
〈冷食日報2022年1月11日付〉